これはぜんぶ昔の話

【詩】これはぜんぶ昔の話

これはぜんぶ昔の話。
そしてこれから起こるかもしれない話。

この物語は実話ですが、フィクションだと思っていただけると幸いです。


どんな店でも半年で潰れる四つ角を曲がり、黒猫が横切るの確認したら、私の家はもうすぐそこである。

友人の結婚式に出る度に「こんな人と暮らすくらいなら一人がいいなぁ」と思い続けてきたけれど、たった一度だけ「羨ましい」と思ったことがあった。

いつまでこの世界にいなければならないのか。
思い通りになることは何もないし、大好きな君はいつもムカつく奴らと一緒にいる。
このままだと君のことまで嫌いになってしまいそうだ。

喉が渇く。
水を飲んだはずなのに、なんだか飲む前よりも渇いている気がする。

こんな騒がしい夜じゃ死ぬこともできないし。
消えそうな赤い火に枝をくべてくれるのは、今ではもう君だけになってしまった。

「聞かなかったことにしてくれ」と言われたので聞かなかったことにしたけど、本当にそれでよかったんだっけ。
他人の感情を決めつけてくる人間はどこにでもいて、そういう輩ほど声が大きい。

好きだった、と過去形で言うのがつらい。
勝手に好きになって、勝手に好きじゃなくなったくせにな。
ところで中国語には過去形がないらしい。
だとしたら中国人と私が同じ思い出を話す時、全然違う話になるんじゃないか。
そのことが、今ではとても心配だ。

近頃は誰を見ても、昔見た誰かに似ていると思う。
すべては過去の写し鏡。
自分の感覚でさえ現実味がない。

どこまでも伸びていくように見えた光は、突然途切れることを選んだ。
光はその権利を持っていたのだ。
私たちが知らなかっただけで。

何もかも遠ざかっていくのに、一番消したい感情だけはいつもそばにある。



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