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法律要件分類説と、但し書きの立証責任(その1)

 法律要件分類説とは、どちらの当事者が立証責任(証明責任、挙証責任)を負うかという立証責任の分配についての通説です。

法律要件分類説では、原則として、実体法に定められている要件を基準として、各当事者は自己にとって有利な法律効果の発生を定める法規の要件事実について立証責任を負うとしています。

簡単に言うと、ある事実が認められると有利な法律上の効果が発生する・得られる者が、そのある事実の立証責任を負うということです。

具体的には、法律要件分類説では、以下のように考えられています。

権利根拠規定(権利発生を定める)の要件事実は、権利を主張する者が証明責任を負う(売買契約の成立(民法555条)等)
権利消滅規定(一度発生した権利関係の消滅を定める)の要件事実は、権利消滅を主張する側(否認する側)が証明責任を負う(債務の弁済(民法474条)、契約の取消(民法4条1項、96条)等)
権利障害規定(権利根拠規定等に基づく法律効果の発生を当初から抑止する要件を定める)の要件事実は、その法律効果の発生を争う側が証明責任を負う(虚偽表示(民法94条)、錯誤(民法95条)等)。
権利阻止規定(権利根拠規定に基づいて発生した権利行使を阻止する要件を定める)の要件事実は、その権利を阻止しようとする者が証明責任を負う(留置権(民法295条)、同時履行の抗弁権(民法533条)等)

 ここで、条文や契約での「但し書き」は、権利阻止規定と思われますので、その立証責任は本文の立証責任を負う側とは反対側が負います

知る範囲では、この但し書きの立証を負担する側が分かりやすい条文として、製造物責任法第3条、自動車損害賠償保障法3条、があります。

・製造物責任法第3条 製造物責任

(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

・自動車損害賠償保障法3条 自動車損害賠償責任

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

・特許法29条の2

第二十九条の二 特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

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