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補正可能時の分割出願が原出願日への遡及効を有するケース

分割出願が原出願日への遡及効を有するか否かは、

「分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること」

の要件を満たすか否かで決まります。

このため、原出願(分割元になった出願)が、新規事項追加の補正がなされたまま確定したか否かは関係ないはずです。

イメージとしては、以下のような感じでしょうか。

出願X(出願時) クレーム:A 明細書:A+B+C

出願X(拒絶査定時) クレーム:A+D 明細書:A+B+C
 ※クレームのDが新規事項であり、新規事項追加のまま拒絶査定

分割出願Y クレームB 明細書:A+B+C

出願X(拒絶査定確定)
 ※新規事項追加のまま拒絶査定確定

上記の例だと、特許法44条2項により、分割出願Yは出願Xの時にしたものと擬制されるという理解です。

 特許査定又は拒絶査定を受けた後は、査定を受けた際の明細書等に記載されている範囲内で出願分割ができます。見方を変えると、出願時に記載されていた内容であっても、査定前に削除された内容を分割することはできません。

※拒絶査定不服審判の請求と同時に分割出願をする場合は、出願当初の明細書に記載した範囲内で分割出願ができます。

※拒絶査定不服審判請求時に同時に分割出願する場合と、拒絶査定不服審判を請求せずに拒査謄本送達から三月以内に分割するケースでは、分割要件が異なります。

このため、
①請求項を削除する場合は、削除する請求項の内容を明細書に転記すること、
②明細書等の記載を削除するような補正はなるべくしないこと、
③できれば、明細書の実施形態の最後などに、請求項の内容をそのまま記載しておくこと
を推奨します。

なお、分割の要件は、

(要件1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと(3.1参照)。

(要件2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(3.2参照)。

(要件3) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること(3.3参照)。

ただし、原出願の明細書等について補正をすることができる時期(注)に特許出願の分割がなされた場合は、(要件2)が満たされれば、(要件3)も満たされることとする。これは、原出願の分割直前の明細書等に記載されていない事項であっても、原出願の出願当初の明細書等に記載されていた事項については、補正をすれば、原出願の明細書等に記載した上で、特許出願の分割をすることができるからである。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/06_0101.pdf

であり、

補正できる時期は、

2.1.2 特許出願の分割をすることができる時期
 特許出願の分割は、以下の(i)から(iii)までのいずれかの時期にすることができる。

(i) 明細書、特許請求の範囲又は図面(以下この章において「明細書等」という。)について補正をすることができる時期(第44条第1項第1号)(注1)
(ii) 特許査定(注2)の謄本送達日から30日以内(同項第2号)(注3から注5まで)
(iii) 最初の拒絶査定(注6)の謄本送達日から3月以内(同項第3号)(注4及び注5)

(注1) 明細書等について補正をすることができる時期については、「第IV部第1章 補正の要件」の2.を参照。

(注2) 以下の場合は除かれる。 (a) 前置審査において特許査定がされた場合(第163条第3項において準用する第51条) (b) 拒絶査定不服審判において拒絶査定が取り消され、審決により審査に差し戻されて、特許査定がされた場合(第160条第1項及び第51条)

(注3) 特許査定の謄本送達日から30日以内であっても、特許権の設定登録がなされた後は、特許出願が特許庁に係属しなくなるため、特許出願を分割することができない。

(注4) 拒絶査定不服審判における審決は、特許査定や拒絶査定ではないので、上記(ii)及び(iii)の期間に審決の謄本送達後の期間は含まれない。

(注5) 上記(ii)及び(iii)の期間は、延長等がされることがある(第44条第5項から第7項まで)。

(注6) 以下の場合は除かれる。 ・拒絶査定不服審判において拒絶査定が取り消され、審決により審査に差し戻されて、再び拒絶査定がされた場合(第160条第1項及び第49条)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/06_0101.pdf

です。


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