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特許法 特許の3キーワード「特許性、顕現性、必然性」☆2

特許出願する前の発明について検討すべきことは、特許の観点から言えば、3個といえます。

その3個が、「特許性、顕現性、必然性」です。

(事業的観点を入れると、特許性、顕現性、実施可能性、という考え方もあります)


1.特許性

 これは、特許権取得可能という意味です。基本的に特許権取得見込みの「ある」出願を行うべきですから、これは当然です。

2.顕現性

 これは、侵害確認容易性と表現することもあります。特許発明が実施されているかの認識しやすさを示します。言い換えれば、顕現性が高い発明は特許侵害が突き止めやすい発明です。この顕現性が高いほど、他社からすると怖い特許になります。逆に見ると、顕現性が低い特許(特許権侵害していても分からない)は、存在価値が低くなります

 特許請求の範囲の記載は、その製品等を見れば直ぐに特許発明を使っているか否かを判断できる形で記載する方が良いといえます。このような、その製品等を見れば直ぐに特許発明を使っているか否かを判断できる特許は、他社からすると怖いです。

 2.1.ある状況と、その状況での動作を組み合わせる

 請求項が、①ある状況、②その状況での動作(内部動作ではない)、という形式で記載されていれば、顕現性が高めになります。

 具体的には、
 (i)スマホを持つユーザが立ち止まっている場合(ある状況)、
 (ii)スマホの画面表示を切り変える(その状況での動作)、
というような記載です。

※「スマホの画面表示を切り変える」のは内部処理の結果ですが、スマホの画面表示を見ていれば、画面表示が切り変わったことはすぐに分かります。

 2.2.内部処理を含まない記載とすべき

 特許請求の範囲は、外部からの確認が難しい「内部処理を含まない」形で記載することが大切です。これは、内部処理を含む請求項の場合には、侵害確認(実施確認)にリバースエンジニアリングが必要になるからです。

(例1)内部処理「あり」
 請求項1 Aという挙動が測定された場合、Bという判断をし、Cを出力する

 この請求項1の侵害確認では、①Aという挙動を測定したこと、②Bという判断をしたこと、③Cが出力されたこと、の確認が必要です。測定したことの確認や、判断したことの確認には、リバースエンジニアリングが必要になるはずです。このため、①Aという挙動を測定したこと、②Bという判断をしたこと、の両方を実施していることの確認は難しくなります。

(例2)内部処理「なし」
 請求項2 Aという挙動があれば、Cを出力する

 この請求項1の侵害確認で必要なのは、AとCとの2個です。そして、これらの2個は、外部から測定・確認可能です。つまり、内部判断等の確認は不要です。

※「Aという挙動に基づいて」とすると、何らかの内部処理が必要になります。

3.必然性

 ある目的を達成する方法は、コスト度外視であれば無数にあると思います。この必然性とは、ある目的を達成するための技術として、コスト面等から最もふさわしいものであり、他に代わりになる技術が無いということです。回避可能性と言い換えることもあります。この必然性が高いほど、発明の価値は高くなります。

 また、工場内で使われる「方法」や「生産方法」の特許に対する特許権侵害の立証は容易ではありません。特に、工場内で「のみ」使われる方法であれば、その工場に行って検査しないと特許権侵害が行われたか否かは判断できないと思われます。しかし、例外的に工場に行かなくても分かる場合があります。それは、必然性がある必須技術を使わざわるを得ない場合です。物の生産方法で必然性がある場合(必須技術である場合)、「それ以外の現実的な生産方法が無い」ということです。

 したがって、必然性があれば、特許権侵害の確認がかなり簡単になりますので、ライセンス交渉なども有利に進めやすくなります。
 必然性の高い技術はそれほど多くないと思います。しかし、「時代が変わっても必然的にそうならざるをえない」技術が、既存技術を突き詰めることで生まれたりします。このような筋の良い技術があれば、必ず特許を取得しましょう!

4.その他

4.1.特許性、必然性、顕現性が問題になるタイミング

 特許性、必然性、顕現性は、発明や特許が成立等する際の時間変化とともに、現れてきます。

 最初に現れるのが特許性です。発明が従来にない新しいものであり(新規性がある)、発明が従来と比較して一定以上優れている(進歩性がある)、というものです。

 発明やアイデアが溜まってくると、必然性が問題になってきます。その発明以外に、その発明と同じことができる場合は、その発明の価値は低くなります。「筋のいい発明か」という表現がされることもあります。

 最後に問題になるのが顕現性です。その発明が使われた場合、使われたことを判断できるか、というものです。

4.2.必然性を作り出すのは難しい

 一般的には、ある課題・問題を解決する方法は無数にあります。

 未解決の問題・課題を解決できた場合、最初に課題・問題を解決できた方法が唯一の方法です。

このため、ごく短期間ではありますが、その方法には必然性があるといえます。

しかし、時間が経てば、他の解決方法も現れてきますので、その方法の必然性はなくなります。

これらの複数の解決方法のうち、どれがもっとも使われるかは、社会から、性能やコストなどの観点で評価されて決まります。

 特に長く必然性が持続する発明は、
①ある課題を解決するためには、最もふさわしいく、代替手段がないような発明であり、
②時代が変わっても必然的にそうなってしまう、
発明です。

すぐに思いつく範囲では、

パラボラアンテナの形状

などが必然性のある発明だと思います。

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(~'22/07/04)特許法 特許の3キーワード「特許性、顕現性、必然性」☆
特許請求の範囲 内部処理は入れない
特許法 請求項で「ある状況と、その状況での動作」を組み合わせることで、顕現性が高まる
特許性、必然性、顕現性が問題になるタイミング

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