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学振DC1をとったときの話
こんにちは、あるいははじめまして、ケンです。
2021年末に転職し、現在では大学発ベンチャー企業での研究員の身分と、大学での博士研究員の身分を得たため、科研費など研究助成の申請資格を得ることができました。そんなわけで、つい最近まで科研費(研究活動スタート支援)や民間の助成金への応募のために、久しぶりに研究費の申請書の作成を行っていました。
学振-DC1の申請以来なので、実に8年ぶりの申請書作り
アストロサイトと恐怖記憶(2021年11月Nature Neuroscience掲載論文)
脳には神経細胞以外に、グリア細胞と呼ばれる細胞が存在する。アストロサイトは脳の構成細胞の中でも最も数が多い細胞で、脳の中には神経細胞の数の数倍から10倍程度の数のアストロサイトが存在する。
これまで、アストロサイトは脳の支持をしたり、栄養を供給する、いわば神経細胞のサポート役(脇役)のように考えられてきたが、ATP、グルタミン酸、D-Serineなどのグリア伝達物質と呼ばれる物質を放出することで
危険を感知する神経(2018年3月Nature掲載論文)
こんにちは、ケンです。
最近、所属が変わったことに伴い、研究テーマもガラッと変わりました。
もともと脊髄における感覚情報処理機構が自分の学位論文のテーマだったのですが、今度は脳をメインターゲットに感覚および情動の研究を行うことになります。そのため、最近は脳のお勉強に時間を割くようになりました。
まずは体性感覚と関連深い脳領域(腕傍核、偏桃体、前帯状回、青斑核など)に関するところから手を付けて
心地よい匂いの報酬価値の神経処理(2021年4月Current Biology掲載論文)
先日, 恐怖情動を惹起するにおいが人工冬眠状態を惹起するメカニズムに関する論文を紹介したが, 今回は心地よいにおいに関する研究を紹介しようと思う.
音楽を聴いたとき, 絵画を見たとき, においを嗅いだときなど, 感覚刺激は快であれ不快であれ, なんらかの情動が惹起されることが多い. におい自体の強度, 種類がどのように処理されているかということにもまだまだ謎は多いが, においに伴う情動がどのよ
化学感覚ニューロンの起源となる祖先型の化学感覚ニューロンを発見か!?(2021年8月Neuron掲載論文)
今回紹介する論文はドイツのザーランド大学とマックスプランク研究所からの研究報告で、タイトルは「Danger perception and stress response through an olfactory sensor for the bacterial metabolite hydrogen sulfide(バクテリアの代謝物である硫化水素の嗅覚センサーによる危険察知とストレス応答)」だ
もっとみる神経活動パターンが違うと生じる感覚が変わる?(2020年6月Neuron掲載論文)
体性感覚(痛み、かゆみ、触覚、温度感覚など)にあまり馴染みがない人には、かゆみと痛みはよく混同されるが、実は両者は全く異なる感覚である。体性感覚の中でも特にかゆみのメカニズムの解明は遅れており、かつては「痛みの神経が感じる弱い痛みがかゆみである」と考えられていたほどである。
2007年になり、ガストリン放出ペプチド(gastrin-releasing peptide:GRP)とその受容体(GRP
人工冬眠を誘導するにおい分子とその神経伝達経路の解明(2021年4月 Nature Communications掲載論文)
嗅覚は五感の中でも最も軽視されてきた感覚である。「五感の中のうちどれか1つの感覚をあきらめないといけないとしたら?」と尋ねられるとたいていの人は嗅覚を選ぶ。実際、マッキャン・ワールドグループによる2011年の調査によれば、ノートPCや携帯電話のような電子機器をあきらめるか、それとも嗅覚を失うかどちらがいいかと尋ねられた若い人(16歳から22歳)のうちなんと半数以上が嗅覚を失うことを選択したという報
もっとみる企業での研究は本当に不自由か?
こんにちは、あるいははじめまして、ケンです。
アカデミアに進むか企業に進むかを決めるときの軸の1つとして、
「自分がやりたい研究ができるか?」
というものがあるかと思います。研究成果の社会実装を目指すには企業というのは非常に魅力的な環境であると思っていますが、やはり製品開発を最終的な目的とする企業の研究と比べて、発見そのものが主たる目的のアカデミアの研究はやはり研究自由度が高いと思います。
博士修了後の進路選び 企業研究者へ
こんにちは、あるいははじめまして、ケン です。
博士に進んだ人はもちろん、現在修士課程の人も「アカデミア」か「企業」かで迷うことがあるかと思いますが、僕もその1人です。
入社後も「どうして企業に?」とちょいちょい聞かれますが、やはりそれだけ博士進学者が企業に行く選択をすることはまだまだ少ないのかもしれません。
特に自分の場合は、薬学出身だったこともあり、医薬業界かそれ以外かについても非常に悩