研究職の転職活動に関して

こんにちは, あるいははじめまして. ケンです.

転職活動を終えて、無事に転職することに成功しました。最近は新しい環境に向けた準備でバタバタとしていましたが, ようやく少しずつ落ち着いてきました. 論文紹介も再開していこうと思います.

さて, 今回は自身の転職活動についてつらつらと書き連ねていきます.

転職するに至った経緯

理由はいくつかありますが, 最初のきっかけは所属していた企業では5年, 10年先を見据えたような腰を据えた研究を行いにくいように感じだしたことです. 

研究のステージを大雑把に 1. 萌芽研究, 2. 基礎研究, 3. 応用研究, 4. 開発研究の4ステージに分けるとすると, 企業では3. と4. の製品化, 実用化に向けた研究(というよりも開発)に多くのリソース(ヒト・モノ・カネ)を注ぎ込む傾向にあるかと思います. 実際, 私が所属していた企業においても研究開発費の配分でいえば, 基礎:応用(開発費含む)=1:25くらいの比率での配分で, 同様に人的リソースも大半が応用・開発研究に割かれている状況でした. 僕は自身の画期的な発見を社会に実装したいという想いが非常に強かったため, 現在の環境では小さな発見とその発見の社会実装は可能でも, 世界をアッと驚かすような仕事はなかなか難しいと感じ, 自分のやりたいことをやるためにはどうしたらよいかを真剣に考え始めました.

その第一歩として, まずは社内で上記の野望が本当に実現できないかを検証することにしました. ある程度自由にできる立場を獲得するため, 自分自身の研究課題を持たせてもらおうと考え, 会社としても実現出来たら嬉しい, なおかつサイエンスとしてもインパクトがある研究テーマを考案し, 研究所長の承認をもらうことで少し動きやすくなることに成功しました. 入社歴が相当浅い段階で1つの研究課題のリーダーとして登用してもらえたこと, しかもそれが上が考えたテーマではなく自分で考えた研究テーマでやらせてもらえたことは非常に恵まれたことであり, 本当に良い会社だなと感じました. 今, あらためて振り返っても, 当時の上司や所長には本当に感謝しています. 

しかしながら, 当然のことながらそれだけに集中させてもらえるわけはなく, 会社としてやってほしいテーマもたくさん降ってくる状況でした. 気が付くと自身が提案した上記研究課題以外に, 3つの研究プロジェクトにアサインされたりなんかで, 自分自身がやりたい研究に集中することは難しい状態でした. 

研究テーマの提案・採択によって, 状況が少しは好転したかと思いきや, やはり自分の夢を実現させる環境としては不適切であるように感じるようになりました. 

また, それに加えて, 研究者としての成長速度が大学にいたときと比較して鈍化していることを感じ, 自分が今の所属会社でしか通用しないような人材になっていくのではないかという不安もありました. 企業では, 特に私が所属していたような非製薬系企業では, ライフサイエンス研究を行う上で様々な面で制約があります. 特に, in vivo実験が非常に行いにくい環境であることは, それがそのままアプローチ方法の幅を大きく狭めてしまうことに繋がるばかりか, 仮に何か新しい生命現象やメカニズムを発見したとしても, それが本当に生きた動物でも同様に確からしいのか, それとも人工的に作り出した特殊な環境の中でだけで起こるものなのかを確認することができず, 間違った解釈に繋がる恐れすらあります. この点は研究を行っていくうえで個人的にはやり辛さを感じる部分でした. 

また, 企業の研究所, 特に大企業と呼ばれるような研究所では実際の実験は派遣社員さんに任せてしまう場面も多く, 経験からくる勘を養いにくいことも自身の不安を加速させました. 説明資料の作成や社内調整ばかりしていて, 研究そのものの力を伸ばせていないのではないかと感じるようになりました. 実験以外の, 情報収集, 仮説考案, 実験結果を受けた仮説再構築, 研究内容・意義の説明, 調整業務などの全てのプロセスが「研究」であることはわかっているのですが, 若手研究者の自分は, まだまだ手を動かしながら学ぶことがたくさんあると考えていたので, 実験が思う存分できる環境というのをとても重視しており, 不安が積もっていきました. 

ほかにもいくつか理由があるものの, 主に自分が研究者としてさらに成長するため, そして, 高いレベルの基礎研究を行い, その成果を社会に実装して還元していくという自分の夢のために, 環境を変えようと考えるようになり, 転職活動を行うことを決意しました. 

転職活動開始

時期としては, 3年目の秋頃から転職活動を行い始めました. 

ただ, この時期は転職活動を行う時期としては最悪で, 企業の第2新卒に応募しようとするには遅く, 中途採用に申し込むには早すぎる時期でした. 

第2新卒としての応募はどこの企業も既に終了しており, 中途で申し込もうにも, 最終学歴の卒業年度を入力しようとすると, タブに選択肢がでてこないため, 登録そのものができません. 通常, 中途採用は即戦力を求められていることもあり, 募集要項も明らかに入社後7-10年目以上の人を求めているような記載があることが多く, 自身は該当しません. ただ, 色々な求人を見ていると, 中途採用ではその企業が求める分野での研究経験があること, プロジェクトのリーダー経験を保有していること, そして博士号所有者を歓迎することを謳っているような文言が多いような印象を受けました. 

応募もできないので, 一旦転職活動は頭の隅に置いておいて, まずは粛々と今の仕事で実績を積むことに集中することにしました. 一応, どんなところがどんな求人を出しているかについて, 月に1回程度JREC-INを覗いて確認する, くらいのレベルで情報を収集しました.

転職活動完了

そうこうしているうちに, 入社してから丸3年以上経ち, 中途採用でも申請自体は可能となりました. また, プロジェクトリーダー歴も少しは長くなってきたため, 転職活動をしようと思い立ったときよりは職務経歴が潤ってきました. 

ここから本格的な情報収集を行うようになりました. 大学の友人に, 友人の勤めている企業の研究所の雰囲気なんかもヒアリングしたりもしました. そうしているうちに, 国内のいわゆる大企業と呼ばれる企業では, 専門家としてのスペシャリスト育成よりも管理職候補としてのジェネラリスト育成に力を入れているところが多いように感じ, 転職したとしても今自分が抱えているような悩みに再び直面することになるのでは, と思うようになりました. 

画期的な発見に重きを置くのであればアカデミアか・・・. 一方で, 研究成果の社会実装・社会への還元に重きを置くのであれば企業か・・・. アカデミアへの道も視野に入れるようになり, どうしたものかと悩みだしたとき, ちょうどJREC-INに「とある大学発ベンチャー」の求人が掲載されました. 研究領域・分野も自分にぴったりで, 興味の方向性も一致していました. ベンチャーを立ち上げた先生の講演も学会で拝聴したことがあり, 研究レベルの高さも知っていたことから, 「これだ!」と感じ, すぐに行動を起こしました. 

1日調査に時間をかけ, 求人を見つけた次の日にメールを送りました. 面接のアポをとり, 面接. そこからの話はトントン拍子でした. 結局, 求人を見つけたその月には採用が決まり, すぐに転職を行うことができました. 

転職活動を通じて

1. 求人は水物である

自分の興味の方向性と一致する求人はなかなかありません. タイミング次第です. 転職したい!という欲求がピークになったときに転職活動を行い出すと思いますが, なかなか良い求人に巡り合わない期間が長引くと, いつの間にか転職活動を行う目的が「より良い環境に移りたい」から「とにかく出たい」にすり替わってしまう恐れがあります. 今出ている求人の中でマシなものを探す, という姿勢だと移った後に後悔する可能性もあります. 自分の譲れない部分を明確にし, 「求人は水物なので, 自分の希望を満たす求人がないときはない」とわりきって, ある程度時間をかけてタイミングを伺うのが良いように感じました. 

2. 博士号を取得していることはプラスに働きそう

これまで企業で博士号を持っていて得をしたことは一度もありませんでしたが, 転職をする場合には役立ちそうだと感じました. もちろん, 博士号を保有していなくても優秀な方はたくさんいらっしゃいますが, 「博士号=研究者としての免許証」のようなものです. 専門領域での一定レベルの能力を保証してくれますので, それ自体が1つの実績のようなものになってくれます. 1つの企業で一生勤め続けるのであれば話は別ですが, こと転職活動, しかも研究者としての転職活動を行うのであれば, 博士号を保有していることはことはプラスに働いてくれると思います. 


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