企業に入って感じたデメリット

企業に入ったデメリット

デメリットと言えないようなものもあると思いますが、あくまでも僕個人が感じているデメリット(フラストレーション)という風にお受け取りください。

その1 時間の流れの違い

これはその企業の研究所の方針や働き方にも依存するので一概には言えませんが、僕のところでは萌芽研究の進捗速度は非常に遅いように思います。

メリットのところで、「企業では重要度が高い研究課題であれば、そのお金に物を言わせて、外部の研究機関に実験を委託し、研究のスピードアップを図ることができます」と書きましたが、うまくいくかどうかまだわからない萌芽研究に関してはその限りではありません(繰り返しになりますが、僕のところだけかもしれません)。

当然自身で手を動かして実験する必要がありますが、土日祝日もあり、残業時間も厳しく制御されています。したがって、大学であれば1週間で済むようなものも、週をまたいで実施する必要が度々生じます。また、GWや年末年始もがっつり休暇があるため、研究を推進する上では少しやりにくさを感じることもあります。ときどき「これで世界のトップを走る研究グループと戦うことは難しいのでは・・・?」と思うこともあります。そこを頭をひねってなんとかするのが研究者としての腕の見せ所だろ、と言われそうな気もしますが。iPS細胞で有名な山中先生もVW(Vision&hard work)が大事ということをおっしゃっているように、ある程度ハードワークが必要なこともあるのが研究者だと思うので、ハードワークしにくいという環境はフラストレーションが溜まるポイントの1つです。

その2 ジェネラリストになることを強く求められる(ような気がする)

企業の研究所でのキャリアには、デュアルラダーが敷かれている場合が多いようです。すなわち「テクニカル志向」の主任研究員や主席研究員を目指す方向性と「マネジリアル志向」の管理職を目指す方向性です。

全ての会社でこのような2方向でのキャリアパスが用意されているわけではなく、専門性の高い主席研究員などの上級研究員のキャリアは用意されていない研究所もあるそうです。また、私の会社では、基本的には管理職に目指すことを前提とするような組織運営となっているような気がします。どうやらそういう会社は少なくないようです。

私の会社では上記のような理由からか、社内での評価基準も研究成果そのものよりもむしろ、別の観点からのものが重視されているように感じています。組織運営に貢献するような仕事を行うと、非常に高い評価がいただけます。

大学の教授を想像していただくとわかりやすいかと思いますが、一流の研究者は研究能力だけでなく、書類作成能力やマネジメント能力、コミュニケーション能力、調整能力など様々なスキルを持っている方が多く、まさにスーパーマンのような方々ばかりです。研究者は研究だけをしているだけではダメで、スペシャリストとジェネラリストの両方の性質を兼ね備えておかなければ真の一流とは言えません(と勝手に私は考えています)。

しかし、私の考えとしてはあくまで研究所の中心は研究におかなければならないと思っています。むしろ比率としては1人のジェネラリストに対して、数人のスペシャリストが存在する、というのが理想的な比率なのではないかと考えています。

製薬企業などをのぞいて、多くの日本の企業研究所ではその比率が逆になってしまうような方針で研究所を運営しているように思えてなりません。多くの会社ではジョブローテーションを基本として、様々な部署を数年経験して主力となる頃にはまた異動・・・。これではなかなか腰を据えて大きな研究を行うことは難しいように思います。

私の会社では、ジェネラリスト比率が高く、異動も多いため、専門性を深めることが難しい構造になってしまっているように思います。もちろん、優秀な人は自分で勝手に育っていくので優秀な人もいますが、貪欲に上を目指す人しか育っていないような気がします。なので、きちんと研究能力や功績を正しく上が評価できないために、研究成果ではない項目の評価比率が高くなってしまっているような気がします。

結果として、スペシャリストを育成するすべを持たない組織になってしまっているがために、組織全体の人材育成方針がジェネラリスト養成という方向に舵をきってしまっているのではないかと。おそらく無意識に。1社しか知らないため、これを一般化することはできないのですが、少なくとも私の会社ではジェネラリストになることを求められているような気がします。

その3 研修が多い

そのまんまです。研修が多い。

組織全体を知ることで自身の行う業務の全体像を理解することができるので、一見不要に思えるものが後々役に立つ、ということが多いのは理解できます。小学、中学、高校の授業なんかもそうですよね。こんなんいつ使うの?ということが人生のいろんな場面で役に立つことは往々にしてあります。

しかしながら、あまりにも多すぎるのも問題な気がしています。

個人的には、必修の研修をもっと絞って、ある程度の研修は選択式にするのが良いのではないかと思っています。

人によって描くキャリアも、必要な内容も異なるので、なんでもかんでも研修研修はいかがなものかと。

大企業になると、コーポレート部門が肥大化します。非常に斜に構えたものの見方であることは自分でも承知しているのですが、彼らが自身の業績として「〜という研修を行い、〜〜という考え方を身につけさせた」ということを言いたいがために、開かれた研修に強制的に参加させられているような印象を持っています。

また、毎年行われているから脳死して行われているような研修も多いような気がしています。研修内容に関してもですが、そもそも実施するかどうか本当に必要な研修なのかどうかの部分が議論されないまま昨年のものを踏襲して行われているようなものが多いと感じています。研修は時間・金が大変かかるコストですからね。本当に必要なのか徹底的に議論した上で実施してほしいものです。





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