企業に入って感じたメリット

こんにちは、あるいははじめまして、ケン です。

僕は大学院で神経薬理学を専攻し学位を取得した後、大手消費財メーカーの研究職として現在働いています。

大学時代も学部〜博士と、ずっと感覚の研究を行ってきましたが、幸いなことに企業に入ってからも感覚の研究に従事しています。

今回は企業に入って見えてきたことをつらつら書いていきたいと思います。

今回はメリット編

企業に入ったメリット

その1金銭的・時間的な余裕

前回の記事でも少し触れましたが、アカデミアと企業では金銭的な面での違いは顕著です。

福利厚生が充実している企業ならもちろんのこと、そうでない企業であってもアカデミアと比較すると1.5倍程度の給与がいただけるのでは無いかと思います。

雇い先にもよりますが、例えば博士修了後に幸運にも学振PDを取得できた人の場合。月給は36万円くらいですので年間だと434万円。これはポスドクの中では非常に恵まれた給与だと思います。学振PDは採択率が約10%でして、多くの人は雇い先にもよりますが、月給30万円をもらっている人は少ないのではないでしょうか。ポスドクの多くの人は年間300万円(=月給25万円)程度の場合が多いようです。

これに対し、企業ではだいたい博士卒の人は26~30万円程度の初任給が設定されているケースが多いようです。ただ、企業の場合だと初年度は夏のボーナスがないにせよ、2年目からは夏冬のボーナスが満額いただけます。博士人材を採用しているような企業だと、年間で5.5-6.0ヶ月程度のボーナスが設定されているケースが多いようです。ですので、30x (12+5.5) = 525万円程度が2年目からはいただけるのではないでしょうか。ポスドクのトップ層である学振PD取得者と比較しても100万円程度年間給与の差がつきます。家賃補助のような福利厚生や残業代を加味すると、その差はさらに広がります。

実際、私の知り合いで大学助教から企業に中途採用で入社した人は、年収がちょうど2倍くらいになったと言っていました。

また、土日祝日、残業なにそれ?という環境といっても差し支えないアカデミアの現場と比較すると、休日も多く、有給もあり、残業時間に厳しい企業はライフワークバランスが取りやすい環境であることは間違いありません。

また、そのほか時間に関して言えば、企業では重要度が高い研究課題であれば、そのお金に物を言わせて、外部の研究機関に実験を委託したり、実験補助員さんを雇って研究のスピードアップを図ることができます。これは企業に入って得たメリットの1つです。作業ではなく、知的な創造の部分に自分の時間を割きやすくなるというメリットがあります。

また、土日祝日を、自分の専門以外の研究論文や本を読む時間に当てたりして、視野を大きく拡げることもできます。さらに、その書籍の購入費用なども色々理由をつけて自分の研究に繋がることをアピールすれば会社のお金で購入してもらえたりもします。ですので、休みを利用して自分が好きな分野の勉強をガンガンすることはできます。

※ただ、その学んだことを研究課題として立案し、承認してもらえるかどうかは自分の興味と企業の興味がある程度重複している必要がありますが。。。

その2 多様なバックグラウンドをもつ人材の宝庫

企業に入ったメリットとしては、同じ研究所内に多様な専門性をもった人材がわんさかいることです。

僕自身は神経薬理学が専門なので、ポスドクとしてアカデミアに残った場合でもおそらく神経関連のラボに所属していたと思います。

神経薬理学と一口にいっても、僕のように感覚を専門にしている人もいれば、記憶を専門にしている人、統合失調症などの脳疾患を専門にしている人、神経細胞の分化・発生などを専門にしている人など専門領域は多岐に渡ります。ただ、ここでいう専門性が多岐にわたるといってもあくまでそれは脳神経科学分野でのお話に止まります。

会社に入ると、微生物をやっていましたという人や、有機化学を専攻していました、なんて人もいます。ただ、これだけなら薬学部でもそんな人はいます。薬学は複合領域の科学なので。

びっくりしたのは、数学や建築、植物や心理学、経済学なんかをもともと専攻していた人も普通に同じ研究所の同じフロアにいることでした。学術のサラダボウル・・・。そういう人たちって、同じテーマでアイディエーションしても全く異なる切り口で、しかもそれぞれ非常に面白いアイデアを生み出すんですよね。また、同じ実験結果を見ても、次に繰り広げる実験アイデアとしてそれぞれ全然違うアプローチを出したりするんです。これが非常に面白い点だと思います。

その3 人脈の形成

これは入る会社にも自身の研究領域にも大きく依存することかもしれませんが、僕の場合は様々な企業の方と交流する機会がたくさんあり、人脈の広がりを感じました。

特に、比較的規模の小さい、ある特定の専門分野の人ばかりが集まるような研究会に参加すると、アカデミアの方以外にも様々な企業の方と出会えます。特に、先輩についてそういう会に行くと、先輩の知り合いの企業研究者の方をご紹介していただける機会が多くありました。先輩がご紹介してくださる方は、別会社の比較的ベテランの方なのですが、そのときに向こうにも僕のような立場の入社歴の浅い同年代の方がくっついてきているケースがあるので、似たような境遇の者同士仲良くなったりできます。

あるいは、僕はあまり参加する機会はありませんでしたが、複数の企業が合同でやっている勉強会のようなものがあったりするので、それに参加すると一気に知り合いが増えたりするそうです。色んな企業の方と交流すると、大学院生だった頃には見えなかった社会の動きのようなものが見え出したりするのでわりと楽しかったりします。

以上が、個人的に感じている企業のメリットです。

次回、デメリットについてご紹介しますね。

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