入社1ヶ月半で会社を辞めさせられた話②

前回の話はこちら▼

まずは、入社後に感じていたことを色々と書いていこうと思う。
今回の投稿は、会社の「好きだった部分」をメインに書いていく。

私はたぶん、会社に恋していたんだと思う。
そのくらい、その会社のことが好きだった。 


就活の説明会や面接の時からすでに、「この会社は他の会社とは違う」と感じていた。

話しやすくて親しみやすい上司。
こんなにリラックスして受けられた面接は初めてで、逆に唖然としてしまった。

会社の内装も、全体的に暖かくて、アットホームな雰囲気。昼間は暖かい日の光が入ってくる。
会社というより、「誰かの家」みたいな雰囲気。
他の会社でありがちな、ビルに入ったオフィスだったり、全体的に白くて無機質な、冷たい雰囲気の所とは全く違う。

説明会や面接の段階から、実際に自分が働いているところを想像できるような会社だったので、内定をもらえた時は本当に嬉しかった。

そして、仕事内容がとにかく楽しすぎた。
私は就職活動で、本当に沢山の会社を見てきたが、これほどまでに自分が「こんな会社が良いな」と思っている条件に全て当てはまるような会社は、一社もなかった。

まずは、事業内容。
会社バレを防ぐため、詳しい事業内容は割愛するが、私が就職活動中にメインで見ていた業界の中でも、特に「やってみたい!」と思えるような事業内容だった。
同業他社と比較しても「この会社でなければならない理由」が明確で、間違いなく、他にはない唯一無二の事業であると思った。
こんなに、聞いているだけでワクワクするような、誇りを持って周りの人に話すことができるような事業内容の会社は、他にはなかった。

あまり名前は知られていない企業だとは思うが、本当に誰でも知っているような、名の知れた大手の企業からの案件が沢山入ってくる。
入社したてでこんなに大きな案件に携わることができるんだ、と思うと、本当に夢のようだった。

私は一時期、フリーランスで作家やアーティストになることを考えていた時期もあったが、この会社に入ってから、「自分一人で何かを作って、小規模な展示会を開いて、ほんの少しずつファンを増やしていく」ということよりも、「会社全体で何か大きなものを作り上げて、それを大勢のお客様に見てもらえて、自分はこんなに大きな案件の一部に携わることができたんだな、と実感する瞬間」 の方が、私にとっては格段に幸せで、やりがいも大きくて、本当にやりたかったことなんだな、と学ぶことができた。

また、研修で、部署を決定せずに様々な仕事をやらせてもらえたのも、本当にありがたくて、楽しかった。
自分にどの職種が向いているかも全くわからなかったので、「一回全ての部署を経験し 、適性や本人の希望を見て配属を決める」といったスタイルは、私にとってこれ以上ないくらい魅力的であった。

最初に行われた社⻑研修では、いきなり実務的なことを学ぶのではなく、その前段階の社会の仕組みや、「根本的な考え方」について学ばせてもらえて、本当に私たちの将来的なことまで考えてく ださっているんだな、と実感した。
社⻑は本当に親しみやすくて、新入社員の私たちにすら正直に全て話してくださって、会社の先輩たちのプライベートな話も、「そんなことまで言っちゃう?」と いうくらい色々教えてくれたのも、面白くて楽しかった。

職種の1つである営業職の研修では、「自分の会社の魅力について相手に伝える」ためにも、お客様に話す簡単なセールストークのようなものを学んだ。
会社概要について改めて聞いていたときは、「私はなんて素敵な会社に入れたんだろう」と思い、感動して、鳥肌が止まらなくて、涙が出そうだった。こんなに素晴らしい事業内容を、お客様にアピールしていくなんて、なんて素敵なお仕事なんだろう、と思った。
営業自体は自分にあまり向いていなかったが、営業の研修をさせてもらったことは本当に良い経験でしかなかったと思う。

その他の部署の研修でも、実務的な部分を早い段階から学ばせてもらえたのが嬉しかった。
その会社では、本当に幅広い業界と関わることができるということを知り、「とにかく色々なことを経験したい!自分を成⻑させたい!」という考えの私にとっては、まさに理想通りの会社だと思った。

実際に手を動かす作業系の仕事はとにかく楽しくて、大学での制作の延⻑線のようにも感じた。
学生時代の「⻘春」を、社会人になってまで経験させてもらえているような感覚だった。

入る前は「ブラックなのかな」という印象の会社だったが、(単純に残業が多そうなイメージ)、 入ってみたら全くブラックではなく、むしろ心配になるほどホワイトだった。
新入社員は必ず定時までには帰らせるし、それ以外の社員も、残業手当が出る1時間半以降は絶対に残らせないようにしている、といった話だった。

私の入った会社は大正解だった、と入社1日目から思ったし、その感情は、辞めさせられそうになる瞬間までは永遠に変わらなかった。

私は就職活動に苦戦し、合計で43社も落ちたし、内定をもらえたのはこの会社だけだったが、もしその落ちた43社すべてに受かっていたとしても、私は絶対にこの会社を選ぶ!と、胸を張って言えるような会社だと思った。

それから、会社には、とにかく良い人しかいない。
話していても「この人、絶対に良い人なんだろうな」が直接伝わってくるような人しかいなくて、それだけではなく、仕事に対して真剣で、人とし て尊敬できる人だらけだった。

また、とにかく「自分を成⻑させてくれる会社」といった印象だった。
仕事に対してストイックな先輩の姿を見ていると、自分の技量の足りなさ、努力の足りなさを突き つけられるように感じて、メンタルがズタボロになったり、心が冷たくなっていくような感覚に陥ることも何度かあった。
しかし、それも私にとっては良い刺激でしかなかった。私は、自分を成⻑させてくれるそんな環境が大好きで、これが本当の幸せなんだな、と思えた。

この会社は、全体的に「体育会系」と言えるような会社だったと思う。
「体育会系」の特徴としては、チャレンジ精神が強くて仕事熱心な人が多い。色々なことにチャレンジできる環境。何かあった時には、根性で乗り越えていくイメージ。新入社員にはとにかく手厚く指導をしてくれる。頑張った分だけしっかり評価されて給料も上がっていく。といった感じだ。

私は、この「体育会系」の雰囲気が、自分に合っているのではないか、と思っていた。

私は、自分の一番の⻑所は「行動力」だと思っている。これまで、とにかく様々なことにチャレンジしてきた。
どんなことにでも挑戦して、自分を成⻑させていきたい。多少の困難に遭遇しても、根性で乗り越える。何か 1つの物事に、これでもかっていうくらい熱意を注いでいく。
これが私の生き方であり、そんな私には、この「体育会系」と言えるような会社は、ぴったりなのではないかと思っていた。

また、常に会社の利益のことを考え、成果を出した社員の給料はどんどん上げてくれる、本当に実力主義、みたいな会社のスタイルも、本当に好きだな〜とその時は思っていた。
しかし、その言葉の裏には「そのためなら、無能な新入社員のクビなんてすぐに切れる」という内容も隠されていた、と今になって思う。
この残酷さに、どうして気付けなかったのだろう。

私は、何か 1 つのことに対してこれでもかっていうくらいエネルギーを注いでいくというのに⻑けている、「努力ができる人間」だと自負していたので、「努力すればするほどしっかり昇給もして、お金ももらえる会社」というのを知って、本当に良い会社に入ったな、私が努力のできる人間だっていうのを早く見せつけて、認めてもらうのが楽しみで仕方ないな、としか思っていなかった。

しかし、私の言っている「努力」は、会社側の求めている「努力」のレベルなんかの足元にも及んでいなかった。
それどころか、そもそも「実力主義」というのは結果を出せたかどうかが全てであって、「努力すれば良い」っていうもんじゃない、という前提を履き違えていた。

少人数の会社で、基本的に社内で全ての工程を行っているというところもとても好きだった。
1人1人の裁量も大きく、自分の意見をどんどん通せる、入社後すぐにでも大きな案件に携わることができる、1 つの業務を淡々とこなすのではなく、色々な分野に携わることができる。
これがまさに、私の求めていた「理想の会社像」そのものだった。
こんなに「理想の会社」に巡り会えるとは思っていなくて、「この人こそが理想の人!全ての面において私の求めているものが揃っている!この人が絶対に運命の人だ!」ってなるような“恋”に、すごく似ていた。
本当に運命の会社だと思ったし、自分は生涯、定年までここで働くものだと思い込んでいた。

しかし、当たり前に、個人の裁量が大きい=責任も重い ということに間違いはなくて、そこを軽視していたというか、よく理解できていなかったな、と今になって思う。

「恋は盲目」と言うが、私は会社に対して、「盲目」になってしまっていたのかもしれない。

それから、会社に入って、人生最大級レベルの推しに出会えた。
余談のように付け加えたが、これは私にとって、ものすごく大きな出来事だった。

年も近い会社の先輩で、
「人生で出会ってきた中で、こんなに推せる人間に出会ったことがない!」というレベルの人だった。

個性的な格好をしているのに、仕事に対してはすごく熱心で、仕事ができて上司からもちゃんと認められているところとか、一見話しかけづらそうに見えるのに、話してみるとすごく話しやすく親しみやすいところとか、“ギャップ”が詰め込まれたような人で、本当に推せるな、と思っていた。

そんな推しと早く仲良くなりたくて、でも今の私にはそんなに頻繁に話しかけたりしても許されるような資格もない、と思い、「早く推しと同じくらい仕事ができるようになって、上司からも認められるようになって、仲良くなるのはそれからにしよう」と自分の中で決めていた。
早く推しに追いつけるような人間になりたい、その一心でひたすら努力してきた。
「同じ会社だし、時間をかけて仲良くなれるならそれで良いや。まずは仕事で一人前になることだけを考えよう」と決めて努力してきたのに、結局その夢は叶わなかった。

推しともう二度と会えない、ということよりも、私は推しと同じ土俵にすら立たせてもらえなかっ たんだ、「追いつきたい」どころか、そもそも足元にも及ばなかったんだ、もう二度と推しと同じ世界線には行けないんだ、いうことを突きつけられたのが、何よりも悔しくて惨めだった。

私は、恋愛感情をエネルギーに変えるのが人一倍得意なので、これまでも、たくさんのことを好きな人、憧れの人、推しに対する「この人に認めてもらいたい」「この人に追いつきたい」という感情だけで乗り越えてきた。それで乗り越えられないことなんて、私には存在しないとすら思っていた。

だから、今回が人生初めての挫折かもしれない。

この記事が参加している募集

#はじめての仕事

4,032件

#仕事について話そう

110,435件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?