入社1ヶ月半で会社を辞めさせられた話⑤

前回の話はこちら▼

前回に続き、辞めさせられる経緯について書いていこうと思う。


休み明けの月曜日に、「ツールをどのくらい使えるようになっているかテストする」と言われ、出社した。

まず、午前中に先輩から呼び出され、話をされた。
やはり、元々私のことを辞めさせる予定ではあったらしいが(断言はされていないがそういったニュアンス)、それでも私がデータを送ったりしていたので、これで辞めさせるわけにはいかないから一応今日は来させたけれど、今はなんとか片手で掴まっている状態で、本当に崖っぷちの状況だ、とのことだった。

午後に、その「実力を見るためのテスト」が行われた。
休み期間に入る前に研修でやった内容を最初から最後まで一人でできるかどうか、というものだった。
「かける時間はほとんど見ていない。正確にできているか、言われたことを理解しているか、の確認面の方が大きい。80%以上のクオリティで、2時間半くらいでできたら一番良いけれど。」といった言われ方だった。
途中、あまりにもやっていることがズレている場合は助言してもらうこともあったり、自分から質問した場合にだけは答えてもらう、といった形だったが、基本的には一人で進めた。

結果として、時間をかけすぎてしまい(合計5時間程度)、途中でした質問も、根本的なことも完全に理解できていない、という解釈をされてしまった。
その後会議室に呼び出され、その場で「もうこの会社でやっていくのは難しいと思う」という話をされ、退職の方向に持っていかれた。

その日の作業は、13時ごろから始め、結局18時過ぎまでかかってしまった。
それについては「17時に終わっていなかった時点でもう無理だな、と思った」と言われてしまった。

「今回の件(体調的問題)があって、それでもうちは実力主義だから、実力があれば残らせてあげようと思ったけれど、それも無理だったんだから仕方ない」とのことだった。

「今回の土日に関しては、頑張っていなかったわけではないと思う」と言われた。
「ただ、辞めさせられそうになって、やばい、と思って急にやり始めた感じがする」「そういう人は、今後安定してしまったらやらなくなるから」とのことだった。
私は、これまでも全くやってこなかったわけではなかったが、それでも「他のことを全て捨てて」「命がけで」やったのは今回の土日だけだし、結局言われていることは本当に正論でしかなくて、何も言い返せなかった。

その前の週の研修レポートについても、「火曜日や水曜日に出してきた時点でもう無理だなと思った」 と言われてしまった。

朝に呼び出された時点では、「他の人よりも10倍、20倍頑張る覚悟があるならやっていけるかもしれない」という言われ方をした。
もちろん、その時は「あります」と答えた(し、実際そのくらい頑張る気はあった)が、私の今日の様子を見て、「それでも難しいと思う」とのことだった。

過去に、その先輩の同期で、私の7倍くらい頑張っていた人でも、ついて来られなくて1年目の夏くらいに辞めていった、という話もされた。
(当時は働き方改革や残業への規定もなかったので、夜中の2時くらいまでやっていた人もいたらしい。)
その話を聞いて、純粋に、会社の求めているレベルが高すぎたんだな、と思った。
もし今回辞めさせられずに済んでいたとしても、どっちにしろついていけなくて夏くらいに辞めさせられていたかもしれない、と思った。
それなら、今回辞めさせられたのは結果的には良かったのかもしれない。どうせ辞めさせられるのなら、早い段階の方が、私にとっても会社にとっても良かったのかもしれない。

しかし、もう少し限界まで粘ってみたかった、という気持ちもある。
今回の、「体調的問題」というきっかけがなければ、また、私がもう少し「仕事」以外のことを全て捨ててでも命がけで取り組んでいたら、 本来ならあと数ヶ月くらいは会社にいられたのかもしれないと思うと、私は何ひとつ悪い事はしていないはずなのに、本当に悔しくなる。

私には営業も難しくて、その他の部署でも、単純な作業はパートさんでもできる仕事だから社員である必要はなくて(その会社には作業専門のパートさんが数名いる)、今回やったツールでの作業から始めるべきだが、それも今日の様子を見ていたら厳しそうで
本来であれば機械操作をやらせてみようか、となるところ、私が前にレポートに書いた「車の運転操作が苦手」という内容を見て、そういう人は機械操作も苦手だろうから、やらせてみて失敗して大きな損失が出てからでは遅いから、それもやらせることはできない。
要するに、この会社にいても私にはできることがない、ということだった。これも、同期の子が辞めさせられた時と同じだ、と思った。

この会社は少人数だし、「人が財産」だから、一人でもそういう人がいると会社自体の経営が傾いてしまう、と言われた。

他の会社に行った方が私のためにも良いと思う、とも言われた。
「努力ができないというわけではないから、他の会社なら普通にやっていけると思う」という言われ方だった。

よく聞く、失恋する時の「あなたにはもっと良い人がいると思う」と言われ、「じゃあその良い人を連れてきてよ」ってなるアレに似ているな、と思った。
それならせめて、他の会社を紹介するとかしてほしい。
そもそも就職活動で43社も落ちた私が、もう一回就職活動をしたところで、どこにも受かるわけがないに決まっている。

とにかく、現実を受け入れられなかった。生きている心地がしない。
先輩から話を聞いている間は、頭が天井から引っ張られているかのような、その場に自分が存在していないかのような、そんな感覚。

もう何も考えられなくなった頭でも、唯一「とにかく、なんとしてでも辞めさせられるのだけはダメだ、そこだけは回避しなくては」ということだけは残っていたので、とりあえず「自分の考え方が甘かったと思っているので、あと1週間だけやらせてもらえませんか」と言ってみた。
しかし、「もう1週間は与えたのに無理だったんだから」という言われ方をされた。
直接「辞めろ」とは言われていないが、「辞めろ」と言われているようなもので、有無を言わせない雰囲気だった。

結局、言われていることはすべて筋が通っているので、何も言い返せない。
でも、私がなにひとつ悪いことをしていない、というのも間違いではない。
悪いことをしていないのに、自分から辞めたいと言ったわけでもないのに、もう辞める以外の選択肢は残っていない。それが現実。

結構もう、人生のトラウマ級だ、と思った。
帰り道はまともに歩けないし、スマホを見る気にもなれないし、一人で公園にでも行って泣きたいような気分だった。
結局、その時は涙も出なかった。
後になって、「ああ、私はこの会社のことが本当に大好きだったんだなあ」と実感した瞬間に、やっと泣くことができた。

一度、「明日また退職の書類を書きに来てもらう」と言われた。
私は、その1日の間で色々考えたり、労働基準法や不当解雇などについて調べたりして、対策を万全にしてから行こうと思っていた。
しかし、「もう用意できたから」と言われ、結局退職届をその場で書かせられることになってしまった。

「ここで退職届を書いてしまったら相手の思う壺だ」と思い、もはや私は「何があっても退職届は書かない」という心構えでいた。
会社側から「辞めろ」と言われているのに、あたかも自分から辞めたかのようにされるのは納得がいかないし、いくら試用期間だとはいえ、当日に言われて、その場で解雇されるのも法律的にもどうかと思ったし、これ訴えれば勝てるんじゃないか、とも思った。
(実際に、調べたら「会社側は30日以上前に解雇宣言をしないければならない」と出てきた。)

また、色々と調べたところ、会社側に「解雇理由書」を書かせることもできる、と出てきた。「解雇理由書」があることで、後から不当解雇として訴えることもできるらしい。
その「解雇理由書」について、「就職活動の際に必要になるかもしれないので」という言い方で書いてもらえるか聞いたところ、
「必要になったら後から言ってくれれば書くことはできるはず。ただ、 今まで辞めていった人で必要になった人は一人もいなかった」と言われた。「それに、書くとしたら詳細も全部書くことになるよ。そうだとしたら逆に就活に不利になるんじゃない?そんな人、どこの会社が欲しいの?」みたいなことまで言われた。
流石にその言い方はパワハラにしか思えないな、と思ったし、もはや私は就職活動とかじゃなくて訴えるのに使おうとしているだけなので、試用期間中だったとしても「体調的問題で辞めさせる」は法律違反なので訴えることはできるし、私が訴えたら一発でアウトですけど、とは思った。

退職届を書かされそうになり、実際に、「自分から辞めますって言ったわけでもないので書きたくないです」と言い、最初は書くのを渋っていた。
一旦書いてからその場で破り捨ててやったらどんなに気持ちいいだろうか、なんてことを考えたりもした。

私が書くのを渋っていると、「形式上必要だから」というようなことを言われた。いかにも「これが当たり前ですけど」みたいな顔をして書かせようとしてきて、一周回ってもう呆れてしまった。
このまま退職届を書かずに帰ったところで、この会社を辞めずに済むわけでもないし、もうこんな会社のためにこれ以上自分の精神を削りたくもないし、自分の時間も使いたくないや、さっさと辞めよ!と思い、結局退職届は書いてしまった。

話を聞いてもらった友人からは、「不当解雇だから訴えた方が良いと思うよ」といったことを何人かに言われたが、なんかもう訴えるとかもどうでも良いや、そんなことのために私の大切な時間を使いたくないな、そもそもこんな会社のためなんかに今後1秒たりとも使ってやらない、と思ってしまった。

ここは、失恋とは全然違うな、と思った。

私は、一度好きになった相手に対しては、失恋後もずっと好きなままだし、死ぬまで一生その人のことを忘れないが、あんなに大好きだった会社に対しては、辞めさせられた瞬間に、一瞬で吹っ切れてしまった。
よくわからないけれど、自分でも笑えてきてしまった。

辞める時、先輩1人1人に最後の挨拶すらできなかった。
それどころか、いかにも「また明日来ます」みたいな顔で「お疲れ様でした」と言って帰らなければならないのも、本当に残酷だと思った。
せめて最後くらい、ちゃんとしたかった。

同期の子が辞めさせられた時も、次の日から誰もそんな話題すら出したりせずに、何事もなかった かのように毎日が進んでいくのを見て、残酷でグロテスクだ、と思ったのを思い出した。きっと私の時もそうなんだろうな、と思う。

最初の段階からずっとお世話になっていた社⻑や女性の上司にすら、辞める際に直接挨拶することができなかったので、後日、3人の LINE グループに一言連絡を入れたところ、「残念な話だけど、身体には気を付けろよ」といった、身体の心配をされるような返信しか来なかった。
それを見て、やっぱり私が辞めさせられた本当の理由は、「ツールの復習ができていなかった」ということよりも、「体調的問題」の方なのではないか、と思った。
社⻑やその女性の上司は、「体調的問題」が原因で私のことを辞めさせようとしていて、男性の先輩は、それでもチャンスはくれたが、その上で「ツールの復習ができていない」という方で辞めさせようとしていたのかもしれない。

もし辞めさせられた一番の原因が体調的問題の方だとしたら、と考えてみた。
そうだったとしても、その程度のことで辞めさせてくるような会社だったら当たり前にこっちから願い下げだ。
もしツールの方が原因だとしたら、その方がまだ少しの悔しさはあるが、それでも、結局ついていけなくなって後々辞めさせられていたかもしれないと思うと、まあ妥当な結果だったのかもしれない。

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