入社1ヶ月半で会社を辞めさせられた話④

前回の話はこちら▼

今回から、辞めさせられた経緯について詳しく話していこうと思う。


まず、5月の中旬頃、体調的な問題により、病院で検査をしないといけなくなってしまった。
体調不良や重い病気というわけではなかったので、仕事にも全く支障はなく、普段通りの生活はできていたのだが、検査結果によっては手術が必要になってしまう可能性もあり、とにかく検査をするために早いうちに病院に行かないと、といった状況だった。
(結果的には手術の必要もなく、事なきを得ることとなった。)

仕事が終わる時間までやっている病院は少なかったので、仕事を1時間ほど早退することはできるのだろうか、という疑問から、一番話しやすい女性の先輩に、事情を全て話して相談をしてみた。
その女性の先輩が、別の「指導係」的立場の女性の先輩に大まかに伝えてくれ、私からもその先輩に詳細について話すことになった。

その指導係の先輩に、「今後の研修の予定を決めないといけないから」というようなことを言われたので、私は「〇〇さんや 〇〇さん(他の指導係の先輩)にこの件について話していただいても大丈夫なので、よろしくお願いします 」と言った。
かなりデリケートな内容ではあったので、その2人の先輩に報告するだけで終わるのかと思いきや、いつの間にか、上の方の人(社⻑や指導係の先輩など)は全員この件について知っている、といった状況になってしまっていた。

確かに、この会社は人数が少ない分、情報が回るのが早いとは思っていたが、プライベートな内容を、しかも私に確認もせずに全員が知っている状況にされてしまうとは流石に思わなかった。
良い意味でも悪い意味でも「報連相」ができすぎている。

研修が終わった金曜日、「指導係」的立場の男性の先輩に呼び出され、「しばらく会社を休んでもらう」ということを伝えられる。
今回の件で、研修の予定がずれ込んだりしてしまうのは困るから、とりあえず病院に行って経過が分かるなり、手術が終わるなり、落ち着くまで休み、ということにされた。

私はその時点で、自分が置かれている状況が、信じられないというか、受け入れられなかった。脳が理解を拒否していた。
毎日楽しくて仕方がなかった、1番の生きがいにしていた「会社」に行けなくなる、ということを想像しただけで本当に病みそうだった。
(毎週月曜日が来るのが楽しみで、金曜日が来るたびに鬱、というくらい会社に行くのが楽しくて仕方がなかった。)
生きがいを急に奪われて、私は明日からなんのために生きていったらいいんだろう、と思った。

しかも、次に病院に次に来るのは1週間後で良いと言われていたので、そこまでの経過観察期間である1週間すら休ませられてしまう意味が分からなくて「次に病院に行くのは1週間後で良いので、1週間後までは普通に出勤できます」と伝えたところ、私を休ませるもう一つの理由が伝えられた。

それは私が、研修中に教えてもらった、ツールを使用した操作を全くできるようになっていなかったから、ということだ。
その週の水曜日から金曜日まで3日間教えてもらい、その中で、水曜日に教えてもらったことを木曜日に理解・習得できておらず、金曜日の研修を反復のために使わせてしまい、それがいけなかったらしい。
「反復のために研修の時間を使うことになって次に進めないと困るから、休み期間に自分で復習してくるように」 と言われた。
しかし、それもあくまで「強制ではないから」という言い方で、「この期間をチャンスだと思った方が良い。やってくるかどうかは任せるけれど、これでできるようになっていたら『やるじゃん』って思ってもらえるだろうし」といった感じで言われた。

流石に仕事へのモチベーションだけはあるので、強制されていなくてもやろうとは思っていたが 、今考えると「強制されていないことを、“やらなかった”わけではなく、“やったのにやる方向性がズレていた”、さらに、成果を見せる場でも“全くできなかった”わけではなく、“確実に前よりはできるようになってはいるが、操作に時間がかかりすぎている”」という理由で辞めさせられるのは納得がいかなさすぎる。

それから、そのツールは自分で購入すると高すぎるので、流石に買うことはできないと思い、短期間の無料体験版を入れるのにもクレジットカードの情報が必要で、私は自分のクレジットカードも持っていないので無料体験版も入れることができず、相談したところ、「親のクレジットカードを借りるか自分で新しくクレジットカードを作るかして、とりあえず無料体験版でやってみな。それでもし休み明けに上達していたら、それ以降は会社のパソコンを貸せることになるかもしれないし、会社に残って練習して行っていいよ、ということになるかもしれない」と言われた。
練習してくるように言われたのに、会社のパソコンすら簡単に貸してくれないのはどう考えてもケチ臭くないか、と思ったし、そこで一気に勉強する気が失せてしまった。(結局、彼氏のクレジットカードの情報を借りて、短期間の無料体験は無事入れることができた。)

その日は本当に病み過ぎて、生きている心地がしなかった。
私が病んでいるのを見た友人がご飯に誘ってくれたりして、結局そこから3日間くらいは友達と会う予定が入ってしまい、それ以外の空き時間で少し勉強をした。(1日2.3時間くらい。)
それ以降(水曜日頃から)は毎日朝から晩まで勉強をする方にシフトチェンジしたし、自分の中では「もし月曜日から金曜日まで5日間会社を休んだとして、8時間×5日間=40時間。休み期間の勉強時間が、本来働いていたはずの時間分を超えれば流石にOKでしょ」と思っていた。(実際に、 休み期間での合計勉強時間は 44時間くらいにはなった。)
もちろん休み期間の給料は一切出ないが、勉強時間が、実際に働いていたはずの時間を超えることで、罪悪感も薄れたし、一応自己満足はできた。
しかし今考えると、その考え方もまだ甘かったらしい。

元々病院で「1週間後にまた来てください」と言われていたのは月曜日だったが、急に体調に変化があったことから、それよりも早い段階で病院に行くことになり、「手術などは必要ない」という結果も診断され、元の予定よりも3日早い金曜日には、先輩にも報告ができるようになった。
病院での結果と、「手術は必要ないのでもう出社することはできます」といった内容を、その男性の先輩にLINEで送ったところ、「出社日は考えるけど、休暇中に何をどれだけやったか、今出してほしい」と返ってきた。

私は休み期間中、土曜日〜火曜日くらいまでは、他の予定も入ってしまったことにより、前の週の水曜〜金曜に学んだ研修内容をもう一度理解し直しながら手書きでノートにまとめ直し、そのレポートを書いて出すのに時間を使ってしまった。
水曜日からはとにかくツールの基礎、基本的操作から学ぼうと思い、教本を新しく買い、1ページ目から順番に進めていった。
無料体験版で実際に操作すると同時に、初めて知るような内容はすべて、ノートに事細かく書き起こし、確実に覚えようとしていった。
約2日間で教本を63ページまで進めることができたのは、自分でもかなり頑張った方だと思った。

また、その前段階として、そもそも私自身、パソコンのタイピングがとてつもなく遅かったので、 タイピングの練習をひたすらやってみた。
本当にひたすらやったので、自分でもかなり早くなった自信はある。
大学時代、タイピングが嫌いすぎて、レポートもすべてスマホで打ってエアドロップでパソコンに送っていたような私が、「仕事のため」と思うだけでこんなに努力できるようになるなんて、 自分でも驚いた。

それから、ツールで使用できるショートカットキーをとにかく暗記した。
検索して出てきたものはすべて書き出し、その中でも頻繁に使うであろうものは確実に覚えようと思い、自分で何回も何回もテストをした。

研修で使用したツールは、大学時代に「自分は苦手だ」という思い込みから極力避けてきてしまい、必要最低限の機能しか使ってこなかったので、本当に「基礎」からスタート、といった感じだった。
どんなに苦手なことであっても、「仕事のため」と思うだけで、意地でも克服しよう、という気になれる。これまで食わず嫌いで避け続けてきてしまったことでも、「仕事のため」と思うだけで、真正面から立ち向かうことができる。
そんな感覚が本当に嬉しかった。

先輩から「休暇中にやったことを提出してほしい」との連絡が来て、私は教本で勉強した内容、ノートにまとめた内容、ショートカットキーを暗記していたこと、などを報告した。

返信は、「研修で教えた内容を次出社する時までにできるようになっていないと困る。それを伝えていたはずなのに、 なぜ研修の復習をやらずに関係のないことをやっているの?」といった内容だった。
要するに、ツールの基礎を勉強するよりも、実務的なことの復習を優先すべきだったらしい。

私は、ツール自体の基礎を抑えてからでないと次に進めない、進んではいけない、と思い込んでいた。
基礎をわかっていない状態で実務的な部分だけをやったとしても、途中でわからないことだらけになってしまうと思うし、本当は効率の良い方法があるのにそれを知らないまま進めて行ったところで、結果的に効率が悪くなってしまうと思っていた。
土台がないまま進めていくような、表面的な部分だけ取り繕っているようなやり方になってしまうのは、どうしても納得がいかない、という考えだった。
私はどうしても教本を順番に進めたくて、研修でやっていないような、実務では全く使わないようなツールの機能まで勉強してしまっていて、それがいけなかったらしい。やる内容がズレている、 とのことだった。

元々、そのツールの基礎をある程度習得し終えたら、実務的な研修の内容の方を反復する予定ではいたので、「教本の方をキリの良い段階まで進められたら、早い段階で実務の方の練習に移ろうと思います。」「土日で研修内容の復習をします」といった内容を送った。

先述のとおり、私は元々変なところでこだわりを持ってしまう習性があり、どうしてもそのこだわりだけは捨てられない、捨てるくらいならいっそのことやらない方がマシ、と思ってしまうような性格だ。
しかし、今回だけは、会社を辞めさせられたくはないし、仕事のためならそんな自分も捨てなくてはならない、というのも充分わかりきっているし、どんなことのためでも捨てられなかった「こだわり」も、今なら努力して捨てることができるかもしれない、今がその「こだわり」を捨てる練習をするチャンスかもしれない、とすら思った。

研修の復習(実務的内容)を、「今日やれるところまでやってみな」と言われ、「教本の方が中途半端になってしまっているので、あと数時間だけ進めたら研修の反復に取りかかります」と送ったところ、
「今日までしか待てない、と言っているんだけど。」「次出社する時までにできるように、というのは、当日の直前という意味じゃないから。次の出勤日を決める時だから。」「今日出せなかったら次のスケジュールは決められないわけだから。」と突然言われた。

「こう言っているんだけど」と急に言われたところで、どう考えてもそんなことそれ以前に一度も言われていない。
なんなら、「私のやっていることがズレている」と指摘されたのもその日だし、もう月曜日以降出勤することもできる、と決まったのもその日なわけで、それはたまたま検査結果が早く出たからそうなったことで、本来であれば3日後の月曜日までは何も決まっていなかったはずだ。
それなのに、3日も早く連絡をした上で、その連絡をした当日に、あたかも「前から言っていましたけど」みたいな顔をして初めて聞く言葉を放たれても、意味がわからなさすぎるし、そもそも言っていることが支離滅裂で伝わってこなさすぎるし、日本語として成立していなさすぎるし、どう頑張って読み解いたところで理解できるわけがない。
そんな支離滅裂な文章を「当たり前ですけど」みたいな顔で送ってくる神経もよくわからないし、正確に読み解いているはずのこっちが 「私の解釈違いでした、すみません」なんて何度も送らないといけないのも腑に落ちなさすぎる。
100:0で、向こうの伝え方の方が悪いに決まっている。
(後から友人にこのやりとりを見せたところ、 何人かに「これはこの先輩の伝え方が悪い」と言われたレベル。)

また、そのあたりから急に「それができなかったらこの業界でやっていくのは厳しい」と何度も何度も繰り返し言われるようになった。同期の子が辞めさせられた時と全く同じように、解雇を匂わせ始めてくる。
「あくまで、こっちはチャンスを与えているんだから」という言い方で正当化しようとしているが、どう考えても、チャンスを奪おうとされているようにしか思えなかった。

研修中にやった内容の一つとして、「デザイン案を元に、ツールを使用して書き起こす」というものがあり、その日に先輩から「例えば、これをやってみるとか。」と、私が研修中に描いたデザイン案が1つ送られてきていた。
私はその送られてきたデザイン案の書き起こしをする前に、研修で一度やった内容と同じデザイン案の書き起こしをやってみて、それができてから、先輩から送られてきたデザイン案や別のものに挑戦してみよう、と考えていた。

そこで、研修でやった内容と同じデザイン案の書き起こしの方を、その日の夜(連絡がきてから3時間半程度)で提出したところ、「なんで、これをやってみな、と言ったのと別のものをやってくるんだ」「ラストチャンスを与えたのに、言われたものと違うことをやるとか、意味がわからない」などと散々に言われてしまった。
私は、「やれ」と言われたことをやらないで怒られるのならわかるが、「例えばこれをやるとか」と、例として提示されたものをやらずに怒られるのは、本当に意味がわからないと思った。

この日は、なにか 1つでも文面ややった内容を送るたびに、先輩から攻撃を喰らうような、打ちのめされるような、潰されるような感覚だった。
返信が来るたびにメンタルが削られていって、もうこれ以上削られるメンタルは残っていない、というところまできていた。

心が冷たくなっていく感覚。
私は、身近な人が亡くなった時と失恋以外で、こんなに心が冷たくなったことは一度もなかった。
自分にずっと「大丈夫」と言い聞かせていたけれど、本当にどう考えても大丈夫じゃなさすぎて、絶望的な未来しか見えなかった。

また、ちょうどそのツールの研修を受けていた中で、「この後残ってこのパソコンで反復していっても良いよ」と言われていた日に、残って復習せずに帰ったことも責められた。
「あの日、何もやらずに帰ったよな。それなのに次の日できるようになっていなかったよな」という言われ方をした。
その日は、友人と3人で夜ご飯に行く予定があった。地方に住んでいて、結婚して妊娠中で、出産前最後に東京に帰ってきた友人と、色々あって疎遠になり、1 年近く連絡も取れなかった友人と、3人で本当に久々(しかも次いつ会えるかわからない)に予定を合わせられる日がこの日しかなかった。
その上で、私の仕事のせいでその2人を30分くらい待たせている状況だったので、どう考えても帰るしかなかった。
もう次会えるのが何年後になるかもわからない友人よりも、仕事の復習の方を取らないといけなかったのだろうか。

その後、「今回がラストチャンスだったんだからな」と、もう私は会社を辞めるしかない、ということを何度も遠回しに言われた。
何一つ悪いことをしていないはずの私が、こんな日本語が支離滅裂の人のために謝らないといけないのも、頭下げて「もう一度チャンスをください」というのも、悔しくて惨めで死にたくて仕方がなかったが、そんなプライドよりも、「こんなことで会社を辞めさせられるかもしれない」ことへのプライドの方が格段に大きかったので、ちっぽけなことへのプライドはもう捨てることに決めた。できるところまで縋り付いて、粘ってみよう、と思った。
こんなことで折れるのは私ではない。これまでの人生も土壇場で粘って、根性だけですべてのことを乗り越えてきたこの私が、こんなことで折れていられるわけがない、と思った。
「勘違いでチャンスを無駄にしてしまい、すみません。」「明日の朝また送らせていただいてもよろしいでしょうか。」「もう一度チャンスをいただきたいです」など、とりあえずひたすらに粘ってみた。

その日は、先輩から送られてきたデザイン案の書き起こしの方を寝ずに朝までやり、次の日の朝にデータを送った。
その次の土日も、朝から晩まで全ての時間を費やし、言われていた研修の復習、実務的なことに時間を費やした。土日ぞれぞれ、9時間ずつくらい勉強した。
もしも「もう送らなくていい」と言われたとしても、とにかく毎日送り続けよう、と思っていた。

私はその時点で、「会社を辞めさせられそうになっている」と何人かの友人に相談していた。
「そんな会社辞めちゃいなよ」「辞めても他にも道はあるよ」と言ってくれる友人も、もちろん優しさではあるし、ありがたいことではあったが、そんなことよりも「これから毎日めげずに送り続けたら見直してくれるかも」「あなたなら乗り越えられるよ」と、諦めない方の選択肢を提示してくれたり、励ましてくれるような言葉が、私にとっては何よりも嬉しくて、モチベーションにもなって、生きる気力にもなっていた。

また、この件については、相談する友人によって捉え方が全く違っていたのも面白かった。
「この先輩の伝え方が悪いと思う」という意見もあれば、「先輩の言っていることは筋が通っていると思う」 という意見もあり、「この会社やばい気がする」という意見もあれば、「タイミングと運が悪かったからしょうがないね」といった意見もある。
色々な角度から見るためにも、人に相談するのは本当に大事だな、と思った。

一番意外だったのは、ある人に相談した際に、「辞めさせようとしているわけではないと思う。厳しいこと言うけどついてこいよ、って言っているようにしか感じられない」と言われたことだ。私にとっては、辞めさせようとしているようにしか見えなかったので、それは少し意外で、新しい視点だなと思った。
もしかしたら私は試されているのかもしれない。「ここで辞めてしまう人はそこまで」といった感じで、熱意を見られているのかもしれない。
そう思うと、そんなものに負けてたまるか、と底力が湧いてくるようだった。

また、先輩か送られてきた内容や、「辞めさせよう」というのは、その先輩の意思なのか、もっと上の人 (社⻑など)に命令されていることなのか、それすらもわからないのが余計に怖かった。

この記事が参加している募集

#はじめての仕事

4,032件

#仕事について話そう

110,435件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?