マガジンのカバー画像

エッセイ、その他

17
運営しているクリエイター

2023年9月の記事一覧

『プラトニックな浮気』

『プラトニックな浮気』

 これまでで一番本気な恋愛は、プラトニックな「不倫」だった気がする。

 今から4年ほど前の話。

 かの女には旦那がいた(今も婚姻生活が続いているかは分からない。かの女と連絡をとっていないので)。

 それを分かっていた。

 相手もぼくも。その上で、互いへの好意がーー不倫をしているという、背徳感に近いものからなのかーー日に日に増していった気がした。

 前の話なのにその記憶は鮮明だ。

 かの

もっとみる
『朝になる前に』

『朝になる前に』

 眠れない空に起きている。

 夢のような、現実のような、なんともいえない感覚だ。アンビバレントで骨格がない感じ。今置かれている精神状況だ。

 ぼくは無神論者で「人間の魂の浮遊」といったたぐいの話は、信じない。なのに、だ。魂がどこかへと、さまよわないよう、言い聞かせている気分。

 なんなのだろう。

 たまにあった気がする。けれども、初めてな気もする。どっちつかず。起きたら、感覚がどうたらと、

もっとみる
『沈黙する命』

『沈黙する命』

【記憶】

 小学4〜5年生の時の話だ。

 竹やぶのような山に、叔父がぼくを連れていった。秋田県に住む、叔父の家からすぐそこのところ。目的は告げなかった。黙って山を上りきった。

 炭となった車が一台、場違いな空気を放ちながら、佇(たたず)んでいた。

 無神論者だが霊的なものを感じた。無言の圧力を受け、耳鳴りがしそうだった記憶がある。言葉にしがたい違和感。

 少し経って「昨日ここで、車のなか

もっとみる
『煙に包まれて』

『煙に包まれて』

【衝撃】 テレビ越しに映る世界貿易センタービル(WTC)に飛行機が突っ込む。煙を放ちながら、もう一台がWTCを破壊する。つづけてWTCが倒れてゆく。混乱状態にある人びと、助けを求める人びと。

 一瞬で。道路が灰に覆われるニューヨークの姿が、まじまじと映されていた。ーー22年前の今日、2001年9月11日の出来ごとだ。

 非現実的な光景を目の当たりに想像力は無力だ。

 当時ぼくは12歳だった。

もっとみる
『試練の技術』

『試練の技術』


【AIの悪用】 AI(人工知能)が犯罪に悪用される恐れが高まりつつある。

 「ディープフェイクボイス」ーー。AIによって生成される他人の声のことだ。知人や親族の「なりすまし声」を犯罪者が活用できるのでは、と懸念されている。

 生成AIなど、精度の高い技術が企業の生産性を高めるなど、技術発展の恩恵は大きいだろう。生成AIによって議事録が作成される。

 また、蓄積されたデータを用いて、文章を生

もっとみる