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恋日記

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愛から、恋にならない恋まで
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#恋日記

置いていかれた、花火の夜。

置いていかれた、花火の夜。

今日は隅田川の花火大会だったらしい。
わたしはあいにく仕事だったので、クライマックスの様子だけテレビで見ていた。

隅田川の花火大会には一度だけ行ったことがある。二十歳の夏のことだ。

当時好きだった人にふたりで花火に行こうと誘われた。好きな人と花火に行くことも、東京の花火大会に行くこともはじめてだったわたしは、とても楽しみにしていて。

でも結局、人がたくさんいたので立ち止まってゆっくり見ること

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恋人をいつまでこんなに好きなのだろう

恋人をいつまでこんなに好きなのだろう

密かに、でも本当に本気で悩んでいる。

恋人のことを、いつまでこんなに好きなのだろう、と。

惚気でもなくて、嫌いになりたいわけなんかなくて、わたしはいつも本当に、彼の一挙一動でみっともないくらい笑ったり泣いたり、すべてのエネルギーを使って、いつも全力の愛と恋を傾けていて。

もう付き合って6年目だというのに、彼がおしゃれしているだけで他の何も手につかないほどドキドキしたり、バレンタインに会社の人

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半分このわたしたち。

半分このわたしたち。

朝、わたしのアラームで、彼のほうが先に目を覚ました。朝と夢の間をさまようわたしをよそに、少し暑かったのか、彼が窓を開ける。梅雨特有の冷たくて湿った空気が部屋に流れこんでくると、彼は再び眠りについた。そうか、彼は今日休みと言っていたなあと、ぼんやりした意識のなか思う。

だんだん少し寒くなって、寝ている彼の腕の中に潜り込んだ。わたしは寒がりで、彼は暑がり。そんな彼の腕の中は案の定、ほかほかに暖かくて

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今度は一緒に行こうね

今度は一緒に行こうね

今日は彼が晩ご飯にネパール料理を食べに行っていた。写真だけ送られてきて、わたしはインドやネパールの料理が大好きだからいいなあ、なんて思ってて。

彼はわたしをからかうことが生きがいのひとつなので、おいしいお店を見つけて誘っても、なかなか一緒に行こうとは言ってくれない。わたしが一緒に行きたいと言って拗ねているのを見るのが楽しいみたい。

わたしも、「じゃあいいもん」と言えたらいいのだけど、馬鹿正直に

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14歳の教室。

14歳の教室。

すれ違った瞬間が、永遠に感じられるような恋だった。

もしも、恋を選ぶことができるのなら。好きになる人を選べるというのなら、わたしは決して彼を好きにはならなかっただろう。

彼はわたしの親友であるMに、恋をしていたのだから。

叶わないことなんてわかっていたのに、崖の上から滑り落ちるように、気づいたらその恋の淵に立っていた。
彼は毎日まいにち、Mと話すために教室に通っていた。側から見れば、彼がMの

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大切なあなたにケーキを

大切なあなたにケーキを

友だちと会った帰り道。
たしかこの辺りには、おいしいケーキ屋さんがあったはず。まだやってるかな?と検索して、営業時間ギリギリなことに気づいて慌てて走り出した。
今日は家で彼が待っている。おいしいケーキを彼と一緒に食べて、笑顔になりたい。喜んで、くれるかな。

かつてわたしが付き合った人たちはみんな、特別な日でもないのにケーキやアイスを買ってきてくれた。

わたしはそれがとても嬉しかった。日常の小さ

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