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定額な海で攫ってくれる王子様に夢を見て

時々、この社会に順応して擬態できているように見えて、波に乗れている、大丈夫だと思い込んでいても、あっという間に呼吸ができなくなる。息苦しくて、乗っている船ごと沈没して溺れてしまいそうになる時は、逃避行をする。呼吸を落ち着かせるように、深いため息か、深い深呼吸をした時が、逃避行の合図。

ある人は、たくさんの人と会うことで癒しを補完するだろう。ある人は、殻に閉じこもって自分と対話することで呼吸の術を見つけるだろう。自己との対話の中では、誰かと会わずとも、本や動画の創作物から他者の主人公物語を、誰を傷つけることなく、自分を傷つけることなく、拝借できる。逃避先に誰かの物語を借用することは、心の回復へ手っ取り早いのだ。たくさんの人と会うことは、生身の人間に触れる必要があり、エネルギーと感じる人もいるだろうが、むしろ疲労蓄積になり、控えたいタイプもいる。好きだけれど控えないと、沈没寸前の船のまま、見知らぬ土地に自我を持てないまま漂流する。

創作で架空として設定されている物語を一気見するとき、その世界に没入できる。外界の音も景色もノイズを丸ごとシャットアウトして、“非日常”に小さい端末一つでダイブできる、まるで深い黒い海のようだ。私の辛い感情丸ごと連れ去ってくれる、サブスクリプションサービスは果てしない海で、時間も感覚も自分も、波のまま連れ去ってくれる。ここで息を吸うのだと、息を吸う瞬間を教えてくれるようだ。

それは逃避と名付けられるのだろうけど、寧ろ現実逃避だと代名詞すらもらえるだろうけど、とめどなく流れる自分のネガティヴな思考を停止できないから、代わりに違う世界を持ってきて上書きで塗り替える。波で、そのままネガティヴごと洗い流してくれたらいいのにね。


嗚呼、どこかにこのまま本当に連れ去ってくれるのならば、君は次世代の王子様になれるよ、定額課金で私の王子様になってくれるのならば安いものだ。誰かが連れ去ってくれるのを待つのではなく、私から課金をして架空の王子様を作るんだ。

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