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世界放埓日記

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2017年12月の記事一覧

「合格」と「1位」の違い

人から批判を受けて次の課題が生まれるたびに、己の未熟さを突き付けられる。
しかし、それと同時に、許されたような心地になる。
私はまだ成長出来るのだと。
まだ成長できると期待されているのだと。
誰からの批判も受けず、けれども選ばれることなく、ひとりむなしくあげた声は誰の心にも届かないで消えていくこと
それを人は無関心と呼ぶ。
私はそのことを最も怖れる。

2017年最後の本番は、クリスマスの日に行わ

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化粧総崩れ

「全米が泣いた」のような客觀的な惹句は私の心に響かないので、代わりの言葉を考えた。皆さん使ってください。男性でも可!

時折ふらっと映画を観に行く、ひとりで。気に入ったら4回でも5回でも映画館に足を運ぶ。
私はサプリメントよりも、美味しいご飯を親しい人と食べるのが好き。ご飯を食べた後にお腹がくちくなって、身体の奥から暖まるのがわかるから。
安易に答えを提示する自己啓発本よりも、答えを模索する姿を曝

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白は別に一色ではない

ユーリノルシュテインのアニメーション「はなしのはなし」を初めて観たのは、芸大の学部生だった頃の情報学の授業だった。
情報の授業の先生はユニークな方で、その割に私はその講義を全く覚えていないけれど私のレポートに対するお返事が面白かったことや、スティーブライヒの音楽について盛り上がったこと、車の趣味が近しいことで、勝手に親近感を感じていた。

いつだったかの授業で、先生はノルシュテインの「はなしのはな

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急所はいかがですか

学生時代に学生の主催するイベントのインタビューのなかで「好きなタイプ」を訊かれた。
私は「彼女を優先順位の一番にしない人」と答え、みんなに不思議がられた。

他の答えの中には「彼氏のネクタイを結べる子」とか「風邪を引いた時に移しても怒らない人」なんてものもあったけれど、そういうことを書く人達に限ってDVで目の周りを青く腫らして両親に別れさせられたり、講義のサボタージュを繰り返して周りに煙たがられて

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車乗りの恋人

この1ヶ月、恋人のクリスマスプレゼントに頭を悩ませている。

私の恋人の好きなものは車で、私はそんな恋人が好きだ。
彼が運転する国産スポーツカーは、低いうなり声をあげながらC2を走る。ハンドルを何度も切ることなくコーナリングを決める彼の横顔は、トンネルのライトに照らされてとても美しい。オービスの位置を熟知する彼は、きちんとオービスの出現の手前で減速することも忘れない。そんな彼は最近、移動式オービス

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生きる意味を問うた私に

久しぶりに演奏をしていて涙で視界がぼやけそうになった。

12月。音楽家が慌ただしくなる頃である。ヘンデルのメサイア、ベートーヴェンの交響曲第9番、くるみ割り人形。
12月に弾くということは、練習するのはそれよりも前。師が走るのなら若手はその先に赤毛氈を広げるために倍速で走らなくてはならない。
季節を先取りしている我々は、イルミネーションを味わう余裕もない。きっと今頃、邦楽畑の人たちは新年の曲をさ

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ジャージは究極のエレガンス

小学生の頃、ランドセルが嫌いだったから、青いリュックで登校していました。
アメリカから母が取り寄せたそのリュックはたくさんポケットが付いていたし、水筒を入れるホルダーもついていたので、鍵っ子だった私は鍵を失くさずに済みましたし、折り畳み傘を常備していたためにわか雨の日に風邪をひくこともありませんでした。
同級生や先生は言いました。
「どうしてリュックで登校するの」
私は答えます。
「ランドセルを背

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