急所はいかがですか

学生時代に学生の主催するイベントのインタビューのなかで「好きなタイプ」を訊かれた。
私は「彼女を優先順位の一番にしない人」と答え、みんなに不思議がられた。

他の答えの中には「彼氏のネクタイを結べる子」とか「風邪を引いた時に移しても怒らない人」なんてものもあったけれど、そういうことを書く人達に限ってDVで目の周りを青く腫らして両親に別れさせられたり、講義のサボタージュを繰り返して周りに煙たがられていた。

本当は、私だって好きな人の弱みを握りたい。
なんなら私自身が好きな人の弱みになりたいとすら思っているの。
でも、私を簡単に弱みにしてしまうようなつまらない男と話すことは何もないし、つまらないからすぐに飽きてしまうことだろう。

私を弱みにして欲しいのは、あなたの気持ちが離れた時のため。
あなたのことを好きな他の女の子のため。
でも本当は知っている。
私があなたの弱みでいられるのはほんの僅かな時間でしかないってこと。

だから、私はそんなものに頼りたくないの。あなたが私に幾つ贈り物をしたかとか、どれくらい愛の言葉を囁いたかとか、そういう小さな宝石を拾い集めて慈しむようないじましい真似なんて、したくないの。
私はあなたが頂上を目指して登っている姿を、私の登る山から時折確認するのが好き。
晴れた日に遠くの山で私に向けて狼煙が上がったら、澄んだ夜にモールス信号の点滅が続いたら、私はそれだけで胸が暖かくなる。

時折、伝書鳩を飛ばそう。
お互いに生涯をかけて登る山の頂から、どんな景色が見えるのか、お互いの言葉で伝えあおう。

#エッセイ
#小説
#短編小説
#恋愛

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?