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1場面物語

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これは私が描く一場面の物語
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一場面物語〜聖剣物語〜

一場面物語〜聖剣物語〜

朽ち果てた建物に光が差す。
その光は隙間を縫うように建物内部を照らした。
美しいなぁと私はその光に、溜息をもらす。
崩れ落ちたドームが長い戦いの記憶を呼び覚ます。
周りの苔むした感じから、この場所が長い間放置されたことを知る。

火薬と怒号と血のニオイ。
混沌に堕ちていく世界がそこにはあったのだ。
その中で彼と私は出逢った。
そして、力強く握りあった。
まるで、運命に導かれるように。

強かった。

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一場面物語『サイドᗷ +』ふみ

一場面物語『サイドᗷ +』ふみ

「ふみはさ、俺のことちゃんと好きじゃん。」

資料をとめる作業を黙々こなしていた私の向かいに座った司はそんなことをいう。
私はチラッと、顔を上げて司を軽く睨む。

「俺の顔がどうだの、なんだのじゃなく、俺のこと好きでしょ?」

まるで独り言のようにそう言う。
私は作業する手をとめることなく、その、独り言に応える。

「うん」

「だから、ふみがいいんだよ。」

私は軽くため息をつく。

「とんだ告

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超思いつき1場面物語『手紙』

超思いつき1場面物語『手紙』

という手紙を、何気なく開いた古本の間から見つける。
紙は、どうもまだ新しい。
じっくり見る文字は丸く可愛らしい。
美しい青い文字色が薄暗い古本屋と相まって、まるで、魔法の書のように輝いて見える。

僕は、この人の探すアナタを知っているだろうか?
記憶の中にアナタを探してみるが、悲しいかな。僕は知り合いが少ない。

夏休み入りたての、午後3時。
人気のない古本屋の奥で僕はうーんと小さく唸った。

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過去の1場面物語~小さな夢の生まれる夜空~

過去の1場面物語~小さな夢の生まれる夜空~

これは1場面物語の独白の間。
過去→ある人の独白
未来→ある者の独白

そして今は小さな歩み。

埃っぽい棚にある埃っぽい箱を開けてみた。
そうしたら、中にはそれが入っていた。
私はそれを優しく撫でて埃を払った。
少し冷たくて、とても軽い。

「それなぁに?」

私の後ろにくっついてきた子達に
そう聞かれて皆の目の前でそれを広げた。
サラサラという音と共に柔らかく広がったそれは
ランプの光をうけて

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過去の1場面物語~とある者の独白~

過去の1場面物語~とある者の独白~

最初に思い出すものと
最後に思い出すものが
一緒というのは幸せだと僕は思う。

僕は始まりの為にいたから
始まってしまった今、終わらなければならない。

あの薄暗く湿った空間で君が目覚めたあの日から
「サヨナラ」に向かって僕は歩きだしていたんだ。

子供達のお喋りする声や
僕の親代わりの人との生活
自分が何者なのか悩んだ日々

そして、君が僕を呼ぶ。
それは、始まりの終わり。

終わりから始まりが

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過去の1場面物語~ある人の独白~

過去の1場面物語~ある人の独白~

私は……間違ったのだろう。
そう思う。

此処は何時でも薄暗く湿っている。
手元を照らすライトが唯一の光だ。
暖かな陽の光を見たのは何時だったか。
私がそれを見る事はもうないのだろう。
それが私の背負った罪なのだから。

滑らかな背中に手を当てると
体温らしい体温を感じる。
それにホッと胸を撫で下ろしながら
私は直し続ける。

何故、こんな事になってしまったのか。
私はこうなると知っていたのではな

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過去の1場面物語 「約束」

過去の1場面物語 「約束」

『心には替えがないから…』

少女は目をふせ、一旦口を閉ざす。

しかし、すぐに顔をあげて目の前にいる人物に言葉を続ける。

『私にくれるって言ってくれたのは嬉しかったけど…駄目。もらえない。』

「どうしても。か?俺があげたいからあげるんでも駄目か?」

少女の言葉を受けた人物…少年は少女をじっとみつめた。

『うん。』

少女は少年を瞳に映しながら

『物語は、アナタのもの。アナタが紡ぐ物語を

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『メモその2』

『メモその2』

ゴミ箱があった。側面に『ユめ』と書かれている。近くにいた子供達が灰色の塊をソレに投げ入れる。アレが『ユめ』だろうか?
私は彼らに話を聞こうと近づいた。
その時だった。
遠くからガチャガチャと音を立ててなにかが向かってきた。
足を止めて奥を見ると不思議な生き物がそこにいた。
不思議な生き物はどうやらゴミ箱の中身を大きな口に入れて食べているようだ。
口を動かすたびにガチャガチャと音が鳴る。
『ユめ喰い

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1場面物語---星繋ぎ

1場面物語---星繋ぎ

「片道なんですよ」

彼は丁寧に星を糸で繋ぎながらそう言った。

「片道なんですか?」

私はどうしてそうなったのか、酷くこんがらがった糸に苦戦しながら聞き返した。彼は「そうなんですよ」と小さく微笑んだあと私の手から先程より更に酷くこんがらがった糸を取り上げ魔法のようにスルスルと解いていく。
はいどうぞ、と渡された一本の糸は嬉しそうにキラキラと輝いた。
私はそんな糸が何となく気に食わなくて、えいえ

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