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ノベリスト

10
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ノベリスト 第10話

ノベリスト 第10話

第3章 赤い新月

その3

-携帯小説サイト 物語のiらんど

ハンドルネーム 赤い新月-

しかし、彼は私が本当に欲しいものをすぐには与えてくれない。

いわゆる大人のおもちゃは私の身体のあちこちを這いずり回っていたが、肝心の私の秘所に触れることはない。

私の子宮は彼の全てを受け入れる準備ができているのに、彼はその素振りも見せない。

「おい、メス豚!」

「はい」

「今

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ノベリスト 第9話

ノベリスト 第9話

第3章 赤い新月

その2

-携帯小説サイト 物語のiらんど

ハンドルネーム 赤い新月-

私は今、下半身だけ裸である。全裸になることは、彼が許さなかった。

彼は私に目隠しをした。そして猿轡を噛ませた。ゆっくりと彼は私の両手を紐で縛った。私の股間は既に濡れていて、いつでも彼のものを受け入れる準備はできていた。

両手の紐の食い込みが心地いい。彼は私の両手の紐をさらに縄で縛って

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ノベリスト 第8話

ノベリスト 第8話

第3章 赤い新月

その1

-携帯小説サイト 物語のiらんど

ハンドルネーム 赤い新月-

幼い頃から、縛られることに興味があった。

紐で自分の身体をぐるぐる巻きにしたり、陰部を紐で締め付けたり、そういうことを一人で親に隠れてこっそりやっていたりしていた。

小学五年生の時に、少しサディズムの傾向がある女友達に、手錠を掛けて縛ってもらったことがある。

あの時初めて、股間が

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ノベリスト 第7話

ノベリスト 第7話

第2章 澪 第一部

その4

一週間後、私は岸睦月との待ち合わせ場所である渋谷駅前のドトールへ向かった。

私は紺色のワンピースに白い靴下、黒のローファーだった。

午前十時の待ち合わせだったが、岸睦月は既に来ていてコーヒーを飲んでいた。

私は少し緊張しながら、彼と向かい合わせに座った。

「『呪縛と束縛』好きなんだって?」

彼がそう言ったので、私は、

「はい

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ノベリスト 第6話

ノベリスト 第6話

第2章 澪 第一部

その3

祝賀会では、サンドイッチやスナック菓子やイオンあたりで売ってそうな寿司やオードブルが並んだ。軽い立食パーティみたいな感じだった。

私がウーロン茶を飲みながらそれらの食べ物に手をつけていると、先程私に鋭い質問をした文芸ジャーナリストの赤池さんが笑顔で私の許へやってきた。

「先程はどうも失礼しました。なかなか骨のあるしっかりした作家さんだな...とは思い

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ノベリスト 第5話

ノベリスト 第5話

第2章 澪 第一部

その2

私の正面には十数人の新聞記者が並んでいる。こんなに一斉に自分に他人の注目が集まることは16年生きてきて初めてで、少し緊張してるのが本音だ。

私の左手にいる30代後半の女性がマイクを使って挨拶をする

「それでは、集談社主催、東都新聞・東都テレビジョン後援、産能産業協賛、第3回『ティーンのための文学賞』グランプリ授賞式と記者会見を執り行いたいと思います。司

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ノベリスト 第4話

ノベリスト 第4話

第2章 澪 第一部

その1

思春期とは危うい年代なのだろうか。そういうことを考えるといまいち寝付けない。

学校の同級生なんかも真面目な人と遊んでる人と遊び疲れてる人がいる。あと2年半で大学受験だし、6年半でほとんどの同級生が社会に出るから、学生時代というモラトリアムを何となく駅前のマクドナルドで駄べりながら費やしてるのが私たちの日常であろうか。

私の名前は池田澪と言う。東京・

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ノベリスト 第3話

ノベリスト 第3話

第1章 梨花

その3

骨董通りから脇に入り、岡本太郎記念館の裏手に彼の仕事場のワンルームマンションがあった。

建物自体はそれほど大きくもなく、古すぎずさりとて新築でもないが、品位があるビルで、一階には雑貨屋らしきテナントが入っていた。

彼の部屋はそのビルの三階の奥の通路の行き止まりの先にあった。

オートロックでもないし、玄関モニターらしきものもない。南青山という土地ではあ

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ノベリスト 第2話

ノベリスト 第2話

第1章 梨花

その2

南青山の11月の夕暮れは、私が心のうちに抱えている僅かな後ろめたさと、淡い期待に揺れる私の心のうちと似つかわしくないほど穏やかで暖かかった。表参道を歩く人たちの表情も、決して満たされてはいないものの、心なしか穏やかな感じをしていた。

ハロウィンの狂騒も消え、少しづつクリスマスへ向かうこの時期の南青山が私は好きだ。大学が南青山にあるということで、ほとんど庭みたいな

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ノベリスト 第1話

ノベリスト 第1話

第1章 梨花

その1

夢というものが現実になり日常になったとしても、生活そのものが変わるというものでもない。

しかし人は現実というものの切なさに耐えられないから、夢を見るのかもしれない。

島根の田舎の高校にいた頃の私の夢は芥川賞を取ってベストセラー作家になって印税生活をすることだった。

それを当時の同級生の彼氏に話したら、

「お前の言ってることは所詮夢物語なんだよ。俺

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