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魂の交感から鎮魂へ。幽玄なる世界へと誘われる。 小説「死者の書 身毒丸」★5

8世紀奈良、非業の死を遂げた滋賀津彦(大津皇子)の魂が目覚め、そして、藤原南家の郎女いらつめは、そこに尊いおもかげを見る。二人は交感し、郎女の純真な想いは滋賀津彦の魂を鎮めていく。幻想的小説。他2編。

1999年(文庫) 折口信夫

「死者の書」1939年
「山越しの阿弥陀像の画因」1944年
身毒丸しんとくまる」1917年
(解説 川村二郎)

なんかめっちゃハマったわー! 難解、というより読みにくい笑 なじみのない知らない言葉に、クセ読み仮名笑(昔の感じ?)、あと繰り返し表記?とか。そういう文章なもんで、非常に読みにくい。慣れてくるけど。

それに加え、話の時系列が分かりにくいのかもしれない。場面の変化にとまどったり。今、どうなってる?これ、誰だっけ?笑 と混乱迷走。(途中出てくる、いくつかの「山越しの阿弥陀像」様で冷静さを取り戻す笑)

それでも、ゆっくりじっくりコトコトと読んでたら、完璧には把握できないものの、大方の状況は理解できた。話自体はそう難しいものではないのかもしれない。そんなに長くもないので、slowlyでもじきに終わる。

重文 山越阿弥陀図屏風 鎌倉時代(13世紀)京都・金戒光明寺
国宝 山越阿弥陀図 鎌倉時代(13世紀)京都国立博物館
国宝 山越阿弥陀図 鎌倉時代(13世紀)京都・禅林寺

不思議なことに、読みにくい、分かりにくいと思いつつも、何だか妙な魅力を感じさせる。何なんだろーなーこの正体。何なのかハッキリしないが。文章力、表現力の巧みさによるもの、だけなんだろーか。

今までにない読書体験。最後に「白日夢」という言葉で締められるが、全体的にどこか朧げな感触が何とも言えず好き。また、死後の意識の目覚めとか(実際には分からないが)、何だか妙にリアルな感じに思えた。

それから、音の表現なんかも印象強い。「した した した」(水の滴る音)、「こう こう こう」(魂乞いの声)、「つた つた つた」(足音)など、独特の響きが沁みてくる。

ついでに、準備しておいた漫画版も読んだら、すごい理解に役立った。答え合わせしてる感じで、分からんとこも把握できた。なんとも郎女が可愛らしく感じる。どこか常人と異なり、純粋無垢で、尊い。

ついでに、川本喜八郎監督のアニメ(人形劇)のパンフをたまたま持ってたので目を通すと、思いのほか情報力が多く、分かりやすくまとまっていたので、これもまた良きだった。ラッキー。

これも観てみたいなー!

だいぶ気に入ってしまったので、もう一冊、岩波文庫の方も購入してしまった。(ちなみに角川ソフィア文庫もあるみたい…)やっぱ、それぞれに違いがあるみたいなので、出来れば比較してみよう。

まあとにかく、良かったなーとおいうことで、また読みたい! きっとこの物語には、折口信夫さんの類まれなる力に加え、超越的な御神仏パワーでも宿ってるんじゃなかろーか!?

あー、奈良に行きたいよー。二上山が西に見える辺りに泊って、歩いて當麻寺に向かおう。そして、曼荼羅を!あと、大津皇子のお墓も。やっぱ奈良は何かと惹かれるところがあるな。縁があるんかしらん。

當麻曼荼羅



「死者の書」

8世紀奈良、非業の死を遂げた滋賀津彦(大津皇子)の魂が目覚め、そして、藤原南家の郎女いらつめは、そこに尊いおもかげを見る。二人は交感し合い、郎女の純真な想いは滋賀津彦の魂を鎮めていく。

物語の元になってるのが、大津皇子の史実と當麻寺たいまでらに伝わる中将姫伝説。そこに、価値を失いつつある語部のおうなや、当時の文化人である大伴家持おおとものやかもち恵美押勝えみのおしかつなどが配せられる。

「山越しの阿弥陀像の画因」

日本人の考えた山越しの阿弥陀像の由来、「死者の書」執筆の動機。
「何とも名状の出来ぬ」夢を見たことがきっかけ、らしい。

身毒丸しんとくまる

よく分からなかったが、身毒丸という美少年?青年?の話。いなくなった父の記憶、長者の娘への恋心、それを許さぬ師匠の想い、弟子仲間の嫉妬、何か意味深な夢に出てきた顔(誰だろう?)、そんな感じ。

「高安長者伝説(俊徳丸伝説)から、宗教倫理の方便風な分子を取り去って、最原始的な物語にかへして書いたものなのです。」




「死者の書」文庫
中公文庫岩波文庫角川ソフィア文庫、があるのかな。

漫画版、人形アニメ版も!


★\(^^)/☆

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