記事一覧
2024年度1Qを振り返る
夙川も大阪城も、普段静かな吉野まで、人・人・人が薄桃色の隙間を埋めるようにして動いてゆく。そのどれもが各々に、語らい、眺め、見上げ、指をさし、食べ飲みしながら、薄桃色の景色に劣らずその頬を紅潮させ、静かな希望をその瞳にたたえている。
短くも厳しい冬を越え、泉のように、バネのように、人・動植物・花粉が動き出す4月、1年の始まりである。
さて、大きな職場の異動や立場の変更がなかったことから、M
虚構新聞展に行ってきた
労働と睡眠のほか、1日3局の三麻と週2のジム、週1の飲み会、少しの勉強しかしない私であるが、たまには社会や文化を涵養し、高潔な人格の形成に努めている。そのような趣旨から、先日4月3日の15時から16時、後ろ指をさされながら年度始早々に時間休暇を取得して大阪・中之島で開催されている「虚構新聞展」に行ってきた*ので、概要をまとめる。
*2024年3月27日から4月8日まで開催(4月2日を除く)。前売
バーにて(乱数編2)
<語群>
加速度 泥酔 お茶の子さいさい 陸軍
錦鯉 労働時間 狂犬 馬鹿力
弟 呪術師 葡萄パン 真空蒸着
私はそのバーの柔らかい照明に照らされて光る、金色のウイスキーに舌をつけた。ふわりとした蒸留の香りが広がった。敗因など一言で表せるものではなかろうと思った。
クリスマスの煌びやかなときめきから正月の暖かな家族団欒へと、世間の中心は踵を返す。平日と休日は、日没前のブルーモーメントの
乱数編1 虹について
※本件はアプリでランダムに表示された12の語群のうち8つを用いて、1,000~2,000字程度の文章を作る試みである。
<語群>
馬 倫理観 ゴムの木 不死鳥 青臭い 時系列 漫画
離職者 動画配信サービス 青虫 色彩 運動会
虹は何色だろうか。これは色彩に関する割と難しい問いではないかと考えている。
先日の旅で、私はコペンハーゲンの現代美術館に入ってみた。そこでは常設展のほか、ロマン派
合コンに参加した話(前編)
もう2か月ほど前のことになる。人生で初めての合コンというものに誘われた。
誘ってきたのは大学時代のサークルで一回り以上も遠い男性の「先輩」である。合コンを誘うくらいであるから、もちろんメロディーを担当するような楽器の人である。先輩は、一方で私が恋愛というものに諦念を抱き、その虚構性を暴こうと下らぬ腐心をしており、他方で私の友人である「田原君」が恋愛に果敢に挑みつつも、ベーリング海並みに浮沈の
ダミー
9ヶ月連続のためのダミー投稿。
人生の残り時間は体感でどれくらいか
生5,9,18,18,18,20,20,20,20,20,20,21,21,21,22,22,23,24,25,28,31,32,35,36,50,65死
今年の夏は特に厳しかったが、最近、すっかり朝晩は涼しくなり、秋めいてきた。職場の同僚と、秋は短いからねと話しながら、私は去年もその前の年も、毎年同じように秋の短さを嘆いてきたことを思い返す。私はきっと来年も、再来年も、秋の短さを嘆き、そして
修論を読み返してみた
前半は、修論を読み返すに至った経緯、読み返した感想を自分用にメモしたものです。後半は、修論を一部抜粋して掲載しています。どんな修論を書いたのかについて、人に説明するのが面倒なうえ、今の自分に聞かれても分からんという気持ちなので、尋ねられたときに答え(てドン引かれ)る用です。
先日、データの整理整頓をしていたら、捨ててしまったと思われた修士論文データが発掘された。私はデジタルデバイドであるから
最近のニュース記事について思うこと
0.はじめに
ニュースやメディアの劣化が叫ばれて長い期間が経過したように思う。新聞やテレビを筆頭として、かつてマス・メディア(大衆を介在するもの)と呼ばれた、まさに時代を形作るものとしての覇権は影を潜め、今や情報へのアクセス方法や媒体は多様化した。また、メディアによる不正確な情報の発信やフェイクニュースの存在が前面化し、さらに、誰もが発信者となることのできる現代にあって、受け手のメディアリテラ
芸術探訪――PRISM――
※以下は半年前の出来事につき書かれたものの冒頭部分を抜粋して掲載するものである。芸術について書くことの難しさに挑戦してみたかった。
私の青年時代は、言語で表現することと非言語で表現することを往還していたといえる。
若いころから、一方でスピーチや日誌、語学の習得を通して、自らの言語や論理を錬成し、他方で音楽や旅を通して、自らの情動や野心の源泉を模索した。
言語についていえば、中学のスピーチでは親
境港妖怪検定(初級)に合格した話
2022年、私は3年ぶりに実施された境港妖怪検定(初級)を受検し、見事合格した。一般的な資格であれば情報も多く出回っているのだが、この資格は初級の受検人数が昨年で231人※ということもあり、情報があまりに少なく、2023年に行われる第16回検定への参加に足踏みしている人も多いと思われる。検討の一助となれば幸いであると思い、ここに記録を残すこととする。
※境港妖怪検定の公式HP(以下、単にHPと記
Dさんとの出会い(第3話)
店を出て2人は辺りをぶらぶらと歩いた。初夏の日差し、河岸に向かって並ぶベンチ、咲きわたる花、磯の香り、遠くかすかに何かの試合の応援、2人だけの海辺、2人だけの世界。この情景ならきらめく水面の奥から良い感じの魚が顔をのぞかせているだろうと思い、Dさんと共に海をみた。そこには過日の雨で増水し、濁りきった水ばかりがあった。まあ登場人物が濁った人生とエノキダケであるから仕方あるまい。
駅へ向かう途中