ある意味贅沢な、メンタルヘルスの展示
先日、シンガポール国立大学保健機構(以下NUHS)ヨー・ブン・キム・マインドサイエンスセンター(National University Health System Yeo Boon Khim Mind Science Centre)が、マインドフルネスと自然に関する展示「Nature's Embrace: A Gift to the Mind」を行っていたので、足を運んでみた。
このセンター、何者?と思われた方は、まず過去の記事をご覧あれ。
※ トップ画像はヨー・ブン・キム・マインドサイエンスセンターのウェブサイトより拝借している。また、この記事を書くに当たって、NUS、NUHS、ヨー・ブン・キム・マインドサイエンスセンターのいずれからも報酬は得ていない。
「Nature's Embrace: A Gift to the Mind」の趣旨
この展示に興味を持った理由は以下。
シンガポールのメンタルヘルス事情について、更に知りたいという思いがある
NUSとヨー・ブン・キム・マインドサイエンスセンターが共同で運営する
「臨床メンタルヘルスおよび心理療法の修士課程」
(Master of Clinical Mental Health and Psychotherapy)に興味があるアレクサンドラ病院で開催されている(基本的に病院を見て回るのが好き)
展示テーマ自体には、実はあまり興味がなかったりする
繰り返しになるが、シンガポールでは、保健省傘下の医療施設持ち株会社(政府系企業)である「MOHホールディングス」の下で複数の公的ヘルスクラスターが運営されており、そのうちの1つがNUHS。NUHSには、「Centers of Excellence」として、6つの研究センターが設置されている。ヨー・ブン・キム・マインドサイエンスセンターはそのうちの1つなのだが、パンフレットにはシンガポール国立大学(NUS、National University of SIngapore)とNUHSが共同で運営しているような書きぶりで紹介されている。
アジアで初めての試みなのかは不明。
展示は予約制で、積極的なプロモーションも特に行っていない。正に「来たい人だけ来て」状態。
いざ、アレクサンドラ病院へ
そして、ある週末、土砂降りの雨の中アレクサンドラ病院へ繰り出した。
写真はアップロードしていないが、この病院は庭園が「売り」だ。
2005年7月、20ヘクタール(200,000平方メートル)の広大な庭園がオープン。500種を超える植物と、約100種の蝶が生息しているそう。2019年11月には、作業療法として園芸プログラムが開始されている。確かに、一目で「ここで精神科作業療法をやってそう…」と思えるような、豊かな勾配と自然だ。庭園には自由に入れるので、是非直接体験してほしい。
他にも、アレクサンドラ病院の公式サイトには
レオン・ヒン・セン(Leong Hin Seng)医師のチームが、1975年4月12日に東南アジアで初めて四肢再建術(limb reattachment surgery)を成功させた
1975年9月6日、ベンジャミン・シアーズ(Benjamin Sheares)大統領が、国立腎臓財団 (NKF、National Kidney Foundation) と提携し、シンガポール初の自立型透析センターを開設した
1978年10月のスパイロス号事故(Spyros disaster)で重度の火傷を負った患者 55 名を治療した(ギリシャのタンカー「スパイロス号」がジュロン造船所で爆発し、76人が死亡、69人が負傷した事故)
1994年、国内初の健康長寿センター(geriatric centre)が開設された
との情報あり。全てをファクトチェックしてはいないが、以下のリンクを参照されたい。
※こぼれ話…マリーナ地区のカラン湾とマリーナベイ(現在はマリーナ貯水池)をまたぐ橋は、ベンジャミン・シアーズ・ブリッジと呼ばれている。
いざ、館内へ
病院受付で会場の場所を聞き、食堂のある離れのような29号棟へと向かった。インターホンを押すと、研究員?のメンバー1人が出迎えてくれた。
アートプロジェクトではなく研究発表のスタイルということもあってか、館内には他に誰もおらず、貸切状態。森林浴や枯山水といった、日本でおなじみの展示もあった。
率直な感想
展示を見て最初に持った感想は、「これ、『メンタルヘルス普及啓発の推進』系の研究助成金が余ったから作ったのかな?」という、いやらしいもの。展示としての完成度は高いが、スペースの広さに対して展示物の数が少ないイメージ。また展示物がオーガニックなのに、照明が蛍光灯なので、全体的に無機質な雰囲気となっていた。
次いで、展示内容について。ワークショップに参加しない限り、参加者が体験することは、展示を見て動画を観るだけなので、「没入型体験」は、少し言い過ぎかと思われる。そして、随所に「森林浴、苔アート、テラリウム等に取り組むことでメンタルヘルスが改善した」と書かれていたが、改善したのは自然に触れたからなのか、元々「メンタルヘルスを改善したい」という動機で参加しているからなのか、そもそも興味がある活動内容だったからか、はたまた支持的な集団の中にいたからなのか、展示を見た限りではいまいち関連がはっきりしない。結論が少し飛躍的と感じた。極端な話、街中で爆音でパンクを聴くことで平穏が得られる人もいるだろうし。
スタッフに次の展示について聞いたところ、「AIとメンタルヘルス」とのことだった。今っぽいし、シンガポールらしい。「アートが科学と出会うと、驚くべきものが生まれます」というMAEラボが、対人支援×AIをどのようにプレゼンテーションするか、またレポートしたい。
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