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特別支援学級の教員が、子どもと初めて会う時に気をつけていること

新年度準備に向けて、ザワザワしてきたMr.チキンです。
それでも子どもたちは当たり前に登校してきます。
登校してくるからには、最高の一日にして帰したいものです。
さて、今日は特別支援学級の教員が、子どもと初めて会う時に気を付けていることをお伝えします。

お互いに緊張する

特別支援学級の教員をしていると、「転籍を考えている」という子どもと会うことが必ずあります。
通常学級でうまく適応することが難しかった子
学習についていくことが難しかった子
親がなんとなく気付いた子
教員から言われて来る子
いろいろな理由はあるかもしれません。
が、出会った瞬間から子どもは

この人はどういう人だろう。敵かな、味方かな。
(多分敵だろうな。)

と探ります。
これは子どもの本能的なものなのでしょう。
特に生活の中でつらい思いをして、傷ついた子どもほど、
よく見ていることが多いです。
そんな子の緊張を、小一時間で解かなくてはいけない。
つまり、子どもたちも緊張しているし、私もすごく緊張するのです。
だから、初めての出会いは、少し演出が必要です。

できれば初めては1対1で

空き教室があれば、人員体制が整うのであれば、
一番の理想は1対1で会いたいです。
いつもの教室で会うのも良いのですが、
お互いの観察に集中できる環境の方が良いかなと考えています。
ぜいたくですけどね。
集団に入るのはいつでもできる。
少しずつ、ゆっくり、お互いを知っていきたいなという気持ちを表したいものです。

事前に保護者から好きなものを聞く

「初めての子どもが来る」となったら、
タイミングを見て保護者に連絡をします。

どんなお子さんなのか教えていただきたくて

と話します。すると、保護者は「そそっかしくて。」とか「集中が続かないんですよね。」とか、少しネガティブな情報を伝えてくることが多いです。
日本人の気質なのか、それとも傷つかれてきたからなのか。
でも、それは大事な情報で、しっかりと受け止めます。
この保護者が、打ち解けてきたときに、子どもの良いところを笑って話せるようになればいいなと思いながら、

よろしければ、お子さんの好きなことや物を教えていただけると、すっごく助かるのですが

と切り出します。
保護者の方は「そういうことなら、おまかせ!」とばかり、たくさん教えてくれます。
好きなキャラクターが聞けたらしめたものです。
塗り絵を印刷しておきます。そして、机の中にしのばせておきます。

ポケットに鳥の巣を作る

私は比較的人と話すのが好きなタイプですが、
やっぱり冒頭でお伝えした通り、ドキドキはします。
なので、ポケットの中に準備をしておきます。
例えば…

こんなサイコロを入れておいたり

こんなクリップを入れておいたり

こんな感じのマグネットを忍ばせておきます。
これらをポケットに入れておくことを、私はひそかに

ポケットに鳥の巣をつくる

と呼んでいます。
カラスが巣に持っていきそうなものは、だいたい子どもが好きなのはなぜなのでしょうね。

机の上に仕掛けをしておく

子どもとはできるだけ座りながら話したいなと思っています。
座位でどれだけ長い時間過ごすことができるかもチェックしたいという思いもあります。
なので、自然に机に行くように仕掛けを作っておきます。
たとえば、以前やったことがあるのは、

机を三脚準備しておいて、真ん中の机にだけサイコロを置いておきます。
そして、

どれでも好きな机に座って良いよ。

と言います。すると、違いに気付いた子はサイコロのある机に自然と座ります。「え?これもらっていいの?」「それ先生のだから~!!」なんて会話をしながら自然と座ってくれました。大事なのは、

  • 自分で選んでも良いんだよ

  • 選びやすくしておいたよ

という姿勢です。これは、これから先の支援でも同じことが言えます。

心をノーガード状態にする

これが一番疲れるし、大事です。
できるだけ心をノーガード状態にします。
子どもが来る10分前に、トイレの個室にこもります。
そして、

注意はしない。受け止める。今日は出会うだけ。

というモードにチェンジします。
今日は出会うだけなんです。指導はしません。
椅子に座ったら褒め、立ち上がったら一緒に踊り、
声を出したらともに歌い、教室を飛び出したらついていく。
今日は何が起こるかわからないけれど、子どもに合わせて子どもを見る。
そんなモードに切り替えるのです。
すっごく疲れますが、こっちがノーガードだと、
子どもたちはそこまで無理をしてこなかったりもします。
不思議なものです。

こちらからは極力話しかけない

Mr.チキン先生、お子さんが来ましたよ。

ドアを開けて入ってきます。
たいていの場合は保護者と子どもで入ってきます。
緊張した表情です。
あいさつぐらいはしますが、極力最初は保護者と話すようにしています。
そして、少し経った頃に、ポケットに入れておいたキラキラサイコロを2~3個取り出して手の中で回します。
大体、子どもはその時点で気になり始めるのですが、もしもそれでも気付いてくれない場合は、落としてみたりします。

「え?このサイコロなに?初めて見たんだけど!」
「あ!このサイコロ、うちにも同じのある!」

できるだけ、子どもが第一声を出せるように促します。
第一声が出せない子でも、ピクリと体が動けばいいな。
その動きも、子どもからの大事な発信です。
子どもから出てきた反応に沿って出会いが始まるようにしています。

ハの字型に座る

面談と言うと、

机を向かい合わせて座るのをよく見かけます。
これでしゃべり始められる子もいるのですが、やっていくうちに、なかなか難しい子もいるのではないかと思い始めました。
そこで、机を

このように、ハの字にしてあげると、しゃべりやすいようです。
それか、

教師側の机を撤去して、こんな感じで傍に座ります。
目線は赤い矢印の先で合うくらいがちょうどよいことが多いです。
真正面から目線がぶつかると、お互いに照れてしまいますよね。

名前を覚えてもらう

ここまですると、大体子どもから

サイコロかして~!

などと話しかけてきます。
せっかく準備した鳥の巣のおもちゃ。タダでは渡せません。

「え~、だって、知らない人からモノもらっちゃダメなんだよ~」
「そしたらどうすればもらえるのさ!」
「名前を覚えたらかしてあげよう。」
「知らないし。」
「う~ん、本名のチキンって呼んでほしいけど・・・なんかみんなにはチキちゃんって呼ばれることがあってさぁ」(困り顔)
「うわ~!わかった!チキちゃんでしょ!変な名前~!チキチキってのも思いついちゃった!」

みたいな会話をして名前を覚えてもらいます。
できるだけ変なあだ名が良いですね。
本名とあだ名どっちにする?というと、子どもは喜んで変なあだ名をえらぶことが多いです。
でもね、子どもの脳みそは素敵で、しっかりと本名も覚えてくれています。
そして、慣れてきたある時、急に

チキン先生

って呼んでくれます。今はまだその日じゃないんだなと思いながら、
その日のために、種をまいています。

「次もまた会いたいな」 と言う

いっぱい話をしたら、子どもたちも疲れてきます。
できれば、短めの時間で予約してもらいます。
そして、「もうちょっと遊びたい、話したい」のあたりで時間切れにします。
「また会いたいな」という話をして、次回の約束をします。
「もっと遊びたい~!」と切り替えができない子には、タイムタイマーで終わりを示しながら、

大丈夫。先生は意地悪しないから。次も絶対に会えるからね。

と約束します。指切りげんまんっていうのはよくできたもので、
身体が触れ合うと、約束が強く感じられるようです。

まずは大人対子どもの関係をしっかり作ってあげたい

最初はこのようにかかわり始めます。
そして、教師対子どもの関係が出来上がったら、少しずつ集団に入れていきます。
以前、病弱特別支援学校にいた時、私の尊敬する先生が、集団形成の研究をしていました。
その中で子ども、とくに人間関係の形成やコミュニケーション面に課題のある子は、「子ども対子ども」の関係よりも「大人対子ども」の関係を先に構築するという結論を出していました。
まずは安心基地を学校の中に作る。その第一歩が、初めての出会いです。
ここから始まり、学級に入っていく流れを作るのです。

今回、言葉にしてみたワケ

最初のかかわり方について、大切にしていることを書きました。
これらは12年間かけて、Mr.チキンが失敗を繰り返しながら作ってきたものです。
打算的だと感じられる方もいるかもしれませんが、こういったことって職人技のようなものとして扱われやすく、

○○さんがいないとできないんだよな。

ということが多いです。
いわゆる属人化というものでしょうか。
でも、それって子どものためになるんだろうか。
できるだけ緊張しないで出会えるように、どこかで言葉にしておきたいなと思っていました。
もし、何か心に留まるものがあったら、うれしいです。
では、またね~!

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