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歴史に向き合わない日本政府―関東大震災時の朝鮮人虐殺

100年前、関東大震災が起こりました。
そのとき朝鮮人たちが「井戸に毒を入れた」「放火をした」「集まって暴動を起こそうとしている」などの流言、飛語が飛び交いました。

それを信じた一般市民や軍、警察によって多くの朝鮮半島出身者などが殺されました。
虐殺が起こったのです。
それは、歴史の教科書にも載っているし学校の授業などで聞いたことのある方も多いでしょう。


ところが、昨今の日本政府はこの事実を認めない発言を繰り返しています。
8月30日、松野博一官房長官は、記者から虐殺事件への見解を問われて、「事実関係を把握できる記録が、政府内に見当たらない」と答弁しました。
同じ答弁は5月の参院内閣委員会でも、当時の谷公一国家公安委員長らが繰り返しています。


しかし、公の記録は多数存在しています。

自警団を組み、殺害に関わった人たちの一部が罪に問われたので、当時の司法省の調査には、被告の氏名が殺人などの罪名とともに一覧表で残っており、国立国会図書館でも閲覧できます。
また、2009年に公表された内閣府中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(1923関東大震災報告書第二編)」によると、「殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かった」などと記されています。
軍の資料には、11件53人の朝鮮人を殺害したことが記録され、この資料には警察による殺害についても言及されています。
この会議の会長は首相であり「政府の見解ではない。」とは言えないでしょう。

9月4日には、新たに神奈川県で、当時の神奈川県知事が内務省警保局長にあてた報告書が見つかったことが明らかになりました。
県内で起きた朝鮮人への殺傷事件59件の概要のほか、殺害された計145人のうち14人の名前も記載されています。

公的な資料以外にもさまざまな団体が虐殺を目撃した人たちの証言集を公表しています。
たとえば、「風よ鳳仙花の歌をはこべ」(教育資料出版会 1992年)。
政府はこれらの記録や証言に背を向け続けています。

1923年12月15日、帝国議会において山本権兵衛首相は「政府は起こりました事柄について目下取り調べ進行中でございます。」と答えました。

しかし、それから100年経ちますが政府はまともな調査をしていないようです。


毎年9月1日に、墨田区の都立横網町公園で朝鮮人犠牲者追悼式典が行われています。
歴代の東京都知事は、あの石原慎太郎氏ですら追悼文を送付していました。

ところが現知事の小池百合子氏は2017年以降追悼文を送付していません。

しかもその同じ2017年から同じ公園内で、「朝鮮人虐殺などなかった、朝鮮人による放火が甚大な被害を呼んだ」と主張する団体が集会を開くようになりました。
この団体に対して都は公園使用の許可を出し続けています。

政治を担うトップが史実を認めるかどうかは社会のあり方に大きな影響をあたえます。
小池知事や政府の高官が虐殺を認めないことで、「虐殺などなかった。朝鮮人の暴動は事実だった」というような虚偽の発言がネット上にあふれています。

2021年には在日コリアンが多く住む京都府宇治市のウトロ地区が韓国、北朝鮮に反感、嫌悪の感情をもつ男性によって放火されました。

ネットにあふれるヘイトの書き込みや路上で行われるヘイトデモなど民族的憎悪を露わにするグループが存在します。

100年前の悪夢が再び繰り返されないという保証はありません。
だからこそ、国や自治体が積極的に過去の過ちを明らかにし、二度と同じ悲劇をおこさないよう決意を示すべきです。




参考文献
「ヘイトクライムとは何かー連鎖する民族差別犯罪」角川新書



執筆者、ゆこりん

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