マガジンのカバー画像

雑記

14
思いついたことをつらつらと。
運営しているクリエイター

#エッセイ

母の命日とそれに付随する日記のようなもの

母が亡くなって今日で丸9年になる。長らく介護を続けたせいもあり、終わったときには果てしない徒労感が鉛のようにずっしりと心にのしかかり、しばらく元の生活に戻れなかったのを思い出す。そして遅ればせながらやってきた一人暮らしと、ひらべったくどこまでも続いていく一人暮らしという白紙のような退屈さ。一人っ子なので孤独感には慣れっこであり、わりとのびのびと暮らしてはいるものの、一年に一度の命日となると、母と二

もっとみる
愚か者に幸あれ『イエスタデイをうたって』ネタバレありアニメ雑感

愚か者に幸あれ『イエスタデイをうたって』ネタバレありアニメ雑感

※ヘッダー画像は、TVアニメ『イエスタデイをうたって』公式サイトhttps://singyesterday.com/より引用しました。

それは酷く遠回りで、起こりうる事象は人によってはじれったく、あっさりしたものに映るかもしれない。しかし歩みの速度は人によって違うもので、変化もまた同じである。誰しもがすぐに足並みを揃えられるわけでもなく、また変化に対して要領良く対処できるわけでもない。それは時に

もっとみる
チャーハンよもやま話

チャーハンよもやま話

失敗しないチャーハン。それは全人類共通の悩みである。だがコツさえ掴めば、チャーハンはそう難しくない。ただ、美味しいチャーハンを作るためにはいくつかクリアしなければならない条件があり、それを省くと確実に失敗する。失敗点は様々だ。フライパンにこびりつく。ごはんがダマになる。全体的にベチャベチャする。妙にパサついているetcetc……。しかしその悩みも今日でおさらばだ。あくまで自己流だが、今回は美味しい

もっとみる
ステーキよもやま話

ステーキよもやま話

一番好きな料理は? と聞かれたらまず間違いなくステーキと答える。僕はステーキが好きだ。市民権や人気は焼肉やすき焼きのほうが上で、贅沢の代名詞にもなっている。焼肉やすき焼きはみんなで囲んで食べる楽しみがあるが、ステーキはそうではない。この「囲む」という行為の有無は意外に大きく、それがステーキが焼肉やすき焼きに一歩譲る部分だろう。ステーキを囲んでいたら、それはただの最後の晩餐である。贅沢感はまるでない

もっとみる
ホットケーキよもやま話

ホットケーキよもやま話

ホットケーキは、飽きる。

フカフカの生地を切り分け、生クリームをたっぷりとつけ、甘いシロップに浸しながら頬張ったその瞬間は確かに幸福なのだが、5分もしないうちに飽きる。積み重なったホットケーキの視覚的なインパクトは郷愁を呼び覚まし、絵本の世界に迷い込んだかのように人を一瞬でメルヘンな存在へと変えるが、それも一枚目を平らげるまでの話である。飽きずに食べられるのはどんなに頑張っても一枚目がせいぜいで

もっとみる
ファースト・コンタクト『万年筆編』

ファースト・コンタクト『万年筆編』

子供の頃の夢を大人になって叶えた人間は少ない。だがそれは理想となる自分や憧れの職業になれなかったというだけの話で、もっと小さな望みなら、叶えることのできた人間は多いのではなかろうか。

僕にとってのそれは万年筆であり、万年筆を自在に使いこなす人間になることが昔からの小さな夢の一つだった。実際に万年筆を4本所有している今の身からすれば、夢というほど大げさなものには思わないのだが、何も知らない当時

もっとみる
ドラクエ思い出話

ドラクエ思い出話

初めての冒険の書は、スーパーの特売チラシの裏に覚えたてのひらがなで書いたふっかつのじゅもんだった

ぼんやり光るブラウン管を食い入るように見つめながら、どれだけ目を皿のようにして書き写しても、必ずどこかを間違えていた。

「じゅもんが ちがいます」

このメッセージが表示されるたびに半泣きになったのは言うまでもない。三回ぐらいメモを取って予備を常に作っておくのが幼い僕が編み出した冒険のやり方だった

もっとみる