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森てく
2022年6月27日 01:04
朝、ベッドの中でメールを見ていると、崇の母から電話が来た。 今うちに向かっているらしい。というかもう着くのだそうだ。 いつでも来てくださいと言ったのは私だが、これは急というかもはや抜き打ちだ。 電話で義母は、たか子さん(私だ)の手料理をぜひとも食べてみたいと言った。 でも私は料理ができない。 したことがない。 高校まで、食べ物というのは手を叩くか、その辺の誰かに命じれば出て
2022年1月19日 23:59
訳の分からない行為でも、続けていれば仕事になる。 荒野も同じところを何度も何度も何度も歩いていれば道ができるのと同じだ。 大仏になろうと思ったのはそんな理由からだ。 私が座ったのは、イオンの近くにある田んぼだった。稲が青々と茂っている。でっかいタニシがいる。 お金も欲しかったので、昨日食べたサバの味噌煮の空き缶を脇に置いた。内側を擦るとまだ油っぽい。 裏道を使ってイオン・JR―私鉄へ
2022年1月9日 00:48
目覚めた瞬間から割れんばかりに頭が痛かった。どうしても仕事に行きたくなかった。だから仕事島に行くことにした。 電車と船を乗り継いで片道四時間弱。無理して働いた方がずっと早い。しかし職場で心配や迷惑をかける心苦しさに比べれば、この方がずっといい。 会社に一本電話を入れ、頭痛薬を飲んで家を出た。移動中はずっと寝ていた。 島は仕事をしていることになりたい人たちでいっぱいだった。 空が広い。
2021年12月13日 16:19
今年の一生懸命小説大賞にもたくさんの応募作が寄せられた。 ざっと五千作品以上あるという。学校の体育館半分くらいの量だ。「数だけならすごいことです」 と、担当の何人かが口々に言う。 確かにと、山と積まれた段ボールを前に、私もうなづく。 去年の大賞は、30年スーパーのパートで二人の子供を育て上げたシングルマザーの方だった。 作品はまあまあだったけど、その十倍の分量の、自分の子育て記
2021年11月21日 00:30
千年残る小説を世に出すという会社を挙げてのプロジェクトが始まった。 ドストエフスキーでいいじゃないかという声も上がったが、やはり日本語の作品がいいということだ。 だったら、漱石とか遠藤周作とか、色々いるだろうという話になったが、結局は自分たちの出版社でそういうことをしたくて、新作で作家に緊張感を持った大きな作品を書いてもらって、ずっと売りたいということが透けて見えてきた。 ということで、我