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イギリス文学

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ポスト印象派のゴッホとリアリズムのG・エリオットの「労働」について雑記|絵画と文学

ポスト印象派のゴッホとリアリズムのG・エリオットの「労働」について雑記|絵画と文学

多くの日本人が大好きな画家、ゴッホ。
と、イギリスの大作家、ジョージ・エリオット。一見全然関係なさそうだが、ゴッホは彼女の作品に感銘を受けたという。弟への手紙に記載があるようだ。

転居や転職(?)を繰り返したうえ生前は全く売れなかった画家と、生きている間に自身の不倫に対する批判も吹き飛ばすほどの名声を手に入れた女流作家。
ポスト印象派とリアリズム。

ゴッホが読んでいた、それはどの作品だろうか?

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揺らぎある鬱屈した世の中だから考えたい〜いまこそ、ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』〜

揺らぎある鬱屈した世の中だから考えたい〜いまこそ、ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』〜

年明けからヴァージニア・ウルフを読み漁っていて、『自分ひとりの部屋』から『三ギニー』へ移行した。

〈いかにして戦争を防ぐことができるか?〉という問いに対し、以下のような3つの非営利団体にそれぞれ1ギニーずつ寄付する、と回答する形式を取る。

①女子寮建て替え
②女性の就職支援
③「文化と知的自由を護る」協会

女子に与えられる教育機会と投資

ミドルクラスの家庭の子どもに目を向ける。
兄弟には2

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2022年に読んで「良かったな〜」ってしみじみ思った本3冊

2022年に読んで「良かったな〜」ってしみじみ思った本3冊

今年は今まで生きてきたなかで1番本を読んだ年だったかもしれない。
noteでいくつか紹介してきたけれど、まだ書けていなかった本のなかで「これは良かった!」ってものをいくつか残しておきたい。

『創造られたヒロイン、ナイチンゲールの虚像と実像』

女性の専門職、と考えた時思い浮かぶ仕事ってまだまだ固定されているかもしれない。
「看護師」という一職業を、成果が求められる「プロの仕事」にしたナイチンゲー

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『ダーバヴィル家のテス』の伝統と貨幣経済の狭間

『ダーバヴィル家のテス』の伝統と貨幣経済の狭間

批評について勉強しようと思って、放送大学の教材『文学批評への招待』を読んだ。
『ハムレット』についての記述もとても面白かったのだけど、

トマス・ハーディの、あのどこまでも救いのない小説『ダーバヴィル家のテス』についても記述があったので残しておきたい。

許容されるダブルスタンダード

テスの生まれ持った純粋な性質と美貌が災難を招くこの物語。

彼女の父親、貧農のジョン・ダービフィールドは自分が「

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なぜ学者ではなく聖母を選ぶ?〜『ロモラ』を読んで雑記〜

noteで何度も取り上げるほど、私はジョージ・エリオットが大好き。
今回はそんな彼女の唯一の歴史小説で、フィレンツェを舞台にした壮大な物語『ロモラ』の古本を取り寄せ。

「認められなかった女」が「聖母」となる

ロモラは豊かな教育を受けながらも、女であるという理由で、研究の継承者として父に認められない。
また、語り手に「父の世界しか知らない無知な娘である」と評される。

そして彼女は「カッサンドラ

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『ミドルマーチ』職業選択への誠意

『ミドルマーチ』職業選択への誠意

ジョージ・エリオットの長編『ミドルマーチ』。

主人公ドロシアとリドゲイトを中心に物語は進むが、
私が好きなのは土地差配人の娘メアリ・ガース(卒論もこれで書いた)。
そしてもう1人、メアリの結婚相手で喜劇的役回りのフレッド・ヴィンシー。

今回は、知人と仕事について話したことでフレッドのことを思い出したため、
忘れないうちに、フレッドの「仕事」についてアウトプットしておきたい。

『ミドルマーチ』

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『ジェーン・エア』ローウッドでの出会い

『ジェーン・エア』ローウッドでの出会い

大学の時に小説の内容はさらっていたので、映像版のジェーン・エアを初めて観た。

私が今回観たのは、BBCがドラマとして作成したものである。

第一話。
私が割と好きなローウッドでの時間。
辛い時間の中にも救いを見出せる、他者とやりとりの美しさがものをいうパートである。
そしてその主軸は、主人公ジェーンの初めての友人、ヘレン・バーンズと、教師ミス・テンプルとの時間である。

しかし、ドラマの中でのヘ

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女性によるイギリス小説の「愛すべき奥様」たち

女性によるイギリス小説の「愛すべき奥様」たち

女性作家が描く愛すべき奥様、もしくはオールド・ミスって案外多いのではないかと思う。
キーパーソンとなるそんな女性たちって、コミカルだったり、欠点があったり。でも、どこか憎めない。
イギリス小説に登場する奥様たちを、私の好みで紹介します。
(既婚女性を奥様、と呼ぶことについては異論は認めます)

孤独な主人公と打ち解ける奥様

ジョージ・エリオットの中期の作品である長編『サイラス・マーナー』。ドリー

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オースティンの痛烈な皮肉を楽しむ〜『自負と偏見のイギリス文化』より〜

オースティンの痛烈な皮肉を楽しむ〜『自負と偏見のイギリス文化』より〜

映画『アンナ・カレーニナ』でキーラ・ナイトレイの存在を知った。単純に華やかな顔立ちに目を引かれたのだ。
監督ジョー・ライトと彼女の共演作の多いこと!

その後他の作品も見てみると、個人的にはジェーン・オースティン『自負と偏見』のエリザベス役の方がはまっていると感じた。
最後にエリザベスの父親が愛娘の結婚を認めるシーンなど、こちらも泣いてしまった。

しかしこのお父さん。娘の結婚にはかなり無頓着。妻

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ヴィクトリア朝の小説の「魔性の女」

ヴィクトリア朝の小説の「魔性の女」

ヴィクトリア朝という、イギリス史の中でもかなり厳格な時代の小説を専攻していたのに、私はファム・ファタルが大好きである。ファム・ファタルとは、魔性の魅力をたたえていて最終的に男性を破滅に追い込む女性のこと。

ファム・ファタルたちはイギリスにも?

『椿姫』をオペラで知ったのち、原作であるデュマの小説を読んで、作中のファム・ファタルであるマルグリットにどハマりしてしまった。

その後も『マノン・レス

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