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在るまでの日々

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これまで書いた中で好きな文章、 かつ読んで欲しいものをまとめました。
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2020年6月の記事一覧

平凡の中で諦めが生じたとしても、私はもう少しだけ制服のまま躍り続ける。

血溜まりの影の傍で踊っている。
今日も至って平凡で、されど心象を切り取れるだけ切り取って深々と除き込んでみれば忽ち闇という闇が目の奥先まで忍び込んできそうな、なんとも己では形容できない心模様を浮かべて、しがない夜の前で屈辱の念を枕元に垂らしながら朝を待っている。三時間。私が床に伏せ、夜の闇よりも深いところで死にかけの蝉のようにジタバタトもがき、そしてどうにもできない不安の壁をよじ登ろうとした時間で

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草むらに野良猫。

草むらに野良猫。

死出の旅を虎視眈々と見定めている。
正直、阿保らしいと思っている。こんな私ならいらない、いらないから、せめてこの体だけは生かして別の用途に使用して欲しい、などと思うのも含めて阿保らしいと書き綴りながら今私の横を華奢で滑らかな体つきの野良猫に嗤われたことを起点として思う。

私はあまりにも私のことを書きすぎた。日が上れば私、日が沈み始めれば私、日を待つまで私、時間の隅から隅まで私を主軸に皆さんの十人

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家族写真の奥に過去を偲ぶ

家族写真の奥に過去を偲ぶ

玄関の一角に置かれた家族写真に写る僕が今の僕を見るとき、ひとしきり降り積もる過去で覆い被せた自分の本心を暴かれたような、そこから写真の中に写る僕を中心として左右に広がっていく淡い染みのようなものが母や父や妹まで行き届いた瞬間、目の前が私が思う以上の鈍重な苦しみとなって靴箱の横、あの頃とは全く似つかぬ表情でよれた制服の裾から縮れた糸を靡かせて鏡に写る自分を見た。私はまた、今日も一日が始まったのだと、

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