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すべてほんとう 『散り花』

生き様。
今では誰もが結構気軽に使うけどきっと意味としては重いであろうこの言葉を浸透させたのは(一説によると)プロレス中継の際の古舘伊知郎らしい。
と、聞いたか読んだかしたけれど、定かではない。
でももっともらしいな、と思ったりもする。
なんだかもうほんとに浸透しすぎている言葉じゃないですか。
わかるようでわからなく、わからないようでわかるような気がする言葉じゃないですか。
なんてことを思い出したのは、
プロレスを描いて(正確には闘魂三銃士(だけじゃないけど)を描いて)
第14回日経小説大賞を受賞した小説『散り花』を読んで数日経った、今日のこと。
 
プロレスの裏側を真実を描きながら、
若くはない、華もない、7年間死んでいるも同然で仕事をしてきたレスラーを主人公とした作品。
 
という言い方はしません。いや、したくありません、でしょうか。
 
裏側なんかないし。真実とかないし。
いや、この書き方もおかしいかもしれない。
裏とか表とかほんとうとか嘘とか虚構とかやらせとか八百長とかないし。
あるけどないし、ないけどあるし。いや、ないし。
え? ええ?!
うん、でももう一回言いたい。あるけどないし、ないけどあるし。いや、ないし。 と、わたしは思うねん。思っているねん。
 
さらに、〝それ〟は、プロレスだけじゃなくない? と投げかけたい。
 
プロレスとか舞台とか劇場とかだけじゃなく、
めちゃくちゃおおきな言い方を敢えてまたしてしまうけれども、
人生とか生きることとか人間とかが、もう、ほんとうに、そうじゃない?
って、さいきん改めて思うねんけど、どないでしょう?
 
って、何を言っているんだ。
「あいかわらずお前の文章は訳がわからん」とか思わせてしまっていたら、ほんとうにすみません。謝る。謝ったその上で。
 
八百長ってなに? 虚構ってなに? うそってなに? いい悪いの意味じゃなく。
 
〝この世界は虚構だった。台本があるからこそなせる虚構。
 その虚構のなかに夢があった。その夢が色褪せつつある。気に入らないなら毀せ〟
 
〝リングは舞台だった。四方を客席に囲まれた舞台。
 そのリング上において、レスラーは台詞ではなく肉体をもって表現する。
 しかし、リングを降りれば生身の人間だった。
 痛みも、流れる血も本物なのだ。そして感情というものがある。〟
 
〝痛みを客に伝える。それがプロレス〟
 
〝プロレスには最強という呪縛がある〟

ネタバレ嫌いなのに、ネタバレになりかけているかもしれません。
もしそうならすみません。ですが、これでもぎりぎり(の、つもり)です。
 
この世界、それはプロレス界という意味でもですが、
文字通り、この世界で、若くはない、華もない、
7年間死んでいるも同然で仕事をしてきた主人公が、なにかを決め、抗い、それこそ〝虚実皮膜の間〟を「生きる」話、と言うといいでしょうか。
これも、ちょっと、言葉が〝言えてへんのに言えたような、で、どや顔〟みたいで、どやろか? と思わないこともないのですけれども。
 
先日、ふと、なぜか頭に浮かんで、〝空気の衣〟という題でつぶやきました。
それは桜の時期にふと浮かんでつぶやいたつぶやきなのだけれども。
 
すべては「観客が居る」「観客にみせる、を、仕事とする」ということだから、だから、ほんととか嘘とか、嘘とかほんととかは、きっと、ない。
あるけどないし、ないけどある。
 
語弊を招きかねない言い方をしてしまえば、すべて、「ほんとう」。

この本を知ったのは、読書家で「プロレス者」である紳士、
私的に勝手に(あるつながりで)ソウルメイトとも思っている方が
書かれた感想を読み、興味を持ったから、というのがきっかけでした。
興行関係にたずさわる方です。
「プロレス者」、という言葉を使われている時点で「わぁ」「おぉ!」

そしてそのひとはハードボイルドを愛してやまない、憧れてやまない人でもある。
 
『散り花』

このタイトル。そして、文体も。
でもその文体が、わるくない、というか、わ、いいな、おもしろいな、とも思ったりした。
プロレスとハードボイルドは似合う。
正確にはプロレスを書くのにハードボイルド調はひとつの方法としてめっちゃ合うように思う。
とは、どこかずっと思ってきたことなのですが、
そのことを、ある意味とても納得させられる文体であり、切り口であり、
流れるようにすっと読めました。まるで、いい試合運びのように。
 
そして、「終わらない」。
 
本作はこれで終わった。
けれど、登場したレスラーたちに終わりはなくて、続いていて、つまりそれは人生で。
 
わたしがプロレスを仕事絡みで観始めた際、
プロレス観戦の師匠である記者(の、ひとり)、
このひとは(以前にも書いたが)「大衆演劇が好きならプロレスも好きですよ」という名言なのか迷言なのかわからないことを言って下さった方なのですが、もうひとつ、迷言をおっしゃった。
 
「(プロレスは)少年漫画なんですよね。ジャンプとか。次号に「続」みたいな」
 
「え、何それ、(むかしの)講談とかの「ここからがますます面白くなるところですがちょうど時間となりました。この続きはまた次回」ってやつですか? 」と言うと、「そんな感じ(笑)」って。(※極論)

そう、続くんだ、人生は、生きることは。生きることそのものそのことは。日々は。

話題のネットフリックスドラマ『サンクチュアリ -聖域-』をアツく観て、
ちょっとしてから読んだことも、なにかの縁かもしれません。
(サンクチュアリ、というとどうしても頭に浮かぶのは池上遼一のアレ。とは関係ないけどドラマ、どことなくビッグコミック感があった笑)
 
帯に引用されているフレーズも、読み終わってから再度眺めると、いいな、アツいな、でした。
 
〝おまえの目指すプロレスとは。〟 

〝決まってるだろう、「最強」だ!〟

もっと語りたいけれど、ここで止めたい、止めましょう。


わたしがプロレスを観始めた際に最初に勉強したのは、
プロレス観戦の師匠にまるごと貸された
梶原一騎の『プロレススーパースター列伝』。
次に貸されたのは小林まことの『1・2の三四郎』。
そんなことを話題にしていたら大学時代に属していた頃の劇団の先輩が「お前これを読めっ」と言いつけてきたのが『太陽のドロップキックと月のスープレックス』でした。
何を貸すねんこのひとたちは。


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以下は、すこしだけ自己紹介 。
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、各種文章やキャッチコピーなども、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

演劇鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)などの鑑賞と、学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)経験などを経て、
某劇団の音楽監督、亡き関西の喜劇作家、大阪を愛するエッセイストなどに師事したり。
からの大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

舞台と本と、やはり劇場と人間と、あ、酒も愛し、人間をひたすら書いてきて、書いています。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。

その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
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あ、5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。

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関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様では2種類の連載中。

酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在17話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)

旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
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