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短編小説 まとめ

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短編小説のまとめです。
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#高校野球

気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

気になる口癖 2371文字#青ブラ文学部

「心配いらない。投げられてるんだから大丈夫さ!」

「……………」

俺の同級生であり、野球部のマネージャーをしている雨粒 光留(あまつぶ みつる)彼の口ぐせは『投げられるんだから大丈夫』だ。

何かにつけその言葉を言う。

一投げられるんだから大丈夫一

俺を含めた部員の殆どは、何故、光留がそんな風に言うのか知らなかったが、それが光留流の励ましであると自然と認識し、それ以上誰も踏み込もうとしなか

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腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

腐れ縁だから 1923文字#青ブラ文学部

「まさ〜、今、達樹(たつき)の機嫌っていい方?悪い方?」

まただ。

「あっ?………………良いんじゃね?」

「そっか!ありがと!」

「〜〜〜っ!!!俺を介して達樹の事を聞くなーーーー!!」

何でこうなんだ。

「まあまあ、そんな怒らないで。
これでいちいち目くじら立ててたら疲れるよ?」

「疲れたとしてもっ、俺には死活問題なんだよっ!何で皆して達樹の事を俺に聞いてくんだよ!?!本人に聞けば

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1滴、貰います 995文字#新色できました

1滴、貰います 995文字#新色できました

僕がしている仕事は、少し…嫌、だいぶ変わっている。一年中割と忙しい仕事ではあるが、1番忙しくなるのが夏だ。

毎年夏になると、社員は皆大きい鞄を持参し、鞄いっぱいに試験管と危険ではない特殊な液体を詰める。

そしてパソコンやスマホを取り出し、各々が担当する事になっている会場へと出発していく。

今回の僕の担当は、野球場。

甲子園をかけた戦いが行われている場所だ。

「毎年のことながら、何だか複雑

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可か不可かでもない、ただの言葉(祈りの雨)#青ブラ文学部

可か不可かでもない、ただの言葉(祈りの雨)#青ブラ文学部

今から大雨が降ってくれないだろうか。

今から大雨が降れば、試合は一旦中止か、中止になって、やり直しになる。

やり直しになるって言っても、試合は継続されているから、スコアは今日の今のままのスコアで、試合が再開される訳だけれど……。

それでも、雨を願わずにはいられなかった。

………けれど結局、祈りの雨は届かなくて、空はピーカン…。

ピンチだ。

非常にピンチだ。

ノーアウト、ランナー1、3

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引き寄せろ、流れ!742文字 #シロクマ文芸部

引き寄せろ、流れ!742文字 #シロクマ文芸部

変わる時は、一瞬だ。

今までこちらに吹いていた向かい風が、ある一つのプレーによって追い風に変わったり、今まで吹いていた追い風が、相手の好プレーで一気に向かい風に変わったり…。

流れ、という目に見えないものでありながら、確かに存在し、その後の勝敗を左右する…。

俺達は、そんな流れを掴もうともがき、
流れを流さないように抗う。

肌で感じる流れだから、囚われ、従順になる。

⚾⚾⚾
「流れ変わっ

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始まりの言葉1370文字#シロクマ文芸部

始まりの言葉1370文字#シロクマ文芸部

始まりは、君だった。

⚾⚾⚾
「灰崎(はいざき)〜!ランニング終わったか〜?」

野球部キャプテンの大貴(だいき)が尋ねる。

「うん。終わった〜」

「俺、監督に呼ばれてるからさ、先に少し休憩して、その後バッティング練習に混ぜてもらってて〜!!」

「わかった」

俺は灰崎拓海(はいざき たくみ)
この高校の野球部で、投手をしている。
元々は野球部がなかったからこの高校を選んだものの、入学した

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あの日、触れた手のひら(手のひらの恋)#青ブラ文学部

あの日、触れた手のひら(手のひらの恋)#青ブラ文学部

『手のひらの恋』というほど大袈裟なものではないけれど、俺はバッテリーを組んでいる灰崎(はいざき)の手に始めて触れた時の事を、今でもたまに思い出す。

◈◈◈
「大ー!灰崎がマウンドで待ってんぞー!」

「はーいっ!すぐ行く!」

俺は大崎大貴(おおさき だいき)高校の部活では、野球部に所属している。
ここの野球部は俺達の代から復部された野球で今は2年目。
ポジションはキャッチャーで一年生の頃から主

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