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短編小説 まとめ

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短編小説のまとめです。
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#恋愛小説

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

ただ、扉が開くのを待っている(小さなオルゴール)1185文字#青ブラ文学部

僕は、いつも待っている。
静かに……
そっと……
ずっと………。

◈◈◈
彼女の邪魔にはなりたくない。

それに、彼女の事を一人で思う時間も嫌いではない自分が居る。
けれど、いつも待ってばかり居る僕の姿は、友人である政時(まさとき)の目に少し余るようだ。

「いつまでこんな半端な関係でいるつもりだ?」

「中途半端って?……彼女との関係の事?」

「他に何があるってんだよ!」

「…………ないね

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手放した恋心(セピア色の桜) 1307文字#青ブラ文学部

手放した恋心(セピア色の桜) 1307文字#青ブラ文学部

桜を撮った写真を現像して、何年も部屋に飾っておいていた。

そしたら太陽の光で写真は日焼けをし、綺麗で鮮やかなピンク色をしていた桜の写真は、『セピア色の桜』になった。

私は、その写真を飾ってあった写真立てを手に取り、スーッと表面を撫でる。

「………もう、そんなに経ったの……」

私が手に持っている写真立ての中のセピア色の桜には、ある人が写っている。

私の初恋で、初めての失恋した人。

この写

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記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

誰も知らない。
暗々裏に、今も昔も出来ている。

最後はきっと呆気なくて、破滅が待っている事はわかっているけれど、やめられないし別れられない。

不倫している訳じゃない。
だけど、両想いでもない。

私はただ、彼の好きな人が彼に振り向いてくれるまでの繋(つなぎ)で、私と彼の間に恋愛関係なんてない。

『好き』っていう感情は、彼には全くない。…………私には、あるけれど………。

私と彼は、高校の同級

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我が儘わたし。395文字

我が儘わたし。395文字

脳裏に焼き付いて離れないから

私にはきっと貴方は大切でかけがえのない人だったんだと思う。

でも、そんな私が別れを切り出したんだから、その時の私は、貴方は私にとって必要ない人と認識したんだと思う。

だから、貴方と別れた。

❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧❧

彼は可愛い人だったと思う。どう可愛かったの?って聞かれると困ってしまうけれど、私にはとても可愛い人だった。

けれど、そんな彼

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片思いの上司 (恋愛短編)

片思いの上司 (恋愛短編)

胸の鼓動を感じる。トキメいている。
……こんな風に男が思うのは可笑しい事なのだろうか?
でも、俺はトキメいている。

会社の上司でもある女性に。

「榊原ー、会議で使う資料出来た?」

「は、はいっ!出来ました!」

「それじゃあ、会議室行くよっ」

俺の名前は榊原 充(さかきばら みつる)上司の名前は田中 美麗(たなか みれい)さん。
俺は、美麗さんに恋をしている。

__________✤✤✤

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さよなら、最低。(短編小説)520文字

さよなら、最低。(短編小説)520文字

子供のように泣けたら、私はきっと狡い女になるような気がする。
そんな女に、私はまだなりたくない。
なりたくないから、私は本音を押し殺し、彼に別れを告げたのだ。

彼に別れを告げ私は、抜け殻になったように帰宅した。部屋着になることなく私はソファに座り、横になる。

「はーあ、辛い日だなー今日………」

テレビもつけず静寂が響く部屋の中で、私の声だけが響いている。私の別れを告げた彼氏は、私には勿体無い

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想いと恋心(短編小説)

想いと恋心(短編小説)

大事にしたい。
彼の心も体も。この2つがとても大切なものだから。

「神山選手。そろそろです」

私のいつものルーティン。私の仕事はレースクイーン。私はだいぶ特殊なレースクイーンで、レース直前になると、ドライバーを呼びに行くことを任されている。
私が任されている人は、レース前、とてもナイーブになる人だ。けれど、一度走り出せば有り余る才能を爆発させる。………そんな人。

「………神山選手?」
あら?

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