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記憶に残るは香りだけ(暗々裏)#青ブラ文学部

誰も知らない。
暗々裏に、今も昔も出来ている。

最後はきっと呆気なくて、破滅が待っている事はわかっているけれど、やめられないし別れられない。

不倫している訳じゃない。
だけど、両想いでもない。

私はただ、彼の好きな人が彼に振り向いてくれるまでの繋(つなぎ)で、私と彼の間に恋愛関係なんてない。

『好き』っていう感情は、彼には全くない。…………私には、あるけれど………。

私と彼は、高校の同級生で、バスケ部の部員とマネージャーだった。そこから何となく大学生になってもたまに会うようになって…………
そして……

そして、彼には好きな人が居ることを知った。

そのことを知った私は、頭に雷が落ちたかの様に衝撃を受け、ショックを受けた事を今でも鮮明に憶えている。

高校生の頃からの片想いを、大学生になっても拗らせていたから。

ある時、そんな彼から、アピールをしても中々好きな人が振り向いてくれない。
諦めたほうが良いのかもしれないと相談を受けてしまった私。

『諦めなよ、諦めて、私にしなよ』

そんなお決まりの台詞を言えなかった私は、落ち込んでいる彼にキスをしてしまった。

そこからだ。

キスをして、沢山して、そして体の関係になってズルズルと体の関係だけの男女に落ちていった。

そして、そんな私達の関係は周りには絶対に秘密だし、バレてもいない。
暗々裏に進んで、泳いでいる。

これでいい。
これでいい。って思いながら……。


だけど、やっぱりたまに辛くなって、恋愛の指南本を読んだりするけれど、どんな言葉も、今の私には響かない。

◈◈◈ 
彼が帰った後、私は自宅のベッドの上で彼と抱き合っていた時の事を反芻する。

どんなに彼と抱き合っても、いつも残っているのは、快楽でも彼の体の温もりや重さでもなく、彼がいつもつけている香水の香りだけ。

それが、今の私と彼の関係だと突きつけられているみたいだ。

でも、香りは印象や感情に結びついて固結びになる。

そしてその香りは、私を今より深く潜らせて絡ませる。


正しい事はわかってる。
終わりが来ることもわかってる。

でも…でも今の私は、それを自分から終わらせる事がまだ出来ない。


……彼のことが、好きだから……。


こちらの企画に参加させて頂きました。


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