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工藤吉生(くどうよしお)の短歌・3ヶ月ごとのまとめ

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌。制作期間3ヶ月ごとのまとめ。投げ銭方式ですので、無料ですべて読めます。
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2015年12月の記事一覧

工藤吉生の短歌【17】2015年7-9月〈20首〉

工藤吉生の短歌【17】2015年7-9月〈20首〉

【第十七期】2015年7-9月。71首を発表。
「うたの日」に一時参加。
河北歌壇で一席を二度いただく〈1-2〉。
昨年につづいて「東北歌会」に参加。

〈1〉
携帯をカパリと閉じる音さえもすでに懐かしみを帯びながら

〈2〉
薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島

〈3〉
遠くには青みがかった街があり青みがかっているオレかなあ

〈4〉
散会の後にプラカードは下がる 危機は今から立ち上

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工藤吉生の短歌【16】2015年4-6月〈20首〉

工藤吉生の短歌【16】2015年4-6月〈20首〉

第十六期。2015年4-6月。
「みずつき4」参加〈9-14〉
読売新聞のなかの「よみうり文芸」宮城県版へ一時投稿。
「歌壇」誌に初掲載。


〈1〉
夕闇に吊り包帯の三角の腕の白さが近づいてくる

〈2〉
空(くう)の空、すべては空と考えるような体調だった半日

〈3〉
よそ見して顔にぶつけた電柱のいやに確かで五十嵐内科

〈4〉
行きつけのつぶれた後にできた店 オレはあくまで認めぬ構え

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工藤吉生の短歌【15】2015年1-3月〈20首〉

工藤吉生の短歌【15】2015年1-3月〈20首〉

【第十五期】2015年1-3月。57首発表。
32ページからなる「工藤吉生短歌集」を作成、印刷する。
歌集の批評会に初めて参加した。

〈1〉
遠足の途中でオレの家が見えそのまま帰っちゃダメなんですか

〈2〉
まっさらな心に石を投げ入れた波紋のひとつ、(ひとつ)、((ひとつ))

〈3〉
宝くじ買いたくないが当たりたいオレの気持ちを知ってる手口

〈4〉
スーパーのBGMの中で聴く叱責、どこをと

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工藤吉生の短歌【14】2014年10-12月〈20首〉

工藤吉生の短歌【14】2014年10-12月〈20首〉

【第十四期】2014年10-12月。77首発表。
短歌研究の特集「新進気鋭の歌人たち」に参加〈14-20〉。
ネットプリントの企画に連作で参加。
地元の大学短歌会の歌会にお邪魔した。

〈1〉
のたれ死にしたことがある気がしてる照らされてオレンジの歩道橋

〈2〉
幸せなあちらのオレが今ここのこのオレを思いぞっとする夜

〈3〉
ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ

〈4〉

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工藤吉生の短歌【13】2014年7-9月〈20首〉

工藤吉生の短歌【13】2014年7-9月〈20首〉

【第十三期】2014年7-9月。61首発表。
河野裕子短歌賞「愛の歌・恋の歌」部門で入選〈11〉。
現代歌人協会主催・全国短歌大賞で佳作第一席(田村元選)。
短歌研究新人賞で候補作に選ばれた〈13-20〉。

〈1〉
ズダラニズダラズラブニフ袋から取り出すダラズラブニフ愚か

〈2〉
ばらばらのブラスバンドの練習のそのばらばらに聞き入って春

〈3〉
これほどの歯痛に耐えているオレに世界はいやらし

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工藤吉生の短歌【12】2014月4-6月〈20首〉

工藤吉生の短歌【12】2014月4-6月〈20首〉

【第十二期】2014年4-6月。63首発表。
「みずつき3」参加。
与謝野晶子短歌文学賞入選〈15〉。
NHK短歌に入選し、テレビで歌が紹介される。
毎日歌壇特選〈1〉、日経歌壇入選
地元の文学館のイベントで穂村弘など有名歌人を見て刺激を受ける。

〈1〉
Aだねと言われてBへ歩み出すオレの進路は危ういだろう

〈2〉
コーヒーの中にミルクはたちこめて落としどころをうかがっている

〈3〉
ほのめ

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工藤吉生の短歌【11】2014年1-3月〈20首〉

工藤吉生の短歌【11】2014年1-3月〈20首〉

【第十一期】2014年1-3月。69首発表。
所属結社である「塔」の歌会に初参加。新聞歌壇への投稿を開始。

〈1〉
歌壇賞ぽとりと落ちてかからない箸と棒とで持ち上げろ寿司

〈2〉
泡ぶくがはじけるように鳥が鳴く 十段階の一のかなしみ

〈3〉
得をしたような音させバーコード読み取り機器がオレをあやつる

〈4〉
笑ってるような顔した自動車にいきなりビシャッとされたビシャッと

〈5〉
4番のカ

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工藤吉生の短歌【10】2013年10-12月〈20首〉

工藤吉生の短歌【10】2013年10-12月〈20首〉

【第十期】2013年10-12月。64首発表。
結社「塔」で最初の一年を終えて二年目になり、「若葉集」から「作品2」欄へ移る。

〈1〉
長身の黒人ひとり異次元に通じる穴のようにたたずむ

〈2〉
触れたものが黄金になる王様を時おり思いあわれに思う

〈3〉
地下鉄で男のカバンが二度三度オレのケツに触れ憎しみを抱く

〈4〉
菓子パンがパンを失いビニールがベッドの上につくる陰影

〈5〉
店長と喧

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工藤吉生の短歌【9】2013年7-9月〈20首〉

工藤吉生の短歌【9】2013年7-9月〈20首〉

【第九期】2013年7-9月。65首発表。
年に一回の歌会「東北歌会」参加。
「ハッピーマウンテン6号」に連作などで参加〈14~20〉。
散歩しながら作歌するようになる。

〈1〉
マニュアルに沿って洗った手ばかりが十本揃い朝礼となる

〈2〉
連絡です工藤吉生さん明日までに必ず検便出して下さい

〈3〉
礼をする角度ビシッと決まってる上司にビシッとした礼くらう

〈4〉
こっそりと駄洒落を落とす

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【8】2013年4-6月〈20首〉

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【8】2013年4-6月〈20首〉

【第八期】2013年4-6月。42首を発表。
「NHK短歌」へ投稿を開始。山形での歌会に参加。
結社から歌集評の執筆依頼を受けた。これが初めての原稿依頼。

〈1〉
とりあえずビール運ばれとりあえず生きてるオレはカルピスを飲む

〈2〉
エアリプのつもりだろうか相手する気にもならんと入力し消す

〈3〉
道場で揃って受け身をとっている透明選手の透明投げに

〈4〉
四種類小袋つけば面倒なカップ麺だ

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【7】2013年1-3月〈20首〉

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【7】2013年1-3月〈20首〉

【第七期】2013年1-3月。65首発表。
「角川全国短歌大賞」秀逸で、初めて短歌で賞状をもらう〈13〉。
自作のツイッターbot「工藤吉生の短歌bot」@mk7911_bot を作成。

〈1〉
歴史上すべてが大事教科書をキラキラさせる君のイエロー

〈2〉
シューティングゲームのうまいやつが来て雨粒全てよけて帰った

〈3〉
剃ってない顎に剃るべきヒゲはあり撫でても撫でてもまだヒゲはあり

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【6】2012年10-12月〈20首〉

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【6】2012年10-12月〈20首〉

【第六期】2012年10-12月。140首発表。
「角川短歌ライブラリ刊行記念 わたしの一首コンテスト」で大賞を受賞〈11〉。
「短歌研究」誌の「短歌研究詠草」準特選〈3〉-〈7〉。
Ustream番組「歌会たかまがはら」へ投稿を開始。連作「ドラゴンクエスト3」制作。

〈1〉
小悪魔のごときフォークに削られてケーキがついに身を横たえる

〈2〉
地下鉄の全てのドアに貼ってあるシールの子供の挟ま

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【5】2012年7-9月〈15首〉

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【5】2012年7-9月〈15首〉

【第五期】2012年7-9月。110首発表。
大阪へ行き、初めて歌会に参加。結社・塔短歌会に入会。それと同時に、それまで「くどうよしお」だった名前を「工藤吉生」とした。

〈1〉
玉将の駒に手足の生えし人まへに歩めり東京マラソン

〈2〉
口に出すことのできないあだ名など彫られた机で花は傾く

〈3〉
ママとしか言えない子供の泣く声と音の出る靴遠ざかってく

〈4〉
ブロッコリー並べるオレに歯の抜

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工藤吉生(くどうよしお)の短歌【4】2012年4-6月〈15首〉

工藤吉生(くどうよしお)の短歌【4】2012年4-6月〈15首〉

【第四期】2012年4-6月。82首発表。
「短歌研究」に加え、「ダ・ヴィンチ」、角川「短歌」に投稿を始める。新人賞への応募を開始。zine「うたつかい」に出詠を開始。ネット上の歌会に参加。
一方でツイッターへの発表が減少した。

〈1〉
「反対の署名用紙に全員が名前を書いて出して下さい」

〈2〉
紫の神社に立てば「くどうよしお首折って死ね」の絵馬でびっしり

〈3〉
ワ.タ.ク.シ.ハ.ア.ナ

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