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②100周年に巡るライト建築・世界遺産候補「ヨドコウ迎賓館」/使って保存「自由学園明日館」

関東大震災から100年経ちました。
1923年(大正12年)、大地震の日にオープンしたのが帝国ホテル、2代目本館、通称「ライト館」。

世界で最も有名な建築家の一人、フランク・ロイド・ライトの設計です。

先週は、国策によって建造された帝国ホテルの話や、愛知県の明治村に移築・保存されている帝国ホテル「ライト館」を訪れた話などを書きました。

国内にはあと2つ、見学可能なライト建築があり、見学に行って来ました!

日本国内のライト建築
▪️帝国ホテル東京「ライト館」(明治村)
▪️ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸、芦屋)
▪️自由学園明日館(池袋)


⭐世界遺産を目指せ!「ヨドコウ迎賓館」


現在、世界のライト建築のうち、8つが世界遺産に登録されています。

そして日本にもユネスコ世界遺産を目指すライト建築が!

兵庫県芦屋市にある重要文化財「ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)」です。
ヨドコウとは、株式会社淀川製鋼所のこと。

昔、戸建てに住んでた時には、ヨドコウの物置き、使ってた~。

実は、「世界ふしぎ発見」でライトの世界の特集をやっているのを見て、こんな近くにライト建築があったのか!と、2021年10月、見学会に行きました。

”櫻正宗”の銘柄で知られる灘の酒造家、八代目、山邑(やまむら)太左衛門の別邸として、1924年(大正13年)に建てられました。

高級住宅街、芦屋の小高い丘の上にそびえ立っています。

神戸新聞NEXTから引用

尾根の斜面に沿って建てられているため、館内は階段と部屋が入り組んだような造りになっています。

まずは2階の応接室。
天井に近いところには、それぞれに小さなドアがついた小窓が沢山あり、光りが差し込み、まるで天井にも模様があるみたい。

写真左のテーブルと椅子はライトのオリジナルではなく、ライトのデザインを模してヨドコウ迎賓館が制作したものだそう。
写真右は、ライトデザインの「タリアセン」という照明。

外装や暖炉に使われいるのが大谷石(おおやいし)。
軽くて柔らかくて加工しやすいそうです。

ヨドコウ迎賓館では、窓やガラス、鴨居の上の欄間などにはめ込まれた銅板の飾りが特に美しかった!

3階の長い廊下では、自然光を取り込む窓の造作がキレイ!

植物の葉がモチーフとした銅板。
酸化して緑になっているな、と思ったら、自然のグリーンに近づけるために、わざわざ銅に緑青(ろくしょう)と呼ばれるサビを発生させているそう!

個人の別邸だったので、和室もあります。
元々ライトの設計には和室はなかったのを、施主の、たっての願いで実現したそう。

階段を右に3段上がったかと思うと、また左に4段など、山の尾根に沿って建てられているのが中からも実感出来ます。
家具の材料はマホガニー。
こちらにもライト設計の照明、黒枠の「タリアセン」。

4階には、温かみのある美しい食堂。

暖炉を中心に左右対称。
天井は中央部が最も高い四角錘のような形で、木枠の幾何学模様がステキ!

三角形の小窓が換気も兼ねて光を取り込むアクセント。
ここにも照明、小さ目の「タリアセン」。
写真には残してなかったですが、キッチンは、とても近代的な感じになってました。

屋上バルコニーは絶景スポット!

ここでも間近に大谷石の装飾を見ることが出来ます。

2階、3階の屋上共にバルコニー。
っていうか、「誰がこんなところまで見る?」という場所にも細かい装飾。

見学は、入場してしまえば自由に回れるので、じっくり見ることが出来ました。
世界遺産登録を目指している、ということですが、日本が世界に誇れる世界遺産が増えるのはいいことですね!

と同時に、フランク・ロイド・ライト建築のファンはアメリカを始め、世界中に沢山いるので、もし世界遺産登録ともなれば、静かな芦屋の住宅街に人が集まってすごいことになっちゃいそうで、それも心配で複雑。

入館料:大人 ¥500円
開館日:水・土・日曜日と祝日

⭐使って保存「自由学園明日館」

ライトが帝国ホテルの設計、建設を行っていたのと同時期に建設したのが、「自由学園明日館(みょうにちかん)」。

自由学園明日館は、大正10年「婦人之友社」の創立者が、来日していたライトに設計を依頼して作った元女学校で、重要文化財。

関東大震災や第二次世界大戦の空襲からも免れた建物です。

出版社「婦人之友社」を経営していた羽仁ご夫妻。
奥さんの羽仁もと子さんは、報知新聞に入社して日本初の女性新聞記者となった方で、1904年、日本で初めて家計簿を創刊して大ヒット。
その利益を世に還元しようと、この学校を作ったんだとか。

こちらの見学は予約不要。
ただし、講堂は、現在もコンサートで貸し出されたりしているので、見れない時間帯はあるそうです。

お庭から見ると、ホールを中心に、やはり左右対称。
この日も何か撮影をやっているようで、レフ版持った方と、礼服?を着たモデルさんがおられました。

🔶自由学園明日館の顔「ホール」
一番印象的なのは、中央のホールの大きな窓!
高価なステンドグラスを使用する代わりに、木製の窓枠や桟を幾何学的に配して工費を低く抑え、ユニークな空間構成を実現しています。

1階から見ても2階から見てもどちらもステキなので、両方写真撮りましょ。

可愛い椅子は、背もたれが六角形。
ライトは、家具も建物の一部と考え、円型の建物には円を基調としたデザインを、六角型の建物には六角形の家具と、常に建物と家具との調和を考えていたのです。

もちろん、大谷石を使った暖炉も。
入り口の天井部分には灯りとりの天窓。

ホール奥の壁画は、1997年の修理工事の際、厚く塗られた壁の下から発見されたそうです!

はい、タリアセン!(右上)
しつこいですか?
でも、スルー出来ないんですよ。
ここまでくると、さすがに興味のなかった方も、「タリアセン」を覚えて頂けたかも(笑)?
どの照明もユニーク。

🔶教育の基本「食堂」
ホールの奥は上品な食堂。
学校で食堂が中心にあるのは珍しい設計だそう。

「24時間の生活すべてが勉強」という教育理念のもと、当番の生徒が昼食を作っていたといいます。

私達は、喫茶付きの見学で、食堂でパウンドケーキとコーヒーを頂きました。
館内には、女学生たちと写るライト、遠藤新の写真も残されていました。

建物見学のみ:¥500
喫茶付見学 :¥800
夜間見学・お酒付:¥1200

🔶建設途中の入学式「記念室」
初の入学式が行われたのが記念室。
1月にライトに設計を依頼して4月の入学式。
なんと3ヶ月のスピード工事で、入学式時点ではまだ建設中のエリアも。

🔶ライト建築を忠実に継承「講堂」

道向かいに建つ講堂は、ライトの愛弟子だった遠藤新の設計。
師であったライトデザインを継承し、庇(ひさし)のある建物です。

窓やゲートの模様も幾何学模様。

使いながら保存、をスローガンとする自由学園明日館は、ウェディングやコンサート、セミナー、懇親会などでの利用も可。
この日も、講堂では夜のコンサートに向け、ピアノの調律中。

こちらも窓がステキ。

ここにも暖炉。
そりゃそうですよね、エアコンなんてなかった時代ですもんね。

2015年~2017年の耐震補強工事の時に出現した昭和初期のトイレ。
それまではベニヤ板で隠され、倉庫になっていたそうです。

使いながら保存、いいですね!

⭐元「甲子園ホテル」の大学キャンパス


帝国ホテル「ライト館」、「ヨドコウ迎賓館」、「自由学園明日館」と、3つのライト建築を巡り、その素晴らしさに感動しました。

さらに、国内にはもう一つ、ライト建築に触れることが出来る場所が!

旧甲子園ホテル、現 武庫川女子大学「甲子園会館」(兵庫県西宮市)です。
実は私の出身校。
私がライト建築を知っていたのはこのため。

フランク・ロイド・ライトの愛弟子、遠藤新(あらた)の設計で、1930年(昭和5年)竣工。

帝国ホテルの総支配人であった林愛作氏が支配人となってオープンし、
「東の帝国ホテル」「西の甲子園ホテル」と呼ばれ、ベーブルースなどの著名人も宿泊したそう。

太平洋戦争の激化でホテルとしての営業はわずか14年で、1944年には国に接収されて海軍病院に、終戦後はGHQに接収され将校宿舎に。

フランク・ロイド・ライドの設計を継承する名建築を保存しようと、1965年に武庫川女子大学が譲り受けてオープンカレッジとなり、現在は建築学科専攻のキャンパスです。

その美しさ、細かい造作はライト建築の特徴を忠実に受け継いでいます。
こちらも左右対称。

明治村に移築された帝国ホテル「ライト館」とも似てますね!

私は筝曲部(そうきょくぶ)というお琴のクラブに入っていたのですが、毎年夏休みはここで夏合宿。
畳敷きの大部屋があって、そこにレンタル布団を敷いてみんなで泊まっていたんです。
今はもうそのお部屋はないそう。

まずはロビーへ。
彫刻、家具、照明、絵画がすごい!

そして、ホテル時代にバーとして使われていたお部屋で説明を受けました。
床のタイル、可愛い!

床のモザイクタイルは、一枚ずつ異なる窯変(ようへん)をもった美術工芸品タイルで、国内を代表する多くの近代建物に用いられているとか。

「泰山(たいざん)タイル」のTAIZANの文字や1930という数字、色んな模様が。

そして館内の見学ツアーへ。
縦線が入った黄色いスダレ煉瓦、細かい彫刻がライト建築そのもの。

ちょうど屋根の修復中でした。
ただ、新しくすれば良い、ということではなく、他の部分との色合いを合わせるのがすごく難しいんだとか。
こうして丁寧に修復を続けているから保存・活用されてるんですね!

細かい!
写真右の壁も、右上半分と左下半分でデザイン違うけど、ここまでしなくても良さそうなところをこだわるのがライト流を継承する遠藤新の技。

庭園側に出てみると、壁の彫刻も左右が違う!

旧甲子園ホテルには「打ち出の小槌」をモチーフにしたオーナメントや瓦の飾りが沢山!
日本では、「打ち出の小槌」は縁起がいいものですからね。

1階にあった水盤も「打ち出の小槌」。

説明の時に見せてもらったスライドで、こんな写真がありました。
ある時間になると、天窓からこの水盤のところに光のカーテンが出来るそう。

広いホールの天井はなんと障子!
日本の伝統美が各所に!

きっとここで披露宴やパーティーが行われていたのでしょう!

それにしても、なんちゅー豪華さ!
これは遠藤新独特のデザインなのでしょうか。

現在ここは、武庫川女子大学の建築学科のキャンパス。
最後に見せて頂いた教室がすごかった!
屋根の装飾が素晴らしいお部屋で、一人一人、半個室のようなところにPCがずらっと並んでいました。

後半、青空が出た!
ツアー終了後、自由に散策して良い、というので記念撮影!

と共に、私は大学時代、すごい場所を利用させてもらってたんだと実感。

古い建造物を当時の様子を残したまま修復・保存するって、さぞかしコストがかかることでしょう。
武庫川女子大学がこれからもここを保存・活用し続けることを願います。

見学会の後、私達は「ライト洋菓子店」に行きました。
見学ツアーの中で、このお店の創業者は、旧甲子園で製菓長をしていた方、と聞いたから!
「なんだと!?それは行かなくちゃ!」

1955年創業の老舗洋菓子店(西宮市甲子園)。
平成最後の高校野球100回記念でお越しになった、当時の天皇皇后両陛下への献上品となったのがここのマドレーヌ、ということで、もちろん、それを買って帰りました。

来年、2024年1月11日〜 3月10日、パナソニック汐留美術館で
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」
が開催されるそうです。

もちろん行きます♪

ちなみに、ライト建築をさらに知るきっかけになった「世界ふしぎ発見」。

ドバイ、シンガポールのマリーナベイサンズ、クラシックホテル、など、放映を見たことがきっかけで訪れた場所がいっぱい!

が、37年半の歴史に終止符を打ち、来年3月にレギュラーを放送終了するそうですよ。
ん~、残念。

美しい建築を通して、明治、大正期に欧米列国に肩を並べるための近代化を急いだ日本の国策、渋沢栄一氏のミッション、日本美を学ぶことが出来ました。

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