#19 原体験を作り出せ! フラット型組織になれるか!?〜デイサービスの挑戦〜
仕事や趣味、好きなことに夢中になる時、
大きなエンジンになるのは”原体験”ですよね。
こんな経験をしたから。
この時に稲妻に打たれた。
僕にもありますし、僕の仲間もそんなことを言ってました。
でも、原体験がイマイチ見つからない人、
なんとなく今に至っている人もいると思います。
それでいいと思うんです。
特に、僕の関わっているチームは、介護業界で、デイサービスです。
心優しくて、最高の仲間が揃っているなあと思います。
ただ、原体験については、あまり話が出たことはありません。
”こんなことがあってさ、だからこうしたいんだよ!”
そんな温度感ではありません。
ただただ、穏やかで、ゆったりしていて、安心感のある雰囲気です。
しかし、同時に考えることは、やはり”原体験”のエネルギーは計り知れない。ということです。
自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えて、心で感じて、
自分のすべてでその事象にぶつかった。という経験は、自分以外の何者にも享受できないものだと思います。
この世の全てで、唯一自分だけが持っているもの。と言い換えてもいいかもしれません。
そんな原体験を”働きながら”できたら、素晴らしいなあ。と思いつきました。
”仕事の原体験なんて当たり前だろ”
でも、労働集約産業で働いていると、なかなか感じにくいものです。
1日1日、出来事は違いますが、”決まった枠の中”での出来事なので、どうしても「普通からずれたもの」と認識されがちです。
では、僕のチームでは、どのように「原体験を作っている」のかを、実例とともに書きたいと思います。
嬉し泣き
主人公は、30代女性スタッフ。
彼女は、時短勤務で週に1日の勤務です。
お子さんは、男の子2人、上の子は小学生です。
立派はお母さんです。
仕事には7年ほどのブランクはあるものの、社会人歴は10年ほどあります。
そんな、彼女は、入社して数ヶ月ほどたった時、ある悩みを抱えていました。
”折が合わない利用者さんがいる”ことでした。
利用者さん・お客さんも人間です。
特に、入浴介助という密室空間で、プライベートのど真ん中の業務を担当している以上、どうしても「合う人」「合わない人」がいます。
こういった場合、まずは「言語化」「抽象化」が重要です。
なぜ?合う合わないと認識するのか?
だって人間だから。なんとなく。では、何度でも同じことを繰り返してしまいます。
繰り返すどころか、「こんな気持ちになるのは◯◯のせいだ。◯◯さんのせいだ。」と、環境や状況、他人のせいにしたまま、思考停止してしまいます。
彼女の場合は、対象となる利用者さんが「男性特有の威圧感」からくる「生理的恐怖」でした。
おそらく、ヤンキーなど街中の強面男子に恐怖感を覚えるのも似た現象だと思います。
しかし、彼女の場合は、ほんの少し深刻な状況で、業務中の”テンション”に影響するほどでした。
(ご主人が優しさの塊で、めちゃくちゃ良い人っていうのも原因の一つかもしれませんw)
僕らの決断は、”しばらく彼女にその利用者さんを担当させない”ことと、”担当再登板は彼女に任せる”ということでした。
それ以降、彼女とその利用者さんは、フロアやトイレご案内でほんの少し顔を合わせる程度になりました。
それから数ヶ月後、”挑戦したい”との申し出がありました。
オペレーションに余裕のある日を設定し(もし難しかったら誰かが交代できるように)、お願いしてみました。
「何かあったらすぐ呼んでね!呼び鈴でも良いし。」
そう言い、約30分の入浴時間。
彼女の挑戦が始まりました。
呼び出しがない。
大丈夫だろうか?
僕たちもドキドキしながら、待っていました。
30分後、結局、入浴終了まで何も起こらないままでした。
入浴業務が終わり、更衣室へ戻った彼女は、
泣いていました。
まるで、子供が初めて歩いたときのように。
まるで、子供が成人した日のように。
まるで、自分がこの世の全ての幸福感を味わっているように。
正直に当時のことを振り返ると、
大人でも、こんなふうに泣けるんだな。
と純粋に感じました。
「よかった。これでもう大丈夫だ〜」
本当にこう言ってました。
それからの彼女は、頼もしいことこの上ありません。
”この利用者さんの介助、難しそうだなあ”
と思った方でも、彼女なら安心して任せられます。
先日、面接のnoteを書きましたが、
今では、採用面接も安心してお任せできます。
彼女が居てこその、チーム。
今では、そんなかけがえのない存在です。
今でも、たまに彼女と、この話をします。
彼女の強烈な原体験になったことでしょう。
そして、僕らチームにとっても、強烈な原体験になりました。
”ムカつく”ことへのメタ思考
泣くことが原体験なのか?
いや、そうではないと思います。
冷静に、時間をかけて実感することも、原体験だと思います。
ーなんか、今日、イラッとしてた?
”うーん。そうですね。しましたね。”
ある日、そんなやりとりをしました。
イラッとした、彼女がこの話の主人公です。
当時の彼女は、20代前半、フルタイムでチームを支えてくれていました。
介護への想いが強く、いつも笑顔、お寿司屋さんでのアルバイト経験も効いているのか、利用者さんへの接客も丁寧。
彼女は入社して半年ほどした時、このやりとりをしました。
端的にいうと、
焦ってる周りを見て、自分も焦ってしまい、
イライラしてしまっている。
という状況でした。
彼女の場合、まず、「環境によるもの」と「マインドセット」をしっかりと分けて考えることが求められました。
要するに「責任の分離」ですね。
そうすることで、「変えられるもの」と「変えられないもの」を冷静に捉えることができ、
「変えられるもの」は淡々と変え、
「変えられないもの」は捉え方を考えてみる。
ということを出発点として考えていくことになりました。
書き始めてから思ったんですが、これ、細かく書いていくのって難しいので、
結果だけ書きます。
先日彼女と、チームの今後について話をしたことを少しだけ書きます。
チーム全体の雰囲気も徐々に良くなり、
より”仲良し”な空気感になっているが、
もう一つジャンプアップするためにどうしていこうか?
という話をしていました。
その話の中で、印象に残ったことから、原体験を考察していきたいと思います。
「課題」について、
彼女が言っていたのは、
「必ずしも、”解決”しなくても、”完結”しているケースはあるんじゃないか?」
という言葉でした。
何か、問題や課題にぶつかった時、
自分の思考の中に閉じ込めて、行き止まりを見つけたら、
「もういいや!」と思考停止させ、完結してしまう。
でも、そうすると、今後問題や課題、情緒不安定になった時、
同じことを繰り返してしまう。
問題の本質に向き合わず、完結させてしまう。
ただ完結させるならまだしも、
環境のせいや、誰かのせいにしてしまう。
そんな状況になるのではないか。
と言っていました。
これが、彼女にとっての原体験そのものだったように思います。
彼女が危惧していたことは、
かつて彼女自身がぶつかっていたことでもありました。
イライラし、完結させるために、見つけやすい対象のせいにして、終わらせてしまう。
そんな彼女がいつ、どう変わったのか。
多分彼女自身にもわからないでしょう。
でも、時間をかけて、自分自身や周りの環境、状況に向き合い、
彼女なりに言語化し抽象化した結果なのでしょう。
彼女の言葉を聞きながら、入社したての彼女の姿を重ね合わせていました。
希望を持ちながらも、現実とのギャップに葛藤し、
突き抜けた先には、初め見ていた景色を一段上から眺めることができたのでしょう。
一対一で話すときは、たいてい真剣で緊張している彼女の顔が、
その日は穏やかに自身に満ちた表情を覗かせていました。
葛藤の先には、強烈な原体験が残る
今日ご紹介した、二つの原体験から、
「葛藤」は人を成長させると、確信を持ちつつあります。
日々の出来事と、葛藤し、ぶつかり、成長する。
成長の角度や時間は人それぞれです。
その成長の先には、
強烈な原体験が残り、自信をもたらし、
次の成長へと向かわせます。
日常の業務の中で、原体験を作り出せるようなチームにしていきたいです。
そして、このチームでやってきたことを、伝えていきたいです。
そんなことを思いながら、
今日入社してきてくれた新人さんの背中を見て、ニヤニヤしていますw
今日はここまで!
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