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みしか
2018年12月9日 19:06
なんとなく、そんな気分だったから。 公園のベンチに座って、あんパンを手に空を見上げる。冬の空は清々しくて、少し寂しい。点々と散る雲は薄く柔らかそうで、ふんわりと手元に落っこちてきそうだ。冷たい風が頬を撫でて、相反するように私の足元を太陽がぬくぬくと照らす。 大きな理由もなく、会社の最寄りの駅で足が動かなくなってしまった。 金曜日、週末――大好きな言葉たちは、一週間の締めくくるための奮
2018年3月31日 19:24
ピン、ポー……ン。 引っ越して、4年目。最近、うちのインターホンは調子が悪い。もう少し、スムーズに来客を知らせることってできないのか。やっぱり、大家に連絡したほうがいいのかなぁ。「はい。」 こんな時間に訪ねてくるのは、独りしかいない。「……もし、俺がいなかったらどうしたの、リク?」「カイさん、ちゃんと居たから、よくないですか?」 まだ夜は肌寒い。寝間着は半そでに移行し
2017年12月17日 21:29
どうしてか、何をしても上手くいかない日というのはある。 今日はパンプスを左足から履いたからかも、とか、起きる時間が2分くらい遅かった、とか。どうでもいいことに、上手くいかない理由をこじつけて、正当化したい自分が情けない。 いつもはしないようなミスを連発した。新人ならまだしも、そうとは言えない歳になってきている。凡すぎるミスに、頭を下げながらも自分がみっともなく思えて仕方がない。「……すい
2018年7月16日 21:06
「架恵~準備は?」「オッケー。未幸は?」「こっちもオッケー。今日は蜂蜜の香り。昨日、うちの運送してくれているお兄さんがくれたやつ。そっちは?」「ハッピーの香り」「……なにそれ」「ん?ハッピーよ、ハッピー。知らないの?ハッピー」 薄く緑に色づいたお湯にそっと足を入れる。ちょうどいい湯加減に小さくガッツポーズを決めて身体を滑り込ませた。ふわっと甘ったるい香りが鼻をくすぐる。「知ってる