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バンドGuest roomのVo。 好きなものは、小説、映画、博物館、美術館、おにぎり…

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バンドGuest roomのVo。 好きなものは、小説、映画、博物館、美術館、おにぎり。 Guest roomの楽曲聞いてってください🎧𓈒 𓂂𓏸 https://linkco.re/7yyfBtSa

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《小説》GINGER 最終話

ep.16 GINGER 「まもなく上映を開始致します」 丁寧なアナウンスが流れると、騒がしかった客席が少しずつ静寂に包まれていった。 「あーあ、ついに絵麻の良さが世に知れ渡っちゃうなぁ」 隣に座っているミクが溜息をつきながら、小声で言う。 「ただの大学の発表会で大袈裟だよ…。でも、ちょっと怖いな。調子に乗ってるとか思われないかな」 「ふんっ。そんな事言う奴ら、全員私の服着させて、服に負けたら良いわ」 「相変わらず癖の強い反撃思い付くよね」 桜並木が葉桜になっ

    • 《小説》GINGER ep.15

      ep.15 恋 「うん。じゃあ今から向かうね」 水瀬君との電話を切って、画面を閉じる。 ひび割れたスマホの画面が、今朝の事故を思い出させた。 ランウェイは楽しく終えた。 水瀬君が、私達の事を高評価しているお客さんが沢山いたと電話で話してくれた。 ミクもきっと良い仕事を貰える。 やって良かったと心から思えた。 だけど、痛々しい怜生の姿を見ると、体の震えが戻ってくる。 耐え切れず逃げるように、三人を置いて会場を出た私は、まだ痛む足を引きずってゆっくり歩いていた。 モデル

      • 《小説》GINGER ep.14

        ep.14 夢追い人 怜生 「ねぇ怜生。審査員特別賞って結局何位なの?」 メイクを落としながら絵麻が小声で聞いてくる。 GINGERは、優勝を逃し、代わりに審査員特別賞に選ばれた。 「優勝、準優勝、審査員特別賞、だから、まぁ三位なんじゃない?選ばれるだけでも凄いけど、まぁミクは納得いかないだろうな」 横目にミクを見ると、落ち込んでいるのを隠せないままドレスを畳んでいる。 分かりきっていた結果とは言え、流石に少し胸が痛い。 「私がちゃんと歩けてれば…」 「いや、今

        • 《小説》GINGER ep.13

          ep.13 ランウェイ 後編 「まもなくランウェイスタートです!」 10人のモデルとそれぞれに付いているスタッフが、舞台袖で最終チェックを行っていた。 今日のコンテストは、ミクの大学内のコンテストで、優勝するとアパレルブランドとして認定され、審査員長と大学のバックアップを受けられるらしい。 観客席は学生も多く、学園祭のような盛り上がりで、コンテストだと言うことを忘れそうになるけれど、他のモデルやスタッフの真剣な顔を見ると、人生を掛けた大切な日だと改めて思う。 「絵麻

        《小説》GINGER 最終話

          《小説》GINGER ep.12

          ep.12 ランウェイ前編 スマホが6:00のアラームを鳴らすのを、画面を見ながら待っていた。 リビングではもう、祖母がラジオをかけながら朝ご飯を作っている音がする。 どんなに遅く寝床に入っても、5:00には起床して、私が起きてくる頃には、身支度もしっかり済ましている祖母を尊敬している。 いつもはもう一度眠りに入るのを、今日は体を起こしてリビングへ向かった。 「あら、絵麻ちゃんが早起きだなんて、今日は雪でも降るのかしらね」 「緊張し過ぎて寝てられなかっただけだもん」

          《小説》GINGER ep.12

          《小説》GINGER ep.11

          ep.11 カメラの向こう 水瀬編 後編 「よし。ミク、ドレスに移って良いよ」 「ラジャー!絵麻、こっちのカーテンの裏で着替えよう。男共、覗くんじゃないわよ」 小鳥ちゃんはメイクが終わり、カーテンの裏へとミクに誘導されて行った。 俺は、変身前の私服の彼女をギリギリまで撮り続けた。 台本は無い。 ただ、今の彼女を撮るのに、まぁここは良いかと言う予断は許されない気がしたのだ。 カーテンを全部閉め切る前、小鳥ちゃんはカメラの方へ振り返って、さぁここからですよと言えような笑

          《小説》GINGER ep.11

          《小説》GINGER ep.10

          ep.10 カメラの向こう 水瀬編 まだ、胸の高鳴りが収まらない。 横断歩道を駆け足で渡って来る彼女は、黒のスキニーと白シャツに、深緑のコートを羽織っていた。 真っ赤なパンプスは軽やかな音を立てて、下向きがちだった小鳥ちゃんの背中を押しているようだった。 「私のドキュメンタリーを作ってくれないかな?」 突然の呼び出しに、もしかしたら小鳥ちゃんの気が変わったのではと、自意識過剰な期待を膨らませて、待ち合わせ場所に向かった俺。 本当に恥ずかしかった。 こんな恥ずかしい勘

          《小説》GINGER ep.10

          《小説》GINGER ep.9

          ep.9 深い夢に入る前に 私の慰め会の次の日から、3人としばらく連絡が取れなくなって、一ヶ月が経った。 怜生からの最後のメッセージは、 《ランウェイの練習をする事。姿勢を直して、しっかりストレッチをする事。太らない事。痩せすぎない事。4月の本番まで体型変えるなよ!》 とのご命令。 ミクの作るドレスの採寸が終わっているので、私は採寸の日から体型が変わらないように必死だ。 高一から、体重と身長はほとんど変わっていないから、キープをするのは困難ではないけれど、いざ変える

          《小説》GINGER ep.9

          《小説》GINGER ep.8

          ep.8 優しい夜を 絵麻編 私と怜生は、夜のあの店にいた。 アトリエに帰ってからも、私は泣くのを止められなかった。 怜生はもう何も言わず、いつものようにジンジャーティーを淹れ、一人寝室で過ごしながら私を放っておいてくれた。 しばらくして、泣き疲れてソファーで寝てしまっていた私を、男らしく整った怜生が店に行こうと連れ出した。 で、今に至る。 奥にあるテーブル席でジンジャーエールをちびちびと飲んでいると、もう馴染みある明るい声が、後ろから聞こえた。 「怜生、今日はそっ

          《小説》GINGER ep.8

          《小説》GINGER ep.7

          ep.7 涙の味 絵麻編 「女の子達も一匹狼って感じで良いなって言ってたけどな」 彼から発せられる言葉が、悪気の無い褒め言葉だと受け入れるのに、そう時間はかからなかった。 けれど、水瀬君の知らない女の子達の顔を知っている私は、喜べるはずもなく、自分でも驚くほど低くて冷静な声が出た。 「なりたくてそうなってるんじゃない」 「え?」 「私は、誰よりも寂しがりで、臆病で、自分に自信がなくて、勉強する事でしか自分を認められない弱っちい人間だよ」 そこまで言って、急に身体が

          《小説》GINGER ep.7

          《小説》GINGER ep.6

          ep.6 優しい夜を 怜生編 「落ち着いた?」 ジンジャーティーと冷やしたタオルを絵麻に手渡しながら、彼女に問いかける。 「うん。ありがとう。ごめんね迷惑かけて」 「良いって。で、どうしてこうなった?」 ジンジャーティーを一口飲んだ絵麻は、カップを机に置いてタオルを手に取った。 そのまま目元に当てて、ゆっくりと口を開いた。 「私らしくないって」 「え?」 「そんな派手な格好、小鳥ちゃんらしくないよって言われた」 腹の奥底で、何かが蠢くような、気持ち悪い感じが

          《小説》GINGER ep.6

          《小説〉GINGER ep.5

          ep.5 涙の味 怜生編 「神代」 背後で何やら殺気を感じる。 振り返ると、怖い顔で腕組みをした姫川音澄が立っていた。 雲一つない青空と強すぎる太陽の日差しをバックに立つ彼女は迫力がある。 「おはよう姫川」 「おはようじゃないわ。あんな大荷物持たせといて、結局戻って来ないし、アトリエ行ってもいないし、絵麻連れてどこ行ってたのさ!」 「忘れてた」 「最低。おかげで今日の荷物もこんなに多くなったし、許さんマジ」 「すまん。ま、説明するから座れよ」 「悪いと思ってな

          《小説〉GINGER ep.5

          《小説》GINGER ep.4

          ep.4 夜の街 「ねえ、怜生。メイクは見せてくれる?」 まだ秘密の部屋で着替えをしている怜生に声を掛ける。 「え?もう終わるんだけど」 「ええ!流石早い。見たかったな…」 勢い良くドアが開いて、体制を崩した私を細くて綺麗な両腕が支えてくれる。 ムスクの甘くて優しい香りが、私を包んだ。 「メイク講座は今度したげるよ。ごめん、勢い良く開けちゃった。大丈夫?」 思わず香りを堪能してしまった私は慌てて離れて顔を上げ、また静止した。 目の前には、スタイルお化けの綺麗な金

          《小説》GINGER ep.4

          《小説》GINGER ep.3

          ep.3 プロデューサー怜生 「ちょっと待って…」 「どれが似合うか…あっ、これなんかどう?うーわ、この子足長いからどちゃくそ似合うじゃんやっば」 神代は私に色々な服を合わせては、あーでもないこーでもないと一人でブツブツ言っている。 私は、部屋の雰囲気に飲まれすぎて、まだ服に意識を持っていけないでいた。 ベッドには、お嬢様の部屋とかでしか見た事がないレースのカーテンが吊るされ、大きくて真っ白のドレッサーには、沢山のコスメが置かれている。 天井にはシャンデリアが一つ、そ

          《小説》GINGER ep.3

          《小説》GINGER ep.2

          ep.2 天才 「別に貶そうと思って言ってるんじゃなくてさ」 気まずい空気が流れていても、神代は至って冷静に言葉を並べていく。 音澄はずっと信じられないって顔で、私の右腕をさすっていた。 「誰がどう聞いたって絵麻を貶してるようにしか聞こえないっつーの」 「違うよ。量産型になっちゃうのは勿体無いなって話」 「余計なお世話だわ。ねえ?絵麻」 量産型。 そっか、私、量産型になれてるんだ。 「絵麻?」 「私って量産型に見えますか?」 神代は、音澄から私へと視線を移し

          《小説》GINGER ep.2

          《小説》GINGER ep.1

          ○登場人物 主人公:小鳥 絵麻(おどり えま)  大学二年生。名門大学に通っている。お洒落や流行りに疎い。真面目で一生懸命だが、人付き合いは不器用。おまけに、やりたい事や夢が見つからず焦っている。水瀬に憧れを抱いている。 水瀬 理玖(みなせ りく)  大学二年生。絵麻の同級生。明るくて爽やか。誰とでも仲良くなれるコミュ力お化け。 姫川 音澄(ひめかわ おと)  美大の二年生。絵麻の高校のクラスメイト。 桐野 陽向(きりの ひなた)  大学二年生。絵麻の高校のクラスメイ

          《小説》GINGER ep.1