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エッセイ

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実際にあった出来事を自分なりに咀嚼して書いたエッセイです。
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#日記

F町の地下にて♯2

F町の地下にて♯2

 昨日も踏んだ地下への階段を今日も踏む。2週間前に会ったばかりの彼のことが忘れられなくて、淡い期待を持って扉を開けると、彼は煙草を吸いながら軽く会釈をした。

 彼の端正な顔立ちがこちらを向いて、心臓がどくりと動いた。

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F町の地下にて ♯1

F町の地下にて ♯1

 AM3:00、F町の薬局の地下。スナックやバーが立ち並ぶ、ひっそりと、しかしながら艶やかに眠らない場所。通称、『地下』。地下にいる人々は酒を酌み交わしながら非日常に浸っている。
 このエッセイは、19歳という若さでその地下に足を踏み入れ、今では頻繁に通っている彩田の日記である。

 彼がホストだと聞いた時、驚きはしなかった。安心できる笑いかたと話し方、心地よい間の取り方、あざとい、という言葉がぴ

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某東京♯2

某東京♯2

 浪人した人間はある程度大学への夢と理想が薄れるという噂はその通りだった。自己推薦で進学が決まるまでの間に華の大学デビューを遂げた同級生は、課題やレポートや単位に追われ、その現実から目を背けるために酒やタバコやカルチャーに溺れまくり、ドロドロとしたモノの中でヘラヘラとしている人間と、はなからそんな現実わかりきっていたのでうまくこなしていく人間に二分化された。後者の方が後々生きやすく、そして楽しく過

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某東京♯1

某東京♯1

 祖母の家の最寄りの駅。岩手県新花巻駅。お土産の売店と、ぽつりと置かれた顔はめパネル、銀河鉄道をモチーフにした駅前のオブジェ、鬼剣舞の写真が並んだ待合室があった。

それしか、なかった。

見送りに来てくれた叔母に手を振り、ホームから新幹線に乗り込む。簡素なホームがどんどん遠くなり、少し心細くなった。YouTubeでも見て紛らわそうかと携帯電話を取り出すも、山の中を行く新幹線は多くのトンネルを通過

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まっすぐな青少年

 渋谷駅周辺の喧騒にいるといつも自分の"陰"オーラに嫌気がさしてくる。電車を降りようとした時、向かい側から乗ってくるマスクをしていないいかにもスケートボードが似合いそうな男の子5人組にあからさまに恐怖を覚えてしまった。
 もともと明るい人間だったはずなのに、いつのまにか明るい人間が苦手になって、いつのまにか下を向いて歩くことが多くなった。別に元気がないとかではなくて、ただ、なんとなく背中にいつも視

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愛が飽和する前に死にたい

 受験勉強を始めてから6キロほど太ってしまった。ストレスで顔の肌と手足の皮膚がボロボロに荒れ、お世辞にも可愛いとは言えない見た目であった。
 最初の頃はnoteにアイドル論を綴ることが、私のアイドル欲を満たす一つの方法だった、が、今ではなぜか文章を書けなくなっている。

 TwitterやInstagramで繋がる上辺だけの「like」にも「good」にも「bad」にも「friends」にも全部呆

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