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美加りん 詩人
2020年2月4日 12:23
この世に私のものは何ひとつない 家もお金も服も食べ物も仕事も 恋人も家族も友人もペットも 何ひとつ 私のものではない 声も身体も才能も 思考も感情も運命も 名前も使命も命さえも 何ひとつ 何もかも 私は輪郭だけの 宇宙の裂け目 大自然と神と宇宙の中で 何もかもがその裂け目を通り抜け いったりきたり きたりいった
2020年2月5日 11:23
今から千五百年ほど前に 空がいつ落ちてくかと 毎日心配している人がいた。 そんなことは絶対ないと知り やっと安心した 杞の国の憂いの人。 同じように私も心配していた。 空が落ちてきはしまいかと。 いつか何か恐ろしいことが 降りかかってくるかもしれないと。 創造力を妄想に使い 毎日毎日恐れ続けて疲れ果てた。 ある日、心を決め
2020年2月8日 12:32
今日は何故かご機嫌なガビチョウ。 あなたに触れた朝を彩る歌。 隣家から聞こえてくる営みの音。 皿がぶつかる音 ドアが閉まる音 水が流れる音 小さな足音 世界は何も変わっていない。 私が変わってしまった。 一か月前、いや、昨日の私も もうここにはいない。 いいえ、世界も変わっている。 そこには昨日と全く同じ人は存在しないのだから。
2020年2月12日 14:21
さみしさに溺れて あなたを見失いそうな日は 群衆の中に 紛れ込む。 無数の見知らぬ魂の中で ただ一人知っている あなたという光を 見つけられるから。 あなたに出会えた幸運を想い出し その喜びが全てを拭い去るから。 そうして顔を上げて前をみれば あなたの笑顔。 何の邪心も計画もない 無責任と思えるほど純粋な慈しみ。 その笑
2020年2月16日 12:47
オレンジ色に輝く大きな星 十五年に一度の火星の大接近 情熱の星 私は火星のエネルギーをかりて あなたと激しく燃え上がる 破壊の星 今まで大切だと思っていたものを 全て破壊し捨て去る 衝動の星 後先考えず 心にただ従う スピードの星 私は何者の眼にも止まらぬ速さで あなたとまぐ合う 争いの星 破壊と創造の葛藤を引き
2020年2月18日 10:59
人類は 失われた半身を求めて 永遠にさまよう。 完全にひとつになることを夢見ながら 出逢い 恋をし 理解して 愛し合い 重なり そして 失望し 離れる 完全にひとつにはなれなかったと。 そしてまた恋をして 永遠に探し続ける。 神の聖なる実験場で 最初からひとつの関係性があるとしたら、 人類は耐えうるのだろうか?
2020年2月19日 20:26
私にとって あなたが どんな生い立ちで どんな経験をして どんな業績を成し 家庭環境や 国籍や 年齢や 大切なものや きらいなもの 何を考え どういう性格で どこに属し 何を大切にしているか まったく どうでもよいことなのです。 目の前にあなたがいて 命を燃やし ただ存在することのみが 私にとって大切。
2020年2月23日 12:10
空が私の元へ降りてきた 空が私に触れ ひとつに溶け合う 空は私を知らない 私を好きなわけでも 愛しているわけでもない それなのに 私とひとつに交わり 私は空に溶ける 大きな抱擁とエクスタシー 理由のなき行為 自然は 大地は 宇宙は 無条件に 私とひとつになろうとする 好きでも愛してもいない私と ひとつになる
2020年2月25日 11:39
あなたに抱かれた日から グロテスクな悲惨さが この世に存在することが イヤではなくなった。 私はすっかり変わってしまった。 あの日から。 人生の 生々しさや滑稽さ 一生懸命さや残酷さ 悲しさ 怒り やるせなさ 喜び 楽しみ 汚さ 狡猾さ 譲れないもの どうでもよいもの 情熱 挫折 創造力 暗闇 Pen
2020年2月27日 10:53
しらなかった 女という遺伝子は 強い男を求めて 無条件に惚れてしまう。 あなたが戦う姿を見て この強い男に組み伏せられたいと ひとつひとつの細胞が叫ぶ。 この男が欲しいと身体が求め 感じたいと身体が開く。 自然界では雌と交尾する権利を得るために 雄同士が死闘を繰り返す。 戦いを何食わぬ顔で黙ってみている雌は 勝った雄に自動的に吸い寄せられる
2020年2月29日 11:37
美味しそうなありとあらゆるものを ドンドン鍋に放り込み 時に苦みや酸味のある 材料も入ってしまうけれど そんなものを混ぜ込んでいるうちに 鍋自体もどんどん巨大化して 何だか分からないけれど おかしくて笑いだしてしまうような 変な感じになったりもして しまいには全体として なんだかおいしい感じに出来上がり すきっ腹を抱えた子供たちが どん