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本紹介

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#書評

全国の書店員さんを信じて

全国の書店員さんを信じて

この帯の付いた本を購入してみた。

一度、こういう派手な帯の本を読んで、「ダメだこりゃ」と長介さんになったことがあったので、読み始めで、
「もしかしたら、あの感じのヤツか?」
という警戒モードが発令された。
が、結論からいうと杞憂だった。オビの感想にあるように、「ページをめくる指が止められませんでした」なのだった。

『君の膵臓をたべたい』住野よる著(2015年双葉社刊)桜はらはらの表紙がタイムリ

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ペーパードール on 昭和

ペーパードール on 昭和

角田光代という人は、どうしてこうも「一介の」「しがない」「どこにでもいるような」女(とみなされる女)を巧みに描くのだろう。

角田光代著『笹の舟で海をわたる』(2014年 毎日新聞社刊)

主人公の左織は、義理の妹 風美子を頼りに思う反面、おそれに似た感情をいだいている。
折にふれて、風美子に自分の人生を操られているような気持ちが頭をもたげる。
山下達郎の「ペーパードール」さながら、いつか風美子の

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溜め込んだ諸々 そして純文学

溜め込んだ諸々 そして純文学

年末の気忙しさ極まれり。
世間様の大掃除ムードに乗ろうと必死であるが、膨れ上がったファイルボックスにはなかなか着手する気が起きずにいる。

トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』では、老女が、溜め込んだ膨大な書類・手紙類を下宿人に整理してもらう場面が出てくる。
また、思い入れがあって捨てられない物たちを、凍った湖の上に盛っておく場面がある。
春になって氷が解けたら、盛られた物たちは湖の底へ。目からウロコ

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ジャーナリズムについて

ジャーナリズムについて

昨夜は、古い友達と、3年ぶりくらいに酒を酌み交わしながら語りあった。
彼女は、若い頃はバリバリのカメラマンで、アーティストや市井の人々や静物やらを、とても素敵に撮っていたし、仕事一筋だった。

そんな彼女も母となり、自分のことより子どもや家庭のことを最優先して生きるようになり、カメラを持たなくなって久しい。
「別に写真なんてどうでも良くなっちゃったんだよね」

そんな彼女が、今ふつふつとやりたくな

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学校図書館に出来ること

学校図書館に出来ること

今日の新聞記事の中で、特に目にとまった記事。夜間の繁華街を徘徊する少年少女に声かけ活動をしている「BONDプロジェクト」と無料学習教室を開いている「さいたまユースサポートネット」を取り上げた「学びの現場から」(日経新聞)。
これらの活動を賞賛したい!と思うと同時に、「夜の居場所」を必要とする若者が増大する社会に、どよよーんとしてしまう。
『多様性と出会う学校図書館』(野口武悟・成松一郎 編著)には

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