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報道されないY型の貴女へ
いわゆる「セクシー女優」が社会の表舞台に堂々と出てきていいものか、という話。それこそ自分は「中世ヨーロッパにおける"娼婦"の社会的意義」などというテーマで卒論を書いていたこともあり、この手の話についてはほんの少しだけ蘊蓄のようなものがあると自負しているので、少し私見を述べてみようかと思う。まず卒論のテーマを考える上で自分が興味を持ったのは、性的領域において禁欲を是とするキリスト教、中でもとりわけ
もっとみる優しさだけじゃ人は愛せないから
「人から"優しい"と言われるような人は生きづらく、性格が悪い人ほど生きやすい世の中になっている。」時々、そういった旨のポストを目にすることがある。このような「良い人ほど損をする」的な言説は、潜在顧客である「繊細で優しい生きづらさを抱えた人々」に向けられたものであり、実際に多くの共感を呼んでいるわけだが、果たして本当にそうなのだろうか。自分も人から長所として「優しい」を挙げられることが多いタイプの
もっとみる実家暮らしのトポフィリア
自分は「帰省」を知らない。両親共に横須賀出身で、親類の殆どは神奈川に集中しており、実家は母方の祖父母との二世帯同居。そして何より自分自身が未だ実家に暮らしているということが大きいだろう。帰省に関しては門外漢でも、寄生に関してはちょっとした権威である。冗談はさておき、そういった経緯から自身の「帰省」に対する憧れは人一倍強いものがあったと思う。蝉時雨を遠くに聞きながら畦道を行くと優しい祖父母が笑顔で
もっとみる着こなし 担当:エロ司
肌を撫でるレーヨンの質感と、その間を吹き抜ける清風。夏は嫌いだが、敢えてひとつ好きなところを挙げるとするなら、三十枚近い柄シャツコレクションの中から一枚を選び、袖を通す瞬間を挙げるだろう。自分の所持している柄シャツは、着て街を歩けばどこで売っているのかと人に問われるような珍奇かつ淫靡な柄のものばかり。さすがにオーダーメイドというわけにはいかないが、柄シャツの柄選びと私服のコーディネートは、自分に
もっとみるWho killed His Majesty The Emperor?
今、X上でにわかに「自己肯定感」が話題になっている。話を掘り下げていくとどうやら"なぜ「自分が人から大切にされる価値がある」と思えるのか教えてほしい"という内容のポストが発端のようだが、個人的な肌感覚としては「自己肯定感」という概念自体が自己肯定感の低い人間特有のものであり、いわゆる”自己肯定感の高い人間”というものは、初めから存在しない可能性が高い。一見対極のように見えるが、実は全く別の存在で
もっとみる「デリヘルなんです。」
都心では新型コロナウィルスが猛威を振るい始めていた昨年のGW。俺は矢面に立つ覚悟ひとつぶら下げて、五日間に渡る一人旅を敢行した。春先に完成した自著を友人の営む古本屋に届けに行くついでに、瀬戸内の町々を徒然に巡ってみようと衝動的に思い立ったのだ。尾道で深夜の商店街の静謐を軽やかに乱してみたり、キャリー片手に因島を徒歩で縦断したり、古色ゆかしき今治の街並みの猥雑を堪能したり、道後で懐かしのストリップ
もっとみるreal emotion
「エモい」という言葉が人口に膾炙するようになって久しい。おそらくその源流は音楽にあり、十年ほど前からライブハウスや終演後の居酒屋などで局地的に耳にしていた言葉ではありましたが、まさかここまで覇権を握ることになるとは想像だにしていませんでした。実際のところ、自分の中の「エモい」は未だに「eastern youthを評する時に用いられる語彙のひとつ」という認識で止まっています。「一切合切太陽みたいに
もっとみる心中したいならONE PIECE
ワンピースが好きだ。「ワンピースが嫌いそう」というパブリックイメージを逆手に取り、「こう見えてワンピースが好きです」的なギャップを演じていると見せかけて実は本当に好きなのだ。小学生の頃、誕生日に単行本を1〜10巻まで買って貰ったことに始まり、今は無き地元の東映劇場へ「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」と同時上映だった「劇場版 ONE PIECE」を観に行った時には、最初は渋々の同伴だ
もっとみる君はロックを知らない
今朝、中学時代の担任のエピソードをツイッターに投稿したのだが、実はこの担任と自分との間には浅からぬ因縁がある。人生の第一期「スクールカーストウォーズ」において、彼女は自分の前に明確な「敵」として立ちはだかった初めての大人であり、卒業までその立場を頑なに貫き続けた人だった。そして彼女のその選択が、当時の自分にとって「最も忌むべき偉業」であったことは疑いようのない事実だ。今回はそんな彼女と自分の戦い
もっとみるマイ・アンビエント・ミュージック
ツイッターで音楽の話をすることはあまり無い。わざわざ公の言論空間で発信するからには最低限「オピニオン」もしくは「エンターテインメント」たるものでなくてはならないという自身の強迫観念めいた拘りから、私的要素の濃い領域に関しては意識的に遠ざけるようにしているが、あくまで積極的に話すことがないというだけであって、改めて振り返ってみると、それなりにノーミュージックではノーなライフだったと思う。
表題
こんな時代に生き延びるだけでも
ここ数日、「いじめ」についての議論が紛糾している。個人として「いじめ」の是非を問われれば、おそらくノータイムで「到底許しがたい卑劣な行為」と心から答えるだろう。しかし、過去の被害経験に基づいた当事者の「怒りの声」に関しては、発生の抑制や制度の是正といった対策よりも加害者に対する断罪や追及という目的へ向かいやすいため、オピニオンとして扱うことにはある程度慎重を期するべきではないかというのが、公人と
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