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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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2022年9月の記事一覧

【詩】生きた屍

【詩】生きた屍

私は存在しているのか。
喜びも、悲しみも
何処かへ消えていった。
私の中に心は存在しない。

疲れた肉体だけがベッドに横たわり
乾いた空気が肉体を包む。

食べることも、
寝ることも、
愛し合うことも忘れた
生きた屍。

怒り狂い、泣き叫んで、
心を喪失してしまったのか。

嫉妬、憎悪、絶望に蝕まれ、
愛はもう宿らなくなったのか。

私の中に心は存在しない。
空洞になってしまった私の体。
この肉体

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【詩】矛盾している私

【詩】矛盾している私

都会の洗練された街並みも好き。
自然の香りのする田舎の風景も好き。

小洒落たレストランでの食事も好き。
寂れたチャイニーズレストランでのご飯も好き。

流行の服着て颯爽と歩くのも好き。
ジーンズにブカブカのTシャツ着て歩くのも好き。

目標に向かって努力するのも好き。
なーんにもしないでボーっとしているのも好き。

大きなことに挑戦するのも好き
慎重に考えて行動するのも好き

日本人の慎ましく静

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【詩】 春の目覚め

【詩】 春の目覚め

うっすら開いたまぶた
目に映るのは優しい日の光

まだ眠気が体を包み
ベッドにふんわり溶け込んでいた

扉をノックする 楽しげな風の音色

つま先をそっとベッドの外に出してみる
冷たい空気が 指を突き刺すことはもうない

窓から差込む日差がすでに眩しくて
時計をおもむろに引き寄せた

気だるさを覚えながら
ベッドを抜け出し窓をあければ
首をかしげて私を見つめるトカゲの子
生暖かい春の風が 
芝生の

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【詩】 静かに流れる時の中で

【詩】 静かに流れる時の中で

ふと窓の外に目をやった
春も間近というのに
すぐ目の前の大きな木には
葉の1つもついていない
冬の名残を刻む木を
茜色の空が包んでいる

枝と枝の間に浮かぶのは
赤い屋根が連なる町並み
遥か向こうにかすむ
平和に過ぎた今日に感謝して
静かに時は流れていく

今日もまた
昨日と変わらぬ風景を
穏やかな時間の中で
厳かに見守る大きな木
冬の名残を刻んでも
春のように温かい

静かに流れる時の中で
森羅

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