記事一覧

フィリアス・メネルグロス(元冒険者/魔術師、エルフ)の話

 あれはそう、150年ほども前のことだったかな。  南の方の海に浮かぶ島の、シアルーパという小さな国の王女が、遠い国に嫁入りをするというので、彼女を護衛する仕事を受…

meiha
4年前
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スローリア・キビルザラム(冒険者/元傭兵、ドワーフ)の話

 そう。前はね、北の方で傭兵やってたんだけどさ。  夏の間は、つってもほんの短いんだけど、中央で一旗揚げ損ねた間抜けがね、流れて来て厄介ごと起こしたりしてね。  …

meiha
4年前
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変愚蛮怒 最初のクエストに行く

前回あなたはアンバライトのレンジャー(あるいはそれ以外)として辺境の地に誕生した。 もしまだキャラクターを作っていないなら、先にこちらを読んでみて欲しい。 移動…

meiha
6年前
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変愚蛮怒 最初のキャラクターをつくる

変愚蛮怒をインストールするとくに難しいことはない。 まずは下記のサイトからダウンロードだ。 Zipを解凍して、.exeをダブルクリックすれば遊べるようになっている。 こ…

meiha
6年前
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お題箱:きんのたま

 岩石食性の竜の一種に、ゴールドドラゴンというのがいる。  ドラゴンとは言うもの、羽もないし足もない。ワームの一種と言われたほうがまだ信じられるだろう。  骨格の…

meiha
7年前
1

お題箱:5000兆回生きたねこ

 ねこシミュレーターの中のねこが5000兆回めの生を受けた。  一部のスパコンとグリッド・コンピューティングによって膨大なリソースが費やされ、ねこのシミュレーション…

meiha
7年前

お題箱:化石

 この惑星は、平均的な入植可能惑星に比べ、直径は多少大きく、自転は多少早く、公転周期は多少長い。  ひと季節が地球標準の3倍から4倍あるのだ。  とは言え、その「季…

meiha
7年前

お題箱:うんこ

 恒星間航行中にリサイクラーが壊れたというのは、最悪の事態のうちのひとつだ。  航宙士の資格を取って20年、こんなにも追い詰められたことはかつて無い。  機関士が一…

meiha
7年前

その3

 宿の食堂の窓からは、この町の中心を通る街道が見える。  朝食が終わって時間が経って、正午にはまだ早く食堂に他の客の姿はない。昨日この宿に泊まった旅人はすでに出…

meiha
7年前

データの鳥

 昔、オンラインゲームの中で鳥を飼っていた。  僕の膝より上に頭が来るくらいの大きさの、ニワトリやアヒルのように飛べない鳥だった。  戦闘に連れていくこともできた…

meiha
7年前

企業クローン

 今の世の中、高い値がつくのは生きる権利であって命じゃない。  ぼくらは良い権利を持っていないので安く使われているわけだ。単純な話、高純度の金属は高いから、マシ…

meiha
7年前

変身

 それは、何とかいう宝石商の別荘にタタキに入って、ヤサに戻る途中のことだった。  最近こっちに愛人ができたとかで、サルみたいに顔を真っ赤にしてキバってるとこに押…

meiha
8年前

魔法少女

「くそっ、やつだ! 魔法少女だ!」  薬の詰まったケースを片手にアニキが叫ぶ。俺がこの街に来て1年半になるが、あれの実物を見るのは初めてだ。  倉庫街の屋根の上に…

meiha
8年前

犬、星

 流れ星を拾いに出た夫が、犬と連れ立って帰ってきた。  夫の言うには、帰り道にその犬が腹を空かせていたので、集めた流れ星をいくらか与えたのだという。  それはほん…

meiha
8年前

ルーパの海

 そこはルーパと呼ばれる星だ。ルーパと言うのは現地の言葉を地球人類がなんとか発音できるようにしたもので、はるか昔の偉大な王の名前なのだという。陸地は惑星の総面積…

meiha
8年前

恐怖と憤怒の発作

 この辺境では全てが貧しい。粗末な板葺きの小屋を寄せ集めたような村の中で、人々は全てのものを胡乱げな目で見ている。彼は別の村からやってきたよそ者で、流れの傭兵を…

meiha
8年前

フィリアス・メネルグロス(元冒険者/魔術師、エルフ)の話

 あれはそう、150年ほども前のことだったかな。
 南の方の海に浮かぶ島の、シアルーパという小さな国の王女が、遠い国に嫁入りをするというので、彼女を護衛する仕事を受けたんだよ。
 ああ、そうだよ、テン、かわいいお嬢さん。お姫様さ。オリビアという名前の、それはそれは美しいひとだった。
 小さな太陽のように明るい人だったよ。日に焼けた肌に、黒絹のようになめらかな髪とマリンブルーの瞳がよく似合っていたも

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スローリア・キビルザラム(冒険者/元傭兵、ドワーフ)の話

 そう。前はね、北の方で傭兵やってたんだけどさ。
 夏の間は、つってもほんの短いんだけど、中央で一旗揚げ損ねた間抜けがね、流れて来て厄介ごと起こしたりしてね。
 まあ、人間なんかは寒さに弱いし、冬になるとどこぞに消えて無くなるんだけどね、今度はゴブリンだのオークだのが山から出てきて悪さするのよ。
 そういうのをぶん殴って黙らせるお仕事してたわけ。
 それが、あの年は珍しく熊が出たのよ。冬の遅くにね

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変愚蛮怒 最初のクエストに行く

前回あなたはアンバライトのレンジャー(あるいはそれ以外)として辺境の地に誕生した。
もしまだキャラクターを作っていないなら、先にこちらを読んでみて欲しい。

移動するこれが変愚蛮怒の基本の画面だ。

あなたは今すぐモンスターを殺したいと思っているだろうが、その前にすこし操作の説明をしたいと思う。
変愚蛮怒は古いタイプのゲームなので、初心者であるあなたには優しくない。
しょうがないからあなたの方で歩

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変愚蛮怒 最初のキャラクターをつくる

変愚蛮怒をインストールするとくに難しいことはない。
まずは下記のサイトからダウンロードだ。

Zipを解凍して、.exeをダブルクリックすれば遊べるようになっている。

この先一生付き合っていくアイコンだ。良く覚えよう。

Wikiもある。
変愚蛮怒の情報は大体ここに集まってるので、ひと通り見ておいて損はない。

起動する起動するとこのような画面になる。
あなたは最初の起動なので新規を選ぶ。

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お題箱:きんのたま

 岩石食性の竜の一種に、ゴールドドラゴンというのがいる。
 ドラゴンとは言うもの、羽もないし足もない。ワームの一種と言われたほうがまだ信じられるだろう。
 骨格の名残だとか魔力組成だとかが竜種に近く、おそらく大昔に地面の下で生きると決めた変わった竜の子孫なんだろうということだ。
 うろこは無く、全身がまばらな細長い毛に覆われていて、それによって微弱な魔力を感知でき、周囲の岩石から好みのものを探し出

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お題箱:5000兆回生きたねこ

 ねこシミュレーターの中のねこが5000兆回めの生を受けた。
 一部のスパコンとグリッド・コンピューティングによって膨大なリソースが費やされ、ねこのシミュレーションを繰り返してきたねこシミュレーターも、計画の大半を終えようとしているらしい。
 この5000兆回めの生を受けたねこは、偶然なのか開発者の意図なのか、一回めに生まれたねこと全く同じ柄のトラ白で、オスで、緑の目で、鼻はピンク色をしていた。

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お題箱:化石

 この惑星は、平均的な入植可能惑星に比べ、直径は多少大きく、自転は多少早く、公転周期は多少長い。
 ひと季節が地球標準の3倍から4倍あるのだ。
 とは言え、その「季節」もテラフォーミングの恩恵によるもので、人類が入植する前のこの星は、まさに氷河期の世界だったのだが。
 しかし、この惑星はもともと温暖な気候だったようだ。
 比較的新しい超大規模な噴火の痕跡が観測されており、氷河期への突入はそれが原因

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お題箱:うんこ

 恒星間航行中にリサイクラーが壊れたというのは、最悪の事態のうちのひとつだ。
 航宙士の資格を取って20年、こんなにも追い詰められたことはかつて無い。
 機関士が一応直そうとは試みたが、あれはもうだめだ。外板がひしゃげて中の制御結晶体が粉々になっていた。
 しかし、幸運なことに、2週間後には近くに居た工業船とランデブーできる。
 この広い宇宙というものに確率を掛け合わせて考えれば、このような出会い

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その3

 宿の食堂の窓からは、この町の中心を通る街道が見える。
 朝食が終わって時間が経って、正午にはまだ早く食堂に他の客の姿はない。昨日この宿に泊まった旅人はすでに出て行き、今日この宿に泊まる旅人もまだ街道の上だろう。亭主はカウンターの中で、とろんとした眼の娘と共に料理の仕込みをしている。
 リドゥは穏やかに宿の食堂の窓辺に座って、五〇〇年ぶりの町の気配を感じながら、商都レアエイムから仕入れているという

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データの鳥

 昔、オンラインゲームの中で鳥を飼っていた。
 僕の膝より上に頭が来るくらいの大きさの、ニワトリやアヒルのように飛べない鳥だった。
 戦闘に連れていくこともできたし、交配したり、着飾らせたり、なんなら食べることもできた。
 そういうシステムのチュートリアルのためにもらうデータで、プレイヤーのほとんどが持っていた鳥だった。

 最初に彼をもらった頃の僕にとっては戦力としても上等で、物珍しさもあって、

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企業クローン

 今の世の中、高い値がつくのは生きる権利であって命じゃない。
 ぼくらは良い権利を持っていないので安く使われているわけだ。単純な話、高純度の金属は高いから、マシンガン・ドローンにかかるコストだってぼくらよりは高いのだろう。つまり食品加工の発展で生まれたぼくらクローン体が一番安い。そのせいで、ぼくらはチキンレッグと呼ばれている。
 ぼくは何年か前にキグナス腕の外れで生まれ、その数時間後にラックマウン

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変身

 それは、何とかいう宝石商の別荘にタタキに入って、ヤサに戻る途中のことだった。
 最近こっちに愛人ができたとかで、サルみたいに顔を真っ赤にしてキバってるとこに押し込んだんだ。
 アニキの仕入れてきた情報通り、現ナマが山ほどと、宝石もちょっとあった。詳しくは聞いてないが、どうせ脱税とか闇取引とかだったんだろう。アニキは機嫌よく笑ってて、俺も二人の手下もバカみたいに浮かれてた。
 当然、夜中のことだっ

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魔法少女

「くそっ、やつだ! 魔法少女だ!」

 薬の詰まったケースを片手にアニキが叫ぶ。俺がこの街に来て1年半になるが、あれの実物を見るのは初めてだ。
 倉庫街の屋根の上に月を背にしてなお輝くように浮かぶ魔法少女は、片手に持ったおもちゃのような杖をこちらに突き付けて、少女らしい、夢と含蓄のある説教だか口上だかを垂れている。
 やれ五階建てのビルを持ち上げただの、やれ軍艦二隻を沈めただのと噂ばかりが先行して

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犬、星

 流れ星を拾いに出た夫が、犬と連れ立って帰ってきた。
 夫の言うには、帰り道にその犬が腹を空かせていたので、集めた流れ星をいくらか与えたのだという。
 それはほんとうに変な犬で、ぐるぐると唸るようなことはないし、肉のきれはしを欲しがることもしない。
 ただただ褪めたような目と毛をして私たちのことをうかがっているのだ。
 日中は律儀な動きで夫の横について、日々の仕事を手伝っているつもりでいるようだ。

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ルーパの海

 そこはルーパと呼ばれる星だ。ルーパと言うのは現地の言葉を地球人類がなんとか発音できるようにしたもので、はるか昔の偉大な王の名前なのだという。陸地は惑星の総面積の二十パーセントに満たず、海棲生物から進化したと考えられている現地人たちは、主に捕獲したTACボートを輸出して生活していた。
 もちろん、太古の昔からそうだったわけではない。そもそもTACボート、Tactical Boatというのは五百年か

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恐怖と憤怒の発作

 この辺境では全てが貧しい。粗末な板葺きの小屋を寄せ集めたような村の中で、人々は全てのものを胡乱げな目で見ている。彼は別の村からやってきたよそ者で、流れの傭兵を自称する男だったからまさに胡乱そのもので、一部の商店主の他は極力彼に関わらないようにしていた。

 そんな中、一人の男と、男の操る巨大な何かが村に現れた。男の方は岩を削りだしたかと思うような魁偉な風貌で、身の丈は十フィートに達しようかという

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