犬、星
流れ星を拾いに出た夫が、犬と連れ立って帰ってきた。
夫の言うには、帰り道にその犬が腹を空かせていたので、集めた流れ星をいくらか与えたのだという。
それはほんとうに変な犬で、ぐるぐると唸るようなことはないし、肉のきれはしを欲しがることもしない。
ただただ褪めたような目と毛をして私たちのことをうかがっているのだ。
日中は律儀な動きで夫の横について、日々の仕事を手伝っているつもりでいるようだ。
あるいは、洗ったシャツを干す私の後ろにきっちりと座っていて、風で飛ばないように見張っているとでも言うようにじっとしていることもある。
夕飯時になるとふいにどこかに出かけて、からだのどこかに金属の削りくずをつけて戻ってくることが多い。
私が三度目の絨毯の掃除をしたあと、家主の威厳をもって人間の家における汚れの予防の重要性を説くと、気まずげに目をそらして、次の日からは玄関のドアをくぐる前にぶるぶると削りくずを振るい落とすようになった。
そんな犬も、やってきてからひと月もしない朝に、重々しい足あと一つを玄関の前に残してどこかへと去っていった。
その前の日の夜、空がまばゆく輝いて、数条の光が峰々に落ちてきており、その降る星の輝きを映すあのきれいな目をした夫と、その横に並んでいた犬は、やはりものも言わず同じように空を見上げていた。
夫は残された足跡を見ていくつか頷いた後、やはり流れ星を拾いに出たが、それが当然であるかのようにこんどは何も連れ帰らなかった。
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