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妖精の命日。(おっさんへ)

こんばんは。明日はあなたの命日ですね。だけど、明日は六本木でライブがあるので、ゆっくりとあなたを思い返す時間がないでしょう。だから今夜、いろいろと書くことにします。

去年はあなたを「おっさんの妖精」だと評して、当時のことを思い出しながら書きましたね。(https://note.mu/me_ko/n/nea7a59fce490?magazine_key=m31a72d0dedbc)結構評判がよかったんですよ。あの話を書きたくてnoteをはじめたので、本当に書いて良かったです。

今年は何を話しましょう。あなたが死んでいよいよ3年を迎えますね。生きていたら71歳。46歳も離れているなんて相変わらずビックリ!わたしはまだまだ若いですねえ、若いですねえ!

そういえば、去年の秋頃。びっくりしたでしょう。もうそちらに行っていると思いますが、そう、わたしの友達です。とても仲が良かったんですよ。大学時代は授業が分からなくて彼に頼りっぱなしでした。大学を卒業しても社会に馴染めなくて、やはり彼に頼りっぱなしでした。あなたと同じくらい立派な体型だから、ああ、そっちはデブ率上がったなあ…って思いました。まあ、今も昔も可愛いわたしの話でもして盛り上がってください。


そうそう。今日帰宅してから、あの家のことを思い出していました。今は売ってしまい、誰が住んでいるのか分からないけれど、短かったあの「マイホーム」のことを。あなたが家を買ったのは60歳を過ぎてからで、世間一般からすると、マイホームを手に入れる時期としては、きっとかなり遅い方なのでしょうね。わたしが短大1年のときでした。多摩モノレール沿いの辺鄙な場所で、モノレールの終電が早いため、飲み会などで帰りが遅くなってしまった日には、20~30分歩いて帰るハメになるあの家です。

わたしとあなたの部屋は隣同士で、あなたのイビキは筒抜け・テレビをつけっぱなしで寝る癖があり、音がうるさいとよくクレームを言いに行きました。そのくせ、わたしが電気をつけっぱなしにしてうたた寝ていると必ず消しにくるので、そのたびにわたしも「起きてる!!」と逆切れするのでした。似た者同士です。

あなたが亡くなったとき、額を強く打って倒れたようで、たくさん出血していたと聞きました。わたしが家に戻ったときには、母がきれいに床を拭いたあとで、その痕跡はなかったようでした。だけど、実はあのとき、わたしは一人で痕跡を探していました。そして見つけました。ドアを開けてすぐ右の壁、すごく下の部分に、1つだけ小さな血痕がありました。それを見て、ホッとしたというか、納得したというか、心の中でその事実を受け入れられた気がしたのです。わたしもその現場にいる一人となり、”そこに父が居た事実”を感じられたのです。

そんなマイホームを売ることになり、姉妹そろって母の引っ越しを手伝いました。最後、当時自分が住んでいた部屋と、その隣のあなたの部屋を見に行きました。壁の下の方に、やはり小さな血痕が残っていました。その血痕はずっとわたしだけが知っているものであり、わたしの秘密であり、心残りであり、父親であり、思い出でした。わたしはその血痕にさよならをして、母の引っ越し先に向かいました。その日の帰り、めちゃくちゃにお腹が痛くなって、次女の運転する車でコンビニのトイレに駆け込み、わたしは九死に一生を得たのですが。


細木和子さんによると、今年のわたしは「大殺界」だそうです。だけど、わたしは去年友達が自殺してからというもの「この世に確実なものは一つもない」と思うようになりました。どんなに親しい人でも、来年も会えるとは限らない、そう切に感じます。悲しいことはいつだって起こるし、わたしもあなたが今生きているのといないのとでは、考え方も生き方も違ったかもしれませんが、なるべくしてこうなったものは全部ちゃんと受け入れようと思います。

人間は、とっても一人ぼっちだと思います。だから、わたしは結婚したいなあと思うときがあります。ずっと一緒ですよと契約をされたパートナーが居たらどんなに安心するだろうと。だけど、やはり死んだらとても悲しいのです。わたしの母は、やはり今でもとても悲しんでいます。

生きていると、どんどん敏感になって、悲しいことが楽しいことを大きく上回ってしまうことがあります。わたしの精神もどんどん、どんどん複雑になっています。お父さん、毎日無事に生きていることって、すごいことだと思うんです。だから…毎日生きるごとに、お小遣いとか、お菓子とか、何か特典がもらえたりしたら…そうしたら、ますます生きる気力が湧いてくるんじゃないかって思うんです。お父さん、わたしが毎日生きていることを、褒めてください。バンド今でも頑張ってます、褒めてください。会社辞めようと思います、褒めてください。さっきチゲスープ作りました、褒めてください!

ヒガシノ家はそれぞれみんな頑張ってます、褒めてください!!

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