先日外を歩いていたら、道端で死んでいるねずみを見つけた。目を開いたまま、ぐにゃりと路肩に寝そべるように横たわっており、最初は生きているように見えた。死んで間もない状態だったのかもしれない。 はじめ、わたしは「あ、ねずみだ」と驚いて数秒見つめたのち、そのまま通り過ぎた。ねずみの毛は何だか柔らかそうで、動物として綺麗だなとすら思った。 それから思い立って道を引き返し、そのねずみをもう一度よく見た。まったく動かないので、やはり死んでいるようだ。黒茶灰の毛が混じり合ったボディは、うち
先日、実家の猫が天寿をまっとうした。もともと実家には3匹の猫がいたが、猫特有の病気の影響などもあり、順番にこの世を去り、ついに3匹目の猫も鬼籍に入ったということである。この猫はもともと線が細く病弱な体質であったが、加齢により目が見えなくなってからは逆にたくましくなり、体もややふっくらした。若い頃は擦り寄ることもしないクールな性格だったけれど、ばあちゃん猫になってからはたくさん人間に甘えるようになった。そうして、3匹の中で一番最初に亡くなってしまうかと思われていた彼女が一番長生
なにか大きな災害が起きている時、またはそれらが近づいている時、思い出す本がある。 【終末のフール/伊坂幸太郎 著】だ。 舞台は「8年後に小惑星が衝突して、地球が滅亡する」という予告から約5年が経過した世界。あと3年で自分たちの命が尽きる”終末を前にした人々”を題材にした、短編連作集である。各話淡々とした調子でストーリーが進んでいくが、ふとした瞬間に「これが人間なんだな」と思うような場面が出てくる、印象深い1冊だ。 そして最近、大きな災害を前にすると思い出す本が、もう一つで
夏が特別好きだ、と思ったことはないが、今年の夏は始終「蝉」のことを気にしていた。今年は蝉が鳴きはじめるのが、ひどく遅い気がしたからである。 すでに猛暑の様相を呈していた6月頃から、わたしは蝉のことを気にしていた。去年は、もうこの時期には蝉の鳴き声が聞こえていた気がするけれど…。そう思いながら、ベランダに出て洗濯物を干すたびに耳を澄ませた。 7月に入ってからも、やはり蝉の鳴き声は聞こえてこなかった。6月からの不安がさらに大きくなる。6月と同様、わたしはベランダに出るたびに耳を
この夏に、楽しみな予定ができた。 先日、親しい友人と会う相談をしていた。すると同日、思わぬ方面から嬉しいお誘いが舞い込んできた。だからその日、わたしは夏の楽しいイベントが二つ決定したのだ。 昼日中の猛暑に熱帯夜にと、すでに猛威を振るう暑さ。なかなかに忙しい仕事。そこそこずっと疲れていて、本を読む集中力さえ失う日々が続いている。ただただ夏が過ぎるのを願うような毎日だったが、今は心にハリを戻しつつある。 太宰治の「葉」に書かれたエピソード。 正月に夏の着物をもらったから、夏