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紬(つむぎ)
2022年10月8日 19:00
短かかった髪を伸ばそうと思ったのは、なんとなく大人の女性に近づきたかったからで、君の好みとかは別に関係なかった。耳に少し髪がかかるくらいのショートボブヘアーを数年間貫いていた私は、髪を伸ばすべきか悩んでいた。「髪を伸ばすか迷ってる。」そう呟いた私に、彼は「絶対長いのも似合うよ、見てみたい。」と言った。今思えば単純だった。ちょろかった。あの頃、私は彼に好意を抱いていたから。気
2022年10月6日 22:32
遠くに聳え立つ木々は、とても姿勢が良かった。身に纏っている葉っぱの衣装は、少しずつ秋色へと衣替えをしている。オレンジ色の太陽は、私たちを優しく見下ろしては、あたりを照らしていた。地面の形状に合わせて連なるススキたちは、秋の少し冷たい風に吹かれ、ゆらゆらと揺らいでいる。まるで優しく微笑んでいるかのようだった。太陽は優しかった。空気は冷えていた。森の中の少し湿った土のような