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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(2)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(2)

ターミネーターここまで順調に駒を進めてきたフリムン。
そんな彼の鼻を、根元からポッキリと折る初めての空手家と相まみえる事となった。

開始早々、フリムンは得意の突きの連打に加え、左ミドルやローをガンガン飛ばしながら早い段階で試合を終わらせようとしていた。

何故なら、彼の肉体が“細胞レベル”で相手の強さを感じ取っていたからだ。

スパーリングの相手も居らず、実戦不足によりスタミナに自信の無かったフ

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(3)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(3)

【行ったり来たり漫才】遂に七戸師範との邂逅の瞬間がやってきた。

県大会では挨拶程度の会話しかできなかったが、これから行うのは挨拶なんて生易しいものではない。まかり間違えば、逆鱗に触れるかも知れない重大な話し合いなのだ。

意を決したフリムンは、一歩ずつ、一歩ずつ、高校時代からの夢を叶えるために道場までの階段を上り始めた。

しかし、途中まで来ると何故か突然心拍数が爆上がり。

呼吸を整えるために

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(4)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第7話 黎明期編(4)

【初審査】入門から3ヶ月後、遂に審査の日がやってきた。
フリムンの白帯に、偽物ではなく本物の色が付く日がやってきたのである。

ちなみに極真の審査は、内容の厳しさもそうだが、黒帯を取るまでに最低でも10回は審査を受けなければならないという厳しさがある。

「白帯」→「橙帯」→「橙帯一本線」→「青帯」→「青帯一本線」→「黄色帯」→「黄色帯一本線」→「緑帯」→「緑帯一本線」→「茶帯」→「茶帯一本線」

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(3)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第8話 暗雲編(3)

【義務教育】1996年。長女が誕生してから5年後に次女が誕生。真に美しい女性になるよう「真美」と名付けられた。

生まれた時からどこか光るものを持ち合わせていた彼女。

笑顔が可愛いという理由で、百日写真を撮ってくださった写真館さんが長きに渡り展示してくれた程である。



その頃より、長女も父親の下で空手を学ぶようになり、フリムン家では極真空手が義務教育の一環となった。

もちろん、次女も例外

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(1)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(1)

【死ぬこと以外はかすり傷】傍から見れば、順風満帆に思える空手ライフであったが、入門から僅か1年で引退に追い込まれるなど、先行き不安しか感じていなかったフリムン。

28歳になったばかりの若者に突き付けられた、余りにも酷なこの現実。

既にモチベーションを保つので精一杯だったが、安息の地へ逃亡するという選択肢はフリムンにはなかった。

「ここで逃げたら死ぬまで後悔する」

これまでも、そしてその先も

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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(4)

【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島|第9話 逆襲編(4)

祖母の涙孫やひ孫の活躍だけでなく、道場生の育成や社会貢献に奔走するフリムンを見て、これまで空手に反対していた祖母が突如フリムンにこう言った。

「ゴメンね」
「本当に空手が好きだったんだね」
「なのに反対ばかりしてゴメンね」

そう言って涙を流し、フリムンの頬を撫でた。

祖母にようやく認めてもらえたフリムンは、今まで以上に本気で空手に打ち込もうと決意。

自身の修業だけでなく、道場生の育成、青

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