中江広踏

退職老人。旅行が好き。建築と街歩きも好き。本を読むのが好き。書くのも好き。25年間「神…

中江広踏

退職老人。旅行が好き。建築と街歩きも好き。本を読むのが好き。書くのも好き。25年間「神須屋通信」という自分のホームページに雑文を書いていました。2020年にnoteに引越して来てからは、「神須屋通信」以外にも、小説やエッセーのようなものを、ぼちぼち、発表しています。

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    神須屋通信のnote版 2020年11月以降 毎月更新

最近の記事

今月読んだ本 (13)

2024年4月  今月もkindleで読んだ本の紹介から。今月はTED CHANG "EXHALATION"を読みました。日本語訳では「息吹」として文庫本になっています。 最近、Netflixで放送された「三体」を見ました。三部作の原作の第一部を映像化したものですが、実に見事な出来でした。原作をうまく世界向けにアレンジしているんですが、大事なところはきっちりとおさえている。例えば、冒頭の文化大革命のシーン、三体ゲームの中の人間コンピュータのシーン、船が強靱な超極細合成ロープ

    • 八道湾の家・魯迅と周作人

                                 中江広踏     まえがき  ここに掲載するのは、私の義父、首藤功一郎の遺稿「八道湾の家」です。首藤は長年中国駐在の通信社の記者をしていましたが、退職後はいくつかあった大学や専門学校からの教職の依頼を全て断って、自ら小さな中国語の塾を営んでいました。もう宮仕えは嫌だと言うことだったようです。それでも、書くことは好きだったのでしょう。あちこちからあった原稿の依頼には応えていたようで、自宅には寄稿した文章が掲載された会報や

      • 今月読んだ本 (12)

        2024年3月  今月もkindleで読んだ英語の本の話から。今月はJeremy Rifkin "THE AGE OF RESILIENCE"を読みました。不明を恥じますが、リフキンという名前は昨年初めて知りました。もう80歳に近い国際的にも著名な社会思想家で、西欧各国の政策にも影響力を持つ人物のようです。地球温暖化などの環境問題に対処するためには、現代の資本主義社会の根本からの変革が必要だという事は今では半ば常識になっていますが、その大元は、たぶん、この人あたりにあるので

        • 9年ぶりの釜山(2)

           QUEEN BEETLEは赤かった  9年間で変わった釜山と変わらない釜山の話を続けます。話は前後しますが、まず変わっていたのは高速船でした。私たちは釜山に行く時には新幹線で博多へ行き、博多港から釜山までBEETLEという高速船で向かうのを習慣にしていました。なにしろ釜山は港町ですから、船で出入りするのが相応しい。とても旅情があるし、ロマンチックです。その高速船が、今回、QUEEN BEETLEという真っ赤な洒落た大型三胴船に変わっていました。定員は約2.5倍になったそう

        今月読んだ本 (13)

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        記事

          9年ぶりの釜山(1)

          釜山エックス・ザ・スカイに上がる  3月初旬、家内と二人で釜山を訪ねました。私にとっては9年ぶり7度目の釜山、家内はもっと多く来ています。そんなわけで、いまさら観光地を回るのではなく、昨年のソウルの場合と同じく、コロナ禍を経た街がどう変わっているのか、あるいは変わっていないのかを確認するための旅でした。今回の旅で私がもっとも行きたかったのは海雲台(ヘウンデ)。数年前にネットで衝撃的な写真を見たからです。海雲台のビーチに巨大な超高層ビルが3本も聳え立っている写真。最初は合成写

          9年ぶりの釜山(1)

          今月読んだ本 (11)

          2024年2月  今月もいつものようにkindleで読んだ英文の本の紹介から。今月はSHEHAN KARUNATILAKAという小説家の"THE SEVEN MOONS OF MAALI ALMEIDA"を読みました。日本語の小説なら谷崎賞受賞作、英語で書かれた小説ならブッカー賞受賞作は必ず読もうと決めていた時期がありましたが、最近はずっとサボっていました。この小説は久しぶりに読むブッカー賞受賞作です。2022年の受賞。英国の文学賞だったブッカー賞もいまや英語で書かれていれ

          今月読んだ本 (11)

          今月読んだ本 (10)

          2024年1月  今年初めて読んだkindle本は、Mustafa Suleyman "THE COMING WAVE" でした。AIの危険性を訴える警世の書です。著者は、イスラム系の名前ですが、オックスフォード出身の英国人で、DeepMind社の共同創業者の一人。DeepMind社は、深層学習AIを専門とする企業で、AlphaGoという囲碁プログラムを開発しました。当時、世界最強と言われた韓国の棋士イ・セドルに勝ったことで日本でも話題になりましたね。チェスや囲碁将棋の世界

          今月読んだ本 (10)

          神須屋通信 #34

           能登半島地震の被災者の方々に心よりお悔やみとお見舞いを申しあげます。  私が友人たちと奥能登の海縁にある「ランプの宿」に宿泊したのはもう何十年も前のことですが、ネットで確認したところ、「ランプの宿」には大きな被害はなかったようです。でも、当時訪れた輪島の朝市は消滅してしまいました。地震大国に住む身とはいいながら、なにも元旦早々こんなに揺らすことはないだろうと、何者かに恨み言を言いたくもなります。今はまだそんな事を考える時期ではないでしょうが、被災者の皆さんが少しでも早く日常

          神須屋通信 #34

          今月読んだ本 (9)

          2023年12月  今年最後になる今月もkindleでの読書の話から始めます。今月読んだのは、KARIN SMIRNOFF というスウェーデン作家の"THE GIRL IN THE EAGLE'S TALONS"でした。日本ではまだ無名の女性作家によるアクション・エンタテインメント作品ですが、どうして私がこの本を選んだかというと、これが「ミレニアム」シリーズの最新作だったからなんですね。「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」からなる「ミレニアム」

          今月読んだ本 (9)

          山口線の旅 ③

          益田駅前に素敵なホテルがあった。  今にも雨が降ってきそうな益田駅に着いて、すぐにその夜の宿舎に入りました。駅のすぐ横にあるホテルを予約しておいてよかったと思いました。「益田グリーンホテル・モーリス」という派手な名前に較べて外観は凡庸な建物でしたが、失礼ながら田舎のホテルとしては個人的に過去最高とも思える、とても素晴らしいホテルでした。最近改装されたのか、すべてが最新の気持ちの良い設備で内装もオシャレで都会的に洗練されていましたし、サービスもいい。広々した清潔な大浴場を出る

          山口線の旅 ③

          山口線の旅 ②

          湯田温泉にある山頭火の句碑はちょっと卑猥だった。  11月28日。ホテルで朝食をすませてチェックアウトした後、スーツケースを転がして、湯田の街並を見て歩きながら湯田温泉駅まで行くことにしました。ホテルの近くの錦川通りの道ばたに中原中也の詩碑と種田山頭火の句碑が並んでたっていました。中也はともかく山頭火がなぜと思いましたが、山頭火はもともと山口県防府市の出身なんですね。全国を漂泊して、晩年近くには山口の小郡に庵を結びました。そこから毎日のように12キロも歩いて通うほど、湯田温

          山口線の旅 ②

          山口線の旅 ①

          旅のはじまりは「日曜美術館」。  すべてはNHKの番組「日曜美術館」から始まりました。その日の番組は建築家の内藤廣さんを紹介していました。少年時代からの建築ファンである私は、数十年前に「安曇野ちひろ美術館」を訪れて以来、その設計者である内藤さんの名前は記憶していましたが、その内藤さんが高知の「牧野記念館」を設計し、私がこの十年以上ずっと注目している渋谷の都市改造のデザイン・アドバイザーを務めている事を、この番組で初めて知りました。でも、なによりも驚いたのは、島根県の石見地方

          山口線の旅 ①

          今月読んだ本 (8)

          2023年11月  今月もいつも通り、kindleでの英語の本の読書から。今月は、DAVID GRAEVER+DAVID WENGROW"THE DAWN OF EVERYTHING"を読みました。共著ではあるけれど、あの「ブルシットジョブ」のグレーバーの遺作、従来の先史時代のイメージを書き換えた傑作、アメリカでベストセラーなどという諸情報を目にすれば、誰もが一刻も早く読みたくなりますね。私もまさにそうでした。でも、日本語で「万物の黎明」として刊行された書籍はなんと5,50

          今月読んだ本 (8)

          今月読んだ本 (7)

          2023年10月  今月もkindleで読んだ英語の本の話から始めます。今月は、WALTER ISAACSONの"ELON MUSK"を読みました。何カ国語に訳されたのか知りませんが、世界同時発売されたこの本の日本語版は上下二巻。kindleだと厚みがないので長さがよくわからないのですが、読んでも読んでもなかなか終わらない長い本でした。でも、日本でもかなり売れたようですね。なにしろ、現代の世界で最も興味深い人物の一人であり、間違いなく歴史に残る事業家イーロン・マスクの伝記で

          今月読んだ本 (7)

          神須屋通信 #33

          イオン復活!  今回は地元の話題です。2020年の8月に閉店した「イオン東岸和田店」が、先月下旬、「そよら東岸和田」として復活しました。12年前に私は60歳で定年退職しました。嘱託として残ることもできたのに60歳で辞めたのは、子供も孫もいない気楽さもありましたが、一日も早く、読書三昧の生活を送りたかったからです。未読の本が溜まっていました。それに文章も書きたかった。でも、亭主が一日中家にいることが、家内にとっては大きなストレスになることにまでは思いがおよびませんでした。いろ

          神須屋通信 #33

          今月読んだ本 (6)

          2023年9月 今月もkindleで読んだ本の紹介から。今月読んだのはCHRIS MILLER "CHIP WAR" 。日本では「半導体戦争」の書名で出版されています。かつての世界では原油をめぐって戦争が起こったが、現代では半導体をめぐる戦いが生じている。世界の将来に大きな影をおとしている米中の対立の、全てではないとしても、その主な要因が半導体をめぐるものであることは、半ば常識になっています。この本は、そんな情況をそもそもの半導体の出生地点にまでさかのぼって記述した、波瀾万

          今月読んだ本 (6)