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ベトナム

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「袖」という空間

「袖」という空間

ベトナムフェスティバル2021、初めて本格的に舞台制作に携わらせてもらった。
ステージ袖から見る演者たちはきらきらしていて、この角度は特等席なのだと知った。

そんな「袖」という空間について、私が感じたことを書いていこうと思う。

まず、まっさきに思いつく袖の役割とは「人やモノの待機・入りはけ」だろう。
しかしその物理的な役割のほか、精神的にも大きな役割があると私は思う。

「精神的役割」。それは

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2/1 Fri. @HN TIME

2/1 Fri. @HN TIME

旧市街にひとりで来る最後の夜かもしれない。ライトアップされたホアンキエム湖が見渡せるカフェテラス。人々が里帰りしたテト直前の今、道路は普段よりだいぶ空いている。その分、運転のスピードは速いみたいだ。

ここのカフェは10月頃に大学の後輩が訪ねてきたとき一緒に来たことがある。旅行会社と土産物屋の間にある幅約70センチの通路を奥へ奥へと進み、洗濯機など置いてある一般家屋の階段を3階分のぼったところにあ

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chanhの種

chanhの種

ベトナムの屋台に必ず置いてあるもの、それがchanhだ。チャイン。ちゃいん。
皮は緑、中は淡い黄色で、ジャコウライムというらしい。日本のすだちよりも少し小さく、フィリピンではカラマンシーと呼ばれているそうな。レモンほど酸っぱくなく麺料理のフォーやミエン(春雨のようなもの)に爽やかな香りを与えてくれる、ベトナム料理に欠かせないものだ。

そのchanhの種の存在に、最近気がついた。
2口目ぐらいで、

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間柄を明確にする言語

間柄を明確にする言語

どうして、間柄を明確にするんだろう?
ベトナム語のなかで暮らしていると、よくそう考える。
ベトナム語は、年齢や関係によって、相手と自分の呼び方を変える言語だ。
例えば、友達同士はban(相手)やminh(私)、年下側はem、年上(でも中年まで)側は男性だとanh(お兄さん)、女性だとchi(お姉さん)、自分の親より年上だと、親戚や家族だと(未婚か既婚か)、相手男性はこうで女性はこうで一人称はこうな

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ハノイ。秋

ハノイ。秋

この空気を知っている、と思った。
あるようでないような気温。
音楽。学生。おいしそうなにおい。
あ、外語祭の季節だ。

エモーショナル。普段よりも感覚が繊細な気がする。
アンニュイ。そんなに寒くない、曇り。どこか気だるげで、それでいてこれから何かが起きそうな予感。

誰もが知っているあのカフェを模したTシャツを着て、それとは全く別のカフェでひとり、甘ったるいベトナムコーヒーをすする。BGMは気の早

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