中空麻奈(BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部 副会長)
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世界の中銀総裁を悩ませるインフレ統計
ユーロ圏の総合インフレ率は2月の2.6%から3月には2.4%に低下し、2021年7月以来の低さとなったことからも、ディスインフレ傾向がしっかり定着していることを裏付けていると言えるであろう。食品価格上昇率、エネルギー価格上昇率、コア・インフレ率のすべてが予想を若干下回り、インフレ圧力は全般的に低下した。また、進展は広範な国に及んでおり、ドイツ、フランス、イタリア、スペインで総合インフレ率がコンセン
もっとみるインフレ基調の鈍化スピードが利下げ時期を決める鍵
ECBの2024年第4四半期の妥結賃金指標がユーロ圏の賃金伸び率のピークアウトを示唆した後で、今後数か月に物価上昇圧力がさらに改善すれば、ECBに「ユーロ圏のインフレ率は2%に向けた軌道に乗っている」という十分な自信を与え、利下げに道を開くことになるはずだ。ECBはその金融政策の変更に関し、経済指標次第の姿勢を変えておらず、2月の改善の度合いによっては措置を早めるか遅らせるかを判断する可能性が大き
もっとみるドイツの閉塞感とネガティブプレッシャー
2021年12月末に、新たに発足した政権はパンデミック関連の600億ユーロの信用枠を、当時エネルギー・気候基金EKFと呼ばれた基金に移管する決定を下した。これはデジタル化や脱炭素化の推進に充てる特別基金であり、後に「気候・変革基金(KTF)」に改称された。だが移管された信用枠は、パンデミックの影響に対処するために当初設立された「経済安定化基金(WSF)」という、別目的の基金をベースとしていた。この
もっとみるEUが財政を弛緩させてはいけない!
11月の経済・財務相理事会ECOFIN会合で提示されたEUの財政ルールについての着地点と各国財務相の姿勢が楽観的に見えることを踏まえると、改革に関する合意は成立することにはなるであろう。しかし、法案が成立するとしても、懸念が残る。
妥協点を見出さなければならない点は、例えば次のようなものである。第一に除外される支出項目をどうするか。国防支出や返済が必要なEUの支援金によって賄われる事業の基準を一
金利は据え置きの公算大
英国9月の総合インフレ率は8月と同じ前年同月比6.7%、コアインフレ率は前月よりも0.1ポイント低下の6.1%。食品価格の上昇率が一段と減速する一方、燃料価格は上昇したことで相殺するなど過度なブレとならなかったことがわかる。
BOEがコアインフレの中でも中心的指標として重視しているサービス価格については、前月から0.1ポイント増加の6.9%増となったものの、宿泊代金は宿泊日の直前にデータが集計さ
「過度な悲観論は行きすぎと考える5つの理由」
ここ数か月のマクロ経済の下振れと公的機関による成長率予測の引き下げを背景に、ユーロ圏に関する投資家のセンチメントは急速に悪化しており、年初の天然ガス価格の下落を受けた楽観的な見方の大半が反転したように見える。
多くの投資家はユーロ圏が循環的要因と構造的要因の両方から圧力を受けることを懸念していると思われる。借入コストの上昇や景気後退予想を踏まえた需要や投資見通しの弱さ、不透明なエネルギー見通し、
「今必要な金融危機対応とは何か」
現在、米国でも金融システム不安を起こさせないための措置が考慮されているところである。7月27日には銀行に求める自己資本要件を厳格化する規制案を発表した。大銀行のみならず資産規模1000億ドル以上の金融機関にも自己資本要件の適用を求めること、G-SIBSに対してはより厳しい規制をかける(自己資本の上積み)ことなどを規制強化案として11月30日まで意見を募集、2028年7月1日の完全施行を目指す。また
もっとみる沈静化する中、気になる“燻る火種”
総合インフレ率は6月の前年同月比7.9%から同6.8%へと大幅に低下した。この低下は主に家計の光熱費の大幅下落を反映したもの、である。これはコンセンサス通りであったが、コア財価格上昇率が2か月連続で低下した(6月の前年同月比6.4%から7月同5.9%へ)のはインフレが抑制されつつある動向を読みたい中央銀行BoEにとっては良い傾向と言える。
生産者物価上昇率の急低下をもたらしたサプライチェーンの緩