中空麻奈(BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部 副会長)
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ユーロ圏のインフレの方向性とECBのアクション
ユーロ圏のディスインフレの勢いは依然として弱い。6月のユーロ圏総合インフレ率は、前年同月比+2.6%から同+2.5%に小幅減速。全体的な物価のトレンドが依然としてディスインフレ方向であるものの、ユーロ圏の物価圧力が依然として解消されていない。
ECBにとって懸念されるのは、総合インフレ率改善の原動力になったのがエネルギー価格と食品価格の穏やかな低下であったことであり、いずれも国内の需給環境との結
ぶれないECB、この先の注目点は?
この数週間の経済指標がほぼECBの予想通りであり、ラガルド総裁や他のメンバーの発言が断固としたものになっていることも勘案すると、ECBが6月の理事会会合で中銀預金金利を25bp引き下げることはほぼ既定路線。既に織り込み済みであるがゆえ、大きな高揚感はない可能性が大きいが、今後をどう読むかは注目したい。
経済活動が勢いを取り戻している上、妥結賃金の伸びが第1四半期に再加速している状況でなぜ利下げを
なぜか、力強い成長へ。欧州景気
ユーロ圏の第1四半期GDP速報値は、この地域に対する楽観論を裏付ける。前期比0.3%のGDP成長率はコンセンサス予想0.1%を上回り、堅調な足取りでユーロ圏経済が2024年をスタートさせたことが示唆される。
主要4か国の成長率はいずれも第1四半期にプラスとなったのも大きい。とりわけドイツ経済がプラス成長に転じたことは景況感の懸念材料の払しょくを後押しするものとなると言える。
こうした成長に対し
欧州が強く進める環境対策
もしトラが現実になった場合、恐らくかなりの確度で米国はパリ協定から再び脱退していく公算が大きいのであろう。そうした動きを捉えてか、23年10月から12月、世界のESGファンドから四半期で初の純資金流出となったと言えるのではないか。
しかし、欧州は突き進む。私見では欧州のまとまりや統合のためには、すでにグリーンが欠かせないものになっているからで、逆に言えば、これなしには欧州のまとまりや統合には向か
イタリアの格付け、春は一安心だが……
イタリアの春の格付け見直しはひとまず、変更なし。堅調な成長環境を見込み(コンセンサス予想でも2024年の成長率は0.6%、2025年同1.1%)、政府の財政目標も概ね達成可能なためで、イタリア国債の利回りも昨年秋以降、大幅に低下している。政府の将来的な利払いの拡大圧力も限定的である。
だが、イタリアの場合、格付け機関が慎重スタンスを継続することは考えておくべきだ。三つある。第一に、スーパーボーナ
世界の中銀総裁を悩ませるインフレ統計
ユーロ圏の総合インフレ率は2月の2.6%から3月には2.4%に低下し、2021年7月以来の低さとなったことからも、ディスインフレ傾向がしっかり定着していることを裏付けていると言えるであろう。食品価格上昇率、エネルギー価格上昇率、コア・インフレ率のすべてが予想を若干下回り、インフレ圧力は全般的に低下した。また、進展は広範な国に及んでおり、ドイツ、フランス、イタリア、スペインで総合インフレ率がコンセン
もっとみるインフレ基調の鈍化スピードが利下げ時期を決める鍵
ECBの2024年第4四半期の妥結賃金指標がユーロ圏の賃金伸び率のピークアウトを示唆した後で、今後数か月に物価上昇圧力がさらに改善すれば、ECBに「ユーロ圏のインフレ率は2%に向けた軌道に乗っている」という十分な自信を与え、利下げに道を開くことになるはずだ。ECBはその金融政策の変更に関し、経済指標次第の姿勢を変えておらず、2月の改善の度合いによっては措置を早めるか遅らせるかを判断する可能性が大き
もっとみるドイツの閉塞感とネガティブプレッシャー
2021年12月末に、新たに発足した政権はパンデミック関連の600億ユーロの信用枠を、当時エネルギー・気候基金EKFと呼ばれた基金に移管する決定を下した。これはデジタル化や脱炭素化の推進に充てる特別基金であり、後に「気候・変革基金(KTF)」に改称された。だが移管された信用枠は、パンデミックの影響に対処するために当初設立された「経済安定化基金(WSF)」という、別目的の基金をベースとしていた。この
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